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短編『何も気にならなくなる薬』その127

複数人で食事というのはなかなか面白い。全体に話を振るのか、それとも個人に振るのか、どんな目的で集まっているのか。
それとも集められているのか、全員がその状況に納得しているのか不思議だ。
とりわけ今回はお酒を飲まない人たちで集まったので、私もお酒を辞退した。
先日書いた食生活のこともあるのでこちらとしては都合がいい。
食べるか、呑むか。
どちらかを選べる状況はありがたい。
あとは甘いものを我慢できるかどうか……あのデザートのジェラートは美味しかった。

「青写真」

「ページ」

「ギャンブラー」

今回はこの三つ。


青写真。
ブループリント。
いわゆる設計図のことだ。
昔の設計図などをこの青写真で取ることで記録として残していた。
比喩としては計画や未来予想図という意味合いになる。

「次のページの頭の文字を当てることができたら君に私の資産の半分をあげよう」
資産などという言葉を使うのは、本当にお金のある人か、もしくは胡散臭い貧乏人の資産形成という戯言だ。
この提案はあまりにも怪しさを孕んでいた。
しかし彼はその本に詳しかった。
愛読書として、人生のバイブルとしてその本の事はよくよく知っていた。
「私はその本を愛している。間違えるはずがない」
彼はそれからの人生というものを青写真として描いた。
家を建て、車を買い、幸せな家庭を持つ。
ペットは犬か猫か相談をし、子供部屋はどうするか。
「それで次の言葉は?」
「それは、愛」
「君は素敵なギャンブラーだ。君のような存在が私は好きだよ」
彼は何か間違いを犯したのではないか、彼の青写真は引き裂かれ、現実が彼の眼の前に突きつけられる。
「本当にそれでいいんだね」
資産家の男は小切手に筆を走らせた。
「これで君は好きなように生きることが出来るだろう。ただし、私の言葉は私のものだ。必ずしも君の人生を助けるものではない。私の資産同様、この本の言葉の価値も、君は半分しか理解していないと思うといい」

美味しいご飯を食べます。