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7/4 コルカタ

 マカオからコルカタに来るまでの間は、ほぼ寝ていたため特に書くことも無い。3つぐらい書くなら

1. 昨年開通したマカオー香港を結ぶ橋「港珠澳大橋」は帰りのバスで使えて良かった。半端無い建造物とか映画とか観たときに出る「人間すげえ。」という驚きが久々にあった。

↑海の上にノリと勢いで強引に建設した感があった。google mapに載ってない。
(参照:https://funlife.com.hk/zhuhai-macao-bridge/)

2. 自分はインドでアライバルビザ を取得するため、インドからの「出国日」を事前に決めておく必要があった。出国日を具体的に決めたくない人はダミーチケットを用意する必要があるが、僕はトランジット先のクアラルンプール国際空港でこのチケットを一番注意深く確認された。準備は最低でもトランジット先に着くまでにやっておいた方が良いと学ぶ。

3. 香港ーインド便マリンドエア。訳分からん時間帯に機内食出してくる。ベジorノンベジでどちらもカレー。ルーはまさかのサラサラめ。機内は揺れがち。皆で、おとと、おとと、と揺れながら狭い席でカレーを食べた。謎の連帯感がそこにはあった。

 でだ。長いトランジットを経て、ようやく飛行機はインドは東の大都市、コルカタへ到着した。午後11時半着の予定だったが日を跨いでの到着となった。
 インド入国、最初の関門は上でも書いた「アライバルビザ 」の取得である。本来インドに入国するためにはどの国の人も事前にビザの取得が必要なのだが、日本人限定で空港到着後、現地でのビザ取得が可能なのだ。しかし様々ネットの記事を読んだところこれが意外とスムーズに行かないことが多いらしい。
(アライバルビザ に関しては右のリンクを参照【https://www.indembassy-tokyo.gov.in/jp/visa_on_arrival_jp.html】)
 日中ならまだしも到着したのは深夜0時。日本の空港と違い、海外では空港職員の当たり外れやバイブス次第で手続きに大きく差が出るため、とにかく「当たり」を引けることを願っていた。意外と綺麗なネータージー・スバース・チャンドラ・ボース国際空港に到着し、E-visaカウンターへ若干緊張しながら向かう。眠そうな職員に「ビザ・オン・アライバルプリーズ」と言うと「オージャパニジャパ二」と言いながら書類を渡してくれる。記入事項を書き上げいざ提出に行くと、遅々たるスピードではあるものの、手続きは順調に進んで行く。手続きが遅くなる原因は職員の無駄話にある。「日本のどこから来た?」「俺の友達にマエダってのがいるが、お前知ってる?」「そのイヤホンブルートゥース?くれよ。」など、様々な角度から飛んでくる質問をあしらいつつ、僕はひたすら待ちに徹する。なんと無くインド来たなあ、という思いが込み上げてくる。
 余りに作業が遅いので「空港内に喫煙所ってあんの?」と僕が聞くと、職員は顔を上げ「お前はタバコを吸うのか」と聞き返してくる。何故か嬉しそうである。そうか、そうか、しゃあないな、じゃあついてこいよ。と彼は僕のパスポートを机の上に放るとカウンターを出て歩き始めた。いや、仕事してよ。と思うが素直に着いて行くとそこは空港内のトイレであった。中に入ると他の職員たちもトイレでタバコを吸っている。「深夜のここは俺たちだけの場所なんだぜ」と僕を担当してくれた職員が得意げに言ってきた。めちゃくちゃだな、と僕は思った。
 入国手続きを中断してとりあえず職員たちと一服する。「俺たちの場所」に突然現れた日本人に皆興味津々のようで「それは日本のタバコか?」「つかライターどうやって機内に持ち込んだお前」「帰りは絶対没収してやるからな」「俺の友達のケン、知ってる?」など言いたい放題である。入国前から非日常感があって、コレコレ、こういうのをしに来たんだと楽しくなる。
 一服後、彼と共にカウンターに戻り、しばらく空港内をうろうろしていた野良猫と遊び、ようやく手続きが終わった。1時間ぐらいかかったような気がする。とまれ、ビザも無事取得し、いよいよインド入国である。

