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#カワイクイキタイ

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役者×カメラマンの フォトエッセイ『#カワイクイキタイ』 日常、ときどき、ヘンテコ🦄 どんな時も人生はカワイイ❤️‍🩹
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記事一覧

#カワイクイキタイ30「春風ちゃん」

 未来の話だけしてゆきましょうね。  もう会えないあの人より、目の前のあなたがいい。あの時もらった宝物の言葉より、今日の他愛ない会話がいい。戻りたい過去なんてひとつもない。今日、今が、いつもいちばん大事。  変わってゆくことは前に進むこと。変わってゆくことは過去を愛する約束。裏切りや、あきらめじゃない。  ちょっと遊びに行ってみたい。過去に思うことはそれくらい。  いつもニコニコしているべきだ。本当は。気持ちいい言葉だけを使うべきだ。安心させるべきだ。楽しい気持ちにだ

#カワイクイキタイ29「怪獣」

 体から湯気が出ている。  この湯気がもし、意識して無意識になった情熱や愛情だったら。だんだんと抜けて、消えかけているのだとしたら。  余りある情熱や愛情について、常々考える。  たくさんの人を巻き込んでたくさんの人を幸せにできる人と、そんなことを間違っても思い立ってはいけない怪獣がいる。怪獣は、自分が怪獣だと知らない。だから平気で壊す。傷つけておいて、傷ついたと言う。  怪獣になりたくない。怪獣を許しちゃいけない。  そう思う気持ちが必要だ。人間でいたいなら。

#カワイクイキタイ28「ずっと忘れませんように」

 あの最低のヒロインは、残される人のことなんて何も思いやらず、他人の人生を呪うだけ呪って、自分勝手にいなくなった。  羨ましかった。  あんな風に生きられたら。あんな風にいなくなれたら。最低だからなんだ。どうせあなたは、私を嫌いになれないでしょと。誰かを信じてみたい。それがどんなに、キレイな形じゃなくても。  命は季節とおんなじで、ただ過ぎ去ってゆくもので、春は努力で冬にならないし、ずっと夏がよくてもいつか終わって秋になる。いつか必ず終わっていなくなる。あなたも私も。

#カワイクイキタイ27「可愛く生きたい」

 柔軟剤を変えた。体毛に柔軟剤の香りがうつってしまったうちの猫たちをたまらなく愛しくおもった。抱きしめて頬擦りしたら迷惑そうだったけど、逃げずにされるがままでいてくれた。撫でるととても嬉しそうな顔をした。動物の感情表現が乏しいなんて真っ赤な嘘だ。お前に触られたくないだけだ。  いつもなら食べない量の食事を、あなたといっしょに食べた。急上昇した血糖値により、好きなだけ食べて眠くなる身勝手な人間が、ほとんど同時に二人うまれた。このまま眠ってしまえたらいいのに。降りる駅がもっと先

#カワイクイキタイ26「つよわい」

 時間や、季節や、天気のように。どんな時も、どんなことも、いいこともわるいことも、しかたないかと笑って生きてゆけたらいいのに。 動物や植物がしないこと、私もせずに済んだらいいのに。いっぺんの悪意なく、誰のことも傷つけず、静かに生きてゆけたらいいのに。  わりと本気で思っているのに。  ね。  白い持ち物をすぐ汚し、白いまま長持ちさせた試しがない。時間通りに電車に乗ることも、朝からピシッと起きることも、私にはむずかしい。数字全般がだめ。動物が人間のせいで死ぬ話は辛くて見

#カワイクイキタイ25「この気持ちの名前をまだ知らない」

 エッセイを書こうと思う。  この『#カワイクイキタイ』は文章と歌詞の間のような、比喩表現と曖昧な言い回しを嗅いで探して、歌にのせればそのまま歌えるような、少なからず多少ポエミーな、そういう文章を書こうとしていつも書いている。  でも今回は、エッセイを書こうと思う。  いつか貪るように読んだ、松尾スズキやさくらももこやリリー・フランキーが書いた、エッセイ然とした、エッセイのための、エッセイめいた、そんな文章を。  何もかもを赤裸々に書いたりはしない。なんの調理もせず出

#カワイクイキタイ24「猫と黒は相性がわるい」

 すっかり涼しくなった。夏の日差しはもう忘れた。暑くなる頃にはこの肌寒さも忘れてる。  忘れてしまうだけで、夏が暑いことも冬が寒いことも知ってる。なかったことにはならない。  知らなければよかった、出会わなければよかったなんて、思わない。そんなの、とんでもないよ。  このまま目が覚めなければいいと思う夜と、朝を心待ちに眠る夜の繰り返し。夏に冬の楽しみをもらって、冬に夏の楽しみをもらって、気づけば半年、気づけば一年、振り返ったら生きていただけの繰り返し。  そうやって転

