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#21 ギターで人を殺すな

 今日これを書いている日は2/28。2月最後の日だ。ちなみに、〆切は過ぎています。

 「逃げる2月と去る3月」とよく言うけど、2月が「逃げる」とは実によく言ったものだと思う。2月中に完成しているはずだった曲たちが列をなして僕をなじっているのをスルーして今この記事を書いている。ハイボールでも飲んじゃおうかな。最近、ホワイトホースの缶のハイボールがやたら好き。

 そんな僕の書斎には大きな窓があって、そこから毎日の空模様だったり、向かいのマンションの灯りだったり、道路を行き交う車だったり、いろいろなものが見える。窓の外を見てみると今日は実に「2月らしい」日のように思える。
 空は重たく曇っていて、気温は真冬に逆戻りしたかのような寒さ。雨は小雨というには勢いが強すぎるものの、本降りというには頼りないくらいの降り方をしていて、暖房を入れているから窓が結露してカーテンが濡れている。もうじき年度が変わろうとしているのに季節外れな気候にやる気も削がれて、タンブラーに注いだコーヒーをウィスキーロックのようにちびちびと飲む。そんな空気感を僕は「2月らしい」と呼んでいるのだけど。

 前回の記事では新しいことや面白いことをして自分の中に新しい風を吹かせないと、内側から腐っていくよっていう話を書いた。だからっていうわけじゃないんだけど、今週は普段あまり交わらない人たちとセッションを2回もしてきた。


 一つは、山口和也さん主催の「タメシビキ」会。プロアマ混じった20名前後のギタリストが機材を持ち寄って、お互いの愛機を試奏しあったり、情報交換したりという、まぁ夢のような企画。印象としてはギタリストというよりギターオタクみたいな人たちが多かったかな。僕は良くも悪くも「弾く専」なもので、こまかいスペックやらの話には完全についていけてなかったのだけど。
 そこにあったのは「ただ楽しい」という空気。うまく弾こうとか、ここで一番になってやろうなんて奴はいなかった。ギターが好きでただ楽しいというのは、最も根源的でシンプルな気持ちのように思えるが、そう感じるのは実は簡単なことじゃなかったりする。評価にさらされていたり競争の世界でしのぎを削っているギタリスト達にとってギターとは武士が携える刀のような存在であり、ピリピリしたものだったりする。ところが、ギターって当たり前だけどただの楽器でしかなく刃物でもなければ凶器でもない。この辺の感覚は独特なものだと思うけれど、今回自分が参加してシンプルに楽しかったことを新鮮に感じたということは、幕末の浪人ギタリスト的路線に片足突っ込んでたのかなと。軌道修正も出来たり。非常に有意義な会だった。

 さてもう一つのセッションというのはプライベートのことだけど、随分年の離れた後輩たちとスタジオに行って音を合わせてきた。こっちは言うなら剣道を始めたばかりの見習い剣士って感じで、一人前の侍とはまた違ったピリピリを感じた。もちろん、バンドと剣道は違う。剣道は個人技の側面が強いかもしれないけれど、バンドは言わずもがなチームプレー。ワンマンじゃどうしようもない。山口さんのセッションで「ただ楽しい」空気を感じてきてなかったら、あまりいいリハーサルにはならなかったかなって思う。

 誰がなんと言おうと信じているのは、音楽って人柄だよってこと。それこそ、無礼者を切り伏せてしまうような冷たく鋭いギターを弾く人もいれば、刀というよりはむしろ鞘のように皆を包み込む暖かいギターを弾く人もいる。それはそれぞれのスタイルで、ベースにあるのはその人の人柄だと思っているんだ。

 たとえば他のギタリストや同じバンドのメンバーと、音のつばぜり合いになったとき、自分のギターは殺気を感じさせていないか?定期的に顧みないと。武士なら刀を研いで切れ味をよくするのだろうけど、ギタリストはやすりで削るなりなんなりして切っ先を丸くしていかないと、良いギターは弾けない。
 僕が言っているのは音のトーンの話じゃなくて、生き方の話。抽象的な話なんだけど、何となく伝わっていたら嬉しいな。

 熱い思いを語っていたらテーマ書くの忘れた。
 今日のテーマは「ギターで人を殺すな」です。

 〆切は、過ぎています。



Chira

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