見出し画像

枕を6回叩くと

 1日24時間という設定があまりにも短く、やりたいことがろくにできない。いや、そもそも24時間すべてを起きてるわけではないので、このゲームはもっと鬼畜だ。

朝食を食べ、大学の講義を受け、昼食を食べ、大学の講義を受け、課題をこなし、夕飯を食べ、バイトに行って、風呂に入り、ちょっと本を読んで、寝る。

毎日、講義や課題の内容は多少なり変わるがだいたいこんな感じだ。

つまんない。あぁつまんない。

本当は映画を観たいし、ゲームもしたいし、絵だって描きたいし、本ももっと読みたい。

それなのに時間が足りない。だいたい1日16時間くらいは起きているわけだが、何故か時間が足りない。


1時に寝て、9時に起きる生活。


そうか!これがよくないのか!

僕は早起きすることを決心した。


 とりあえず早起きできそうな方法を片っ端から調べる。

すると、どうやら人間には「自己覚醒能力」というものが備わっていることを知った。

「自己覚醒能力」とは、起きたい時刻に起きられるという夢のような力である。

これを駆使すれば、早く起きられる!!

その日からこの力を使って早起きに挑戦することにした。

この「自己覚醒能力」というのは、「何時に起きたいか」を強く強く思い浮かべるだけでいいらしい。そうすることで、身体がその時間の自然に目覚め、その上すぐに活動できる準備まで整えてくれるという。

至れり尽くせりか!!

こんな便利な機能があるなら早く教えてくれよ!


 その日の夜、僕は6時に起きるために枕を6回叩いた。

どうやらルーティンのようなものも効果があるらしく、張り切って6回叩いた。埃が舞った。鼻がムズムズした。

そして、羊を数える要領で、「6時、6時、6時、6時、6時.....」と唱えながら寝た。6時が次々に柵を跳び越えていった。


すっと目が覚めた。暗い。

僕の部屋には時計が無いため、立ち上がって充電器に差されたスマホを見に行く。

5時38分。

大成功だった。

恐るべき自己覚醒能力。

見事に早起きが出来たので、一瞬たりとも時間を無駄にすまいと一心不乱に様々なことをした。

早起きは三文の得とは言うが、三文どころではないと思う。

まだ外が薄暗く静かな世界で、多くの人が眠っているなか、自分だけが有意義に過ごせているのでは無いかという錯覚をうける。優越感がすごい。

しかも早く起きたことにより、その日丸々1日までもが有意義に過ごせた気がした。早起きって素晴らしい。

僕はその日の夜も、枕を6回叩いて、6時、6時.....と唱えた。


目が覚めた。明るい。

立ち上がる。スマホ見る。

7時28分。

2日目にして失敗。

どうやら僕はまだ自己覚醒能力を使いこなせていないようだ。厨二病チックで少し胸が躍る。

まぁ普段よりは早く起きられたからいいや。

その日1日もそれとなく過ごした。


夜になり、なぜ今日は失敗したのか原因を考えた。

昨日、寝るのが遅かった?いや、そんなことない。

寝る前にスマホ見てた?ちゃんと見ないで過ごしたよ。

カフェインでも取ったんでしょ?そんな初歩的なミスしません。

んー。さっぱりわからない。

原因は結局わからないまま、枕を6回叩いて眠りについた。


おはよう。真っ暗だ。

立ち上がってスマホを見る。

2時47分。

馬鹿か。


眠る。


起きる。真っ暗。

スマホ確認。

4時29分。

ちょっと早いな。


あと1時間くらい寝かせて。


起きた。明るい。

スマホを見る。

9時49分。

スマホを投げた。


初日以降うまくいかない。

今日に関しては自己覚醒能力の暴走じゃん。

初日は何がよかったんだろう。

やっぱりやる気か?やる気が違うから起きられないのか?

わからん。本当にわからん。


夜になり、明日こそは成功させるぞと思い、枕を6回強めに叩いた。埃が宙を舞う。鼻がかゆい。

6時.....6時.......6時.......6時...........


目が覚めた。暗闇。

立ち上がる。時計買おうかな。スマホを見る。

5時49分。

どうやらこの力を使いこなしてしまったようだ。




どうすれば成功して、どうすれば失敗するのかはいまいちわからない。

しかし早起きは素晴らしいことだけは分かった。

シンプルに起きてる時間が長くなる。

それなら夜更かしも同じでしょ?

違うわ!!!

詳しいことは知らないけど、きっと早起きは素晴らしいんだよ!


とりあえず、早起きがしたかったら寝る前に枕を叩こう。埃が舞うくらい強く。

そうすれば起きられるはず。たぶん!


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?