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「花束みたいな恋をした」

「花束みたいな恋をした」
1月26日に公開された、有村架純と菅田将暉が主演の映画はみなさんご覧になったであろうか。私は今日これから2回目を見に行く。

「なんでこんな映画を生み出してしまったのだろう、土井監督!!!」
真っ先に映画を観て思ったことだ。
大学生真っ最中の自分には刺さりまくる映画なのだ。
誰も幸せにならないじゃないか。
これをみて、過去の自分を思い出して泣くだけじゃないか。
だけど、だからこそ面白いのがこの映画の醍醐味でもある。
女は上書き保存。男は別ファイルで保存と言われるが、
あながち女も別ファイルに保存しているのではないかと
個人的には思っている。

そんな映画で、2つどうしても言いたいことがある。
1つ目は人生の不条理さ、
もう1つは脚本家の坂元さんの神がかったセンスである。

人生の不条理さ??
この映画は、その映画の主人公に感情移入する映画というよりかは、過去の自分を思い出して、ちょっぴり胸が痛くなる。
私は、元彼を思い出してちょっと泣いてしまった。ずっと一緒にいたら手にとるように彼の行動はわかるし、愛情は芽生える。だけど、一緒にはいられなくなってしまう日はやってくる。
ああ、なんてこった神様、世の中は不条理だ。

人間は良くも悪くも成長して変化する、価値観も考え方も。
好きだったはずの彼女の、その一部が嫌いになる。
彼女から好かれていた自分の、その一部を否定する日はやがてやってくる。
居心地を求めていたはずなのに、
居心地は良くてもその場所が自分の場所じゃなくなってしまう。

21歳の若造の私には、結婚することがどういうことかなんてわかんないし、5年も付き合って別れるってどんなことかわからない。
とりあえず、純粋ではなくなってしまった自分を誰か拾って欲しい。笑

私は、映画館でチケットのもぎりをしているが、カップルでこの映画を見に来ている人たちに
「ごゆっくりご覧ください」
と伝えるのが心苦しい。
逆に、違う映画をお勧めしたくなる。なぜ終わりを迎える恋を恋愛真っ最中の2人が見るのだ。価値観の違いあるよな。とか、お互いの変化とか気にしちゃうじゃないか。
なんなら、「えんとつ町のプペル」を見て感動してお互いに熱く感想共有した方がましだ。早くチケットを変えたほうがいい。
1年も付き合っていないカップルだったら、この映画を観てゾッとするしかないのだ。

みんな大好き坂元さん
坂元さんの言葉のチョイスはもはや音楽を聴いているような気分になる。
「電車に乗っている」ことを「電車に揺られている」と表現してしまうところとか、「じゃんけんでぐーはパーより強いんじゃないか」ということを強調して、さも自分が良い感性を持っている特別な人間かのようにエピソードを食い込んでいる。

いくつかの世代に共通する“普通”になることへの漠然とした忌避や葛藤、そして自分が非凡な存在であるという普遍的な“勘違い”を、2010年代ポップカルチャーに耽溺する20代の見る世界として表現した、きわめて“普通”の物語だと理解することができる。

大好きな映画評論家の寺田浩一さんの花束みたいな恋をしたの評論で表した言葉である。ありふれた日常を映画として意識的に表現し、言葉を遊ばせる。あたかも自分が普通ではない特別な人間だという若者特有の、あの感情を皮肉として否定してくる。心地よく否定されるのが、また良いのだ。

ありふれた、誰にでもある物語。
だからこそ、自分と重ねて見てしまう物語。

なんだか、ちょっぴり切なくなる気分の時に見てもらいたい映画です。

ではまた!




「なんでこんな映画を生み出してしまったのだろう、土井監督!!!」


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