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短編『何も気にならなくなる薬』その105

「畑」「隔離病棟」
「腸内環境」
「ドライヤー」
「ドローレスの叫び」

今回はこの五つ。

ドローレスの叫び?
まったく知らない言葉だ。
おそらくはムンクの叫びの仲間ではないだろうか?
と当てずっぽうをしてみたうえで、本当のところを調べてみる。

「ドロレスの叫び」は、1810年9月16日に当時スペイン領だったメキシコで、最初の独立指導者ミゲル・イダルゴ・イ・コスティージャによって発せられた演説であり、これをきっかけにしてメキシコ独立革命が始まった。 
とのこと。
物を知らないというのは恥ずかしい……
とはいえ、知らないことを知るのは面白い。今後も単語ガチャを活用していきたい。


窓の外は畑、畑、畑。
濡れた髪をドライヤーで乾かしてもらいながら、窓の外をぼんやりと眺める。
明日は手術を迎える。
そのために身綺麗にしなくてはと母親が私の身体を拭いてくれている。
実際にこの女性が私の母親かどうかはわからない。
隔離病棟と言われていても、その意味はよくわからない。
優しく語りかけてくれる存在はきっと母親に違いない。

「これは」
「腸内環境を整える薬よ。お通じがよくなるの」
「ありがとうお母さん」
私と母が病室でやり取りしている間、外で大きな声が聞こえてくる。
「患者の尊厳を守れ、隔離病棟の環境を改善しろ」
「家族を返せ」
「人体実……」
世の中のことなんてどうでもいいじゃないか、ドローレスの叫びよろしく私達の生活さえ守られていればそれでいい。
ふと、私の母親の顔を見た。とても苦々しい顔をしていた。

美味しいご飯を食べます。