↑空港内の野良猫。ずっと鳴いている。かわいい。

 深夜一時。このまま空港で一泊して、明るくなってから街に出ても良かったのだが、何となく早く街に出たいという焦りがあった僕は空港内で一万円をルピーに変えるとタクシーを使って市内へ出ることにした。『地球の歩き方』によると、インド旅行定番トラブルの一つとして、空港周辺のタクシーに騙されるというのがあるらしい。法外な料金を請求されたり、謎の旅行会社に連れて行かれこれまた法外な料金のツアーを組まされるなどが定番のようである。という訳でそれなりに用心しつつプリペイドタクシー(事前にカウンターで料金を支払い、タクシーを手配してもらう仕組み)のカウンターへ向かう。インド人が数人前に並んでいたのだが、僕の番が来ると何故か受付の人間が怪しげなおっちゃんに入れ替わる。「ウィッス!とりあえず外に出てこいよ!」とおっちゃんは言う。なるほど。どうやら僕はプリペイドさせて貰えないらしい。「おっけおっけ!」と一言言って、カウンターを離れると僕は違う手段を探し始めた。おそらくあのおっちゃんに着いて行くとロクなことにならない。空港内をウロウロしていると、僕の動きと並行して空港外を歩くおっちゃんの姿が窓越しに見えた。ウォーキングデッドのようだった。
 しばらく空港内をウロついていると、インド内で最も大きいシェアを誇る配車サービスの一つ「Ola」のカウンターが見えた。SIMを持たない僕は配車サービスが使えないのだが、一か八か受付の兄ちゃんに頼むと電話番号を貸してくれると言う。助かった。と言うことで「Ola」の配車サービスを使って僕は無事空港を脱出した。空港を出た瞬間、先ほどのウォーキングデッドが「おい!ざけんな!おい!」と何やら叫んでいたが聞こえなかった事にしてタクシーに乗り込む。向かうはコルカタの中心にあるゲストハウス「backpackers park」である。到着予定は深夜一時半。空いていれば良いが。

 当然ながら街並みはマカオのそれとは全く異なっていた。まず電灯が少ない。そして路面がレゴで作ったんかってぐらいガタガタしている。揺れる車内から外を眺めていると暗闇に目が慣れるに従って、予想外に人が多いことが分かってくる。皆、歩道で身を寄せ合って眠っていた。日中は屋台でもやっているんだろうか、ブルーシートを屋根にして川の字で寝る家族。足に包帯らしきものをぐるぐる巻きにして、うな垂れたまま動かない老人。ああ、インド来たなあと再度実感する。タクシーは法定速度を余裕で無視して、夜の街を走って行く。
 
 目指していたbackpackers parkは、路地裏にあった。どうやら野良犬の家族が寝ていたらしく運ちゃんはクラクションで彼らを蹴散らし、路地裏を進む。犬が吠えている。猛烈に吠えている。車が止まった。「ここだ」とおっちゃんは言う。外は真っ暗。車の周りを吠える犬が囲っている。「まじで?」と僕は運ちゃんの顔を見る。「はよ降りてや」とおっちゃんはダルそうな顔で僕を見る。外を見る。犬と目が合う。めっちゃ吠えてる。まじか〜、まじか〜と呟きながら僕は外に出るや否や、路地の遠くに見える明かりまでダッシュした。明かりの下にはボロいエレベーターがある。すかさず乗り込みドアを閉めると、エレベーターの外では先ほど目があった犬が吠えていた。ウォーキングデッド2。
 エレベーター3Fに目的のゲストハウスはあった。深夜にも関わらず明かりが点いており、スタッフも起きている。助かった。6人用ドミトリーの三段ベッドの一番上。そこが僕の場所になった。ベッドの幅は極めて狭く、壁がないため、下手に寝返りを打つと笑えない事態になるってなお世辞にも良い環境では無かったが、とにかく無事についた喜びに震える。
 2時。荷物を置き、先ほどの犬への恐怖も落ち着いてくると、共有ルームのバルコニーから騒々しい音が聴こえてくるのが気になった。この時間に誰かがパーティーをしている。大変疲れてはいるものの、一期一会だ。とりあえず見に行くことにする。バルコニーへ続く扉を開けるといよいよ音は大きくなった。インド人と思しき男たちが踊り狂っている。Backpackers park、ちゃうやんけ。なんでこんなに現地人居るんだ。と訳が分からないでいると、お前も踊れと男達が促してくる。踊りは苦手だが、もうどうにでもなれとメチャクチャ踊っていると、皆何故か大いに喜び、ラム酒やら、ビリヤーニやら、じゃんじゃん出てくる出てくる。ひとしきり音楽が終わってから話を聞き発覚したのだが、どうやらこのゲストハウス、インド人とバングラデシュ人労働者がコルカタ勤務の時によく使う場所だったようだ。今夜は宿泊者の一人のオッサンの誕生日だったらしく、夜中までパーティーをしていたとのこと。それで受付も遅くまで開いていたらしい。オッサン誕生日おめでとう、そしてありがとう。その後しれっとそのパーティーに参加し、とにかくたらふく酒を飲む。皆、ラム酒をペプシと水で割ったものが好きらしい。ジャンジャン飲んで、潰れたヤツから部屋に戻って行く。一人二人と人が居なくなって行き、最後はムンバイ出身の建築家アビと僕の二人だけになる。アビはバイクと家族をこよなく愛する中々渋い男だった。とりあえずインドに来たものの何のプランも立てていないと僕が言うと「それならレーだな。レーに行け。」とアビは言った。インドの北の山奥にレーという場所があり、「ファッキンビューティフル」な場所らしい。数日後レーに向かう事を決めつつ、アビと仕事や家族についてひたすら話す。時刻は4時をまわっていた。完全に酔っ払った彼は英語とヒンドゥー語が混ざっており、もはや何を言っているのか分からなくなっていた。午前4時半、ようやくお開きになった。散々飲ませてもらったし、明日は僕が酒を奢るというとアビは嬉しそうな顔で何がしか呟いて部屋に戻っていった。
インド初日。快調な滑り出しである。

アビ。

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