#カワイクイキタイ23「昨日より今日より明日」

 「人生を今日よりもよくしていこう」  かわいそうに。有線から垂れ流しで消費されていたはずの音楽は今はじめて私の耳に届いた。他人事のように歌うことで、人生なんてなにもわかっていないような声で歌うことで、痛みや悲しみに寄り添わないことで、誰かを救う時もあるんだ。  でも、君が泣くなら僕も泣く。君が死ぬなら僕も死ぬ。君が無くなるなら僕もきっと無くなってしまうし、君が叫ぶなら僕も叫ぶ。ひとりぼっちになんてしない。守れない約束ばかりでもこれは約束だ。  みんな、自分だけは一生生

#カワイクイキタイ22「なんでもいいね」

 頭の上でりんごがポンと跳ねました。  その瞬間、あなたを好きになりました。  あなたを好きになった瞬間、世界は突然鮮やかになり、明日が待ち遠しく、空気は美味しく、なんだか健康になって、肌の調子がよくなった気すらしました。そんなのは全部気のせいで、そんなのは全部本当のことでした。  その瞬間は、豪華でも派手でも賑やかでもなく、何も特別ではなく、とても静かなものでした。  近くのコンビニに行っただけ。たった数十メートルを手も繋がず何も話さず、でもふたりきりで歩いただけ。帰

#カワイクイキタイ21「夢で逢えたら」

いいな。  せめて夢の中でくらい、あいたい人にあいたい。あいたい時にあいたい。本当は思ってること声に出して言いたい。現実はあまりにもつらい。つらくてこわい。それに大変。  人生は楽しいものではなく続いてゆくものだから、どうしたら嫌にならずに続けてゆけるかを考える。  仕事、食べるもの、一緒にいる人。そう考えたら、途端にひとりぼっちな自分が情けなくなってくる。  誰かの、これからも続いてゆく誰かの人生に、居ても差し支えない人間になりたい。差し支えないのは大前提で、できれば

#カワイクイキタイ20「あなたがずっと私を忘れませんように」

 そういえば今日はまだなにも食べてないな。中断して台所へ行く。冷蔵庫を開ける。昨日の残りものをレンジでチンして適当に食べる。誰か居ようものなら味噌汁や卵焼きのひとつも作るが、自分のためにそこまでする元気はない。私が守れるのは、猫との約束くらい。自分との約束はなにひとつ守れない。  子どものころ好きな子が何人かいたみたいに。あの子のことが好きなんだったらあの子のことは好きじゃないってこと?というのは間違っている。あの子も、あの子も、みんな好きだった。あれは嘘ではない。  心

#カワイクイキタイ19「後片付けは誰かがやってよ」

 クワズイモがぐったりしてる。どうしてほしいのか分からない。どうしてほしいか言ってくれればそうするのに。私になにができますか。私にできることならなんだって。なのに、どうしていつもどうしたらいいのか分からないんだろう。  引っ越し屋と葬儀屋がどうしてあるのか。なんの思い入れもない赤の他人がいきおいでやってくれないと出来ないことってたくさんある。  愛する人を自分の手で燃やすなんてできない。この部屋から出ていく準備なんてできない。悲しくて手が止まる。いつまでも終わらない。誰か

#カワイクイキタイ18「地球の歩き方」

 家の中でメガネを無くした。メガネを探したいのに、メガネが無いから見えなくて、メガネを探すためのメガネが必要だった。そんなものはない。でも、メガネを探すためのメガネが、私には必要だった。  どこかに向かっているはずなのに、帰る場所はちゃんとあるのに、電車や車に乗っているとき、夜道を歩いているとき、このまま行くとどこに出るんだろうとよく考える。  ラブホテルの窓はどこにも繋がっていない。ライブハウスの天井は低く、閉鎖的で、どこもかしこもヤニ臭い。東京で暮らす六畳やそこらの部

#カワイクイキタイ17「虚」

 誰かが覚えててくれたらいいや。  実はよく笑うし、楽しいことが好きだ。できればいつもご機嫌で生きていたいし、しんどい思いはしたくない。大変だったら燃えてくるとかも別にない。大変だったらただただ疲弊する。頑張るの、本当はそんなに得意じゃない。吐き気と眠気に弱い。我慢もそんなにできる方じゃない。  できれば毎日たくさん寝たい。目覚ましかけずに寝て、目を覚ますまで寝ていたい。都会より、自然が好き。街より、森や川や海が好き。便利で綺麗な家より、冬は寒くて夏は暑い自然の一部のよう