時間は解決してくれない
中学卒業後クラスメイトの半数を相手取って喧嘩をした。
なんか字面がいかにも「武勇伝語ってやんよ!!」みたいな感じになってしまっているが、そういう話ではない。
喧嘩といっても廃工場に鉄パイプで裸に学ランとかの類いじゃないし。
ただの現代に起きがちなSNSでの失敗である。
中学生なんてちょっと悪いことに憧れるお年頃じゃないですか?
ずっとなにかにイライラして、人の悪口を言うことで自分は強いんだぞってアピールして、知ったばかりの恋愛をさも慣れてますよって感じでかっこつけて。
それが普通の会話なら、スーッと形に残らず消えるけど、文字として残るとそうはいかない。
そんなお年頃とSNSって相性が最悪なわけなんですよ。
そんなわけで卒業後は中学の友人と誰一人として連絡を取っていなかった。
それなのに年が明けるちょっと前、一件のLINEがきた。
「今度、同窓会やるけどこない?笑」
そのLINEを未読無視し続け、気づけば同窓会前日。
また別のクラスメイトから同じ内容のLINE。
こわいこわいこわい。
何故だ。何故誘ってくる。
シンプルにクラスメイトだからってことで誘われてるのか?
いや、そんなわけない。
もしかして同窓会って名目で呼び出して、海に沈められるのか!?
あーーーーー、わからん。
ってことで、行くことにした。
なんとなくどう転んでも面白い話になる気がしたからだ。
理想は「あのときはごめんなー」をもらうこと。
許容は海に沈められて無事に生還すること。
最悪は「もう許したから」とこっちが全部悪かったみたいにされること。
同窓会当日は会場が近所だったので歩いて行った。
心の中のコップは、わくわくの成分で出来た液体と、不安で出来た大きな黒く濁った氷で今にも溢れそうになっていた。
飲んでないけどもう吐きそう。
店の前に無事到着。
扉を開ける勇気を持ち合わせておらず、一時退散。
「おー、久しぶり」
撤退間際、唯一の味方登場。
たぶんこのとき彼と会ってなかったら、店内に入れてなかった。
現実は最悪だった。
会う人会う人に「もう気にするなよー」とか「若気の至りだったよね」とか言われた。
百歩譲って「若気の至りだったよね」はいいわ。なんかお互い様感あるし。
「もう気にするなよー」は違うじゃん。
完全に俺一人悪かったときの言い方じゃん。
まぁ俺も大人だから、精一杯の笑顔で「えー、ありがとー」って返したけど。
いや、そこで言い返す勇気がなかっただけかもしれない。
海に沈められたくないし。
時間の経過と共に、怒りとか恥ずかしさとか悔しさ、悲しみは薄れていく。
ちょっと前まで、「時間が解決してくれる」と思っていた。
だけど最近は解決してくれるわけじゃないのだと思うようになった。
時間の経過と共に、その怒りとか恥ずかしさとか悔しさ、悲しみの優先順位が下がってしまうのではないか。
忘れるともまた違う。
生きてると毎日色々なことが起きる。
小さなミスから大きなミスまで。本当にたくさん。
だから毎日塗り替えられていくんだと思う。
それこそ歌とか映画の週間ランキングみたいに。
毎日、毎日新しいことが起きて、ランクインしたりしなかったり。
たまにTikTokみたいなSNSでバズって、急にランクインする歌があったり。
それと同じで怒りとか悲しみも、気づいたらランク外にいて忘れてしまっているけど、友人と久しぶりに会ったことをきっかけにまたランキングに戻される。
今はもう気にしてなかったのに、急にランクインだよ。
だから、そうだな。
感情をずっと大事に抱えてることはできないけど、たまに思い出して、その時と全く同じ熱量で怒ったり、恥ずかしくなったり、悔しくなったり、悲しくなったりはできるよってお話。
「もう許したから」って大人の余裕みたいなの見せてんじゃねぇよ。
ばーか。
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