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スナフキンに恋して

私はいつの頃からかスナフキンが何となく好きだった。
あの飄々としたところがイイ。
お付き合いするなら彼のような人がいいと思っていた。

だが彼の恋人になるのは二重に難易度が高い。
まず彼のような人は現実には極めて少ないのに加えて、自分自身が相当に自立心が高くなければいけない。
何しろ冬の間ずっと旅に出てしまうのだ、依存心が強かったら付き合っていけない。
旅に一緒についていくのも駄目だ、あれはそういう目的の旅ではない(というか目的はないと思われる)、下手をすると嫌われてしまう。

彼が春になったら必ず帰ってくる場所になりたい。

作中では親友のムーミンがそういう存在になっている。
おのれムーミンめぇ(嫉妬)

しかし私は衝撃の事実を知ってしまう。
彼は「○○禁止!」とか書かれた公園の看板を見ると、激怒して勝手に引っこ抜くような人だったのだ。
え…これ一緒にいるとトラブルに巻き込まれるやつだわ…
だがこれは、そんな人だとは思わなかった、見損なった! という話ではないのである。
そりゃあれだけ自由を愛していたら、そういう一面もあるかもなぁ…

ちなみにスナフキンのこの性質は父親のヨクサル譲りだ。
彼の抑圧への抵抗の仕方は息子とは違っていて、例えば「ここで昼寝禁止!」という注意書きのあるところで、堂々と寝る。
しかも抑圧への抵抗とか気負った感じではなく、ただそこで寝たいから寝るという風に。
きっとそこは思わず昼寝したくなるほど気持ちの良いところだから、わざと禁止しているんだと想像を膨らませたくなるほどに。
さすが父上、かっこいい。

ヨクサルも素敵だが、彼はミムラ夫人をいたく気に入って、スナフキンを儲けている。
彼女には父親の違う子供たちが30人以上いて、恐らくその複数の父親たちの手をほとんど借りずに育てているエネルギッシュなお母さんだ。
私と全然違うタイプじゃん、ああいう人が好きなら私は無理だわ。

ヨクサルのことは諦めた。
やっぱりスナフキンだ。
しかしスナフキン、今までマイルドな部分だけ見てイイと思っていたけど、人ってそんなもんじゃないよね。

人を好きになるって難しいし、覚悟がいるね。
教えてくれてありがとう、スナフキン。

それにしてもミムラ夫人、何となくすごいのは分かるんだが、ヨクサルは彼女のどこが良かったんだろう?
複数の相手と子を儲けているが、魔性の女みたいじゃなくて明るい肝っ玉かぁちゃんという感じ。
素敵な人なのは分かるんだけど、複数の男性(?)、しかもヨクサルみたいな人まで自分の子を産んでもらいたくなる魅力って?

どうしてどうして考えてたらやっと気づいたわ。
思えば最初からヒントはあった、作中によく出てくるミムラ夫人の子供たち、スナフキン、リトルミィ、ミムラ。
最初に彼らが兄弟だって知ったとき真っ先に思ったの、兄弟なのに全然似てないって。
あれだけ大勢の子供たちを育てていて、子供ってこういうものって経験則に縛られた子育てしてない、みんな個性が生かされてる。

これは自分の子供を任せたくなるわ。
ミムラ夫人、やっぱりすごかった。

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