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好きな自分に

「からだや、おもいや、ことばや、悪意や、その他さまざまのものが沸騰する力がわたしにとっての音楽であるのだ。」

町田康さんのエッセイ「へらへらぼっちゃん」から、たまらなく大好きなわかりみが深すぎてもはや海、いっそ深海な一節。

前回の続き、わたしが出会ってしまった日。
8/16の夜のお話をしていきます。

この日は珍しくライブへのモチベが低くてな。
ビレッジのツアーが発表になったから早速新宿LOFTのチケット取ったのさ。
で、後日よく確認したらツーマンで。ワンマンしか行かない派のわたしは、えー間違えたなあって。ツーマンじゃあ尺短いし、知らないバンドと一緒かあ。
夫は友達と旅行行くって言って、一人だったから他に入れたい予定もあった日だったり。
お金払っちゃったし行くかあって。
(その日の旅行の行き先を、その後聖地ガタヤマと呼ぶことになるとはね…)

イープラス払っちゃったから、行く。ビレッジ観たら楽しいはず、そんなモチベ。
だから対バンのお相手の名前も曲も全然知らない状態。

まあそれなりにわくわくはして会場向かってたな。仕事終わりにメガネをコンタクトレンズに替えてさ、水野家の家紋のTシャツに着替えてさ。

対バン相手のSEが流れて、周りのお客さんを伺いながら小さく手拍子して。

いや、まさかよね。
ステージに現れただけで刺さる存在感。

ボーカルとギターの、なんなんですかあの格好。好き。

金髪おかっぱにグラサンの、ボーカルが着ていた赤いサテンの羽織。先月わたしが高円寺の古着屋で見て、「わーこういうの、ずっと欲しかったんだけど、着るときないからやめとこ」ってなった羽織に超そっくり(笑)
お顔の骨格がとんでもなく美しくて、サングラスの下はどんなお顔なの〜?目が合ってるか分かりたいから取っておくれ~!

ギターのあのファッションは気になる要素しかない。ロン毛にグラマラスなメイクの男、最近の日本で見ないんじゃない?このバンドから昔の英国を感じた原因のほとんどはこのお方。
ポリス帽は大須の古着屋で買って、わたしも1個持ってるんだ。今は行方不明だけど。
デカバッヂの肖像は、全然詳しくないけどあの時代のあの辺のロックスターだなってすぐわかった。リスペクトしてるギタリストなんだね。

ベースは顔が良すぎる。
バンドマンの中でもベーシストはヤバイ奴が多いとか言うじゃないですか。そのうえ顔が良いなんて要注意だ!
(しかし気さくな兄ちゃんであることを徐々に知る)

水野ギイ狙いで前列攻めたので、キーボードとドラムはあまり見えなかったんだけど、キーボードは個性がありつつも5人のバランスを取ってる大人な方かな。
ドラムは柄シャツでしたね(スーパーソニックロッケンロールの)。手脚細長!

からの、メイルビー。
初めて聴いた曲。

細長手脚で爆音を鳴らすドラム。
難しそうなフレーズを弾きながら、余裕の甘~い笑顔でフロアを見渡すベース。
キーボードの、落ち着きがありつつもスパイシーな電子音。
きっとこれも憧れのギタリストにならってるんだろうな、右腕をぶん回すギター。
高いジャンプと噛み付くような、でもどこか親切な煽りで目が話せないボーカル。
頬がくっつくぐらい寄り添ってセンターマイクで歌うボーカルとギターのたっぷりな色気。

心が捕まりまくっていた。

(その夜かな、「ビレッジファンの人にも届いてほしい」ってボヘのセトリをツイートしてる方がいらっしゃって曲名を知ることができました。ありがとうございます。)

ザットイズ、GIRLS(ボーイズ)、リーズンズ、ロベレッツ、ロックンロールは初見の瞬間を鮮明に覚えてる。

That is Rock'n Roll。
メンバー紹介的な曲と思った。あの日のわたしにとってはメンバー紹介だった。
一人一人がなんてかっこいいんだろう。これが5人集まってロックやってるんだからかっこいいに決まってる。
ボーカルがメンバーの名前を叫んでくれたけど、聞き取れずビートりょうだけは「ピートりょう」として記憶した。ピート・ドハーティ、ピート・タウンゼント辺りから来ているのかと。なんとなく名前だけは知ってたギタリスト。(しかしほんとに「タウンゼント」は名乗ってたんだね)
なんか聞いたことない長い名前がたくさんだったなー(笑)

