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EBTG(Everything But the Girl)2002-2023年(感想)_時代に合わせて変化するソロ作

EBTG(Everything But the Girl)は、Ben WattとTracey Thornが1980年代前半から活動しているユニット。以下に2002年以降にEBTGとしてリリースされたアルバム/シングルと、いくつかのソロ作品についての感想などを。

1996-2001年リリースについての感想はこちら。


Corcovado (Knee Deep Mixes) (2002年)

EBTGによるAntonio Carlos JobimのカバーはDrum'n'Bassだったが、それをさらにドイツの2人組ユニットKnee Deepがハウスミックス。
「Corcovado (Knee Deep Classic Club Mix) (Ben Watt Vocal Re-edit)」は最高のラテンハウスで、軽快なスキャットが小洒落ているのとグルーヴも良いから踊れる。あらゆるEBTGのリミックスで一番好きな曲。
元々ボサノヴァっぽい曲もやっていたので、ラテン系音楽と相性は良いと思うのだが、残念ながらこの曲のようにノリの良いラテンハウスは他に無いと思われる。


Like the Deserts Miss the Rain (2002年)

カバー曲などを含む編集盤で、ベスト盤のようでもあるがクセのある選曲がユニーク。残念ながらSpotifyにはない。

「Wrong」をリメイクした「Tracey In My Room (Lazy Dog Bootleg Vocal Mix)」が新曲と思われるがダンス・ミュージックとしてはイマイチ。
しかし「Rollercoaster」「Protection」「Before Today (Chicane remix)」などツボを押さえた選曲が素晴らしく、「My Head Is My Only House Unless It Rains」と「A Piece of My Mind」は、「I Didn't Know I Was Looking for Love(1993年)」からのシングルB面曲だったり、通して聴いてみるとリスニング用の編集盤としてよくまとまっている。


Adapt or Die: Ten Years of Remixes (2005年)

リミックス曲をまとめた編集盤。
ほとんどが過去のリリース曲であるため特筆すべきことはないが、「Missing」についてはベタベタなTodd Terryのリミックスよりもハードに仕上がっている「Missing (CL McSpadden Unreleased Powerhouse Mix)」が良いかも。


Out of the Woods/Tracey Thorn (2007年)

25年ぶりとなるのTracey ThornのソロアルバムでプロデューサーはEwan PearsonCharles Websterなど、曲ごとに複数起用している。レーベルはVirginから。
1曲目「Here It