わたしの前に居た女の子、お礼を言いたいくらいなんだけどこの日以降ボヘの現場で見つけられていない。
ビレッジのツアーだからビレッジのお客さんがほとんどで、ボヘミアンズ初見ですって人が多く居る雰囲気の中で、ボヘの曲完璧に手上げられる子が目の前に。赤いブラウスに茶髪のボブでした。
「このバンド楽しい…!」って芽生えた気持ちをバンド側に伝えるには、この子の真似して手上げたらいいんだ!って、背中を見て教えてもらっていました。
フロアでわたしを導いてくれた天使かな?ありがとう。

ここでMCが挟まれたのかな。
「ビレッジマンズストアとボヘミアンズ、どっちも好きなセンスいい人なんてこの世に2人しか知らない」とか言い出す。
えー、もしかしてわたしが3人目になる?予感は充分に。
「みんな早くビレッジマンズストアが観たいんだろ?あと6曲しかやらないから」
とかも言ってた。もちろん観たいけど、そんなこと言うMCめったに観ないんで心あったまっちゃうみたいな衝撃。

2回目のMCで言ってたかもしれないけど、ボーカルが「俺の趣味はエゴサだから、ボヘミアンズのこと書いてくれたら喜ぶ」みたいなこと言ってて、だいぶ可愛かった。それきっかけで、しばらく離れてたX(Twitter)に戻ったみたいなとこはある。

そしてGIRLS(ボーイズ)、、
今でも最上級に愛してる歌だよ。
どの曲も大好きだけど1番を選ぶとしたらこの日からずっとGIRLS。
「HEY!ボーイズ&ガールズ」
の呼びかけに、どんな歌が続くのかしら。

「自分が何者か分からなくたっていい
 自分の生き方は自分で決めれば良い なぁ、そうだろ?」

30になる直前で、今の職場は流行り物に詳しい若い子ばかりで、年相応な服装髪型メイク?トレンド、垢抜け?好きな格好とか自分らしさ、もう何が自分かよくわからなくなっていた頃。ライブ中にそんな悩み思い出すなんて、書くの恥ずかしいくらいクダラナイ話かもしれないけど。

ボヘミアンズ見てたら、こんな音楽、こんなファッションが好きなのがわたしだ、って思い出したんだ。

「自分が何者か自分で決めれば良い なぁ、そうだろ?」

そうなりたい。あなたたちみたいに。

「神様はいつも見てるだけ 好きな様に生きようぜ」

このバンドに出会って「これになりたかったんだ」と漠然と、でもはっきりと思った。

何者かになりたくて、誰かに強く憧れて、音楽を始めたロック少年たちの面影が見えた。
憧れのまま生きてきた少年たちが、これからもそのまんま年を取っていくんだろうってそれだけでこんなにかっこいいじゃないか。
それならわたしはボヘミアンズに憧れて生きていきたい。

ボヘミアンズを好きな自分を好きになって生きていく。

前の女の子の真似をして、GIRLSの後半から手を挙げた。

リーズンズもyeah yeah yeahで手挙げたよ。
oh oh ohのリズム、初見で取るの難しくて苦戦したな(笑)
「あんたと年取り合っていたいよ」指で数かぞえるボーカル。相変わらずいい歌詞。

ロベレッツ。みんなで声出すの楽しい!
ギター&ベースのあのパフォーマンス見て好きにならないひととは仲良くなれないわ〜ってくらい。
ザットイズはジャンさん居なくなってやらなくなってしまったけど、この曲もライブで見て好きにならないひといんの!?(強火)って思ってる。

ラスト、ロックンロール。
ここでもボヘミアン・ラプソディみを感じたのだった。ゴキゲンロックをやってきての、ガラリと雰囲気を変えて引き込んでくるシューゲイズっぽい歪み。照明もすごく幻想的に青く、渦を巻いて。
ボーカルとギターの、センターマイクで歌う切なさ。

轟音が鳴る静寂、血が湧く切なさ、憧憬と哀愁。

ビレッジを心待ちにする転換の時間になっても、ボヘミアンズが気になりすぎ。
あんまりスマホの充電がなくて電源切ってたので、余韻だけで過ごす転換。

ビレッジ目当てで前に詰めたので、赤いブラウスの女の子は見失ってしまったけど。
明らかにギイ目当てで来たと見える女子が目の前でツイートしたりボヘの公式サイトを覗いてるのを覗いていた。(あんなぎゅうぎゅうの空間なので見えちゃうの気になってごめん)
「なんなんだ、あの顔の整った集団は」
って書いてたから「顔より曲だろ!」って心で思ったら「曲もかっこよかった!」って書き足してた。
心で深く頷いた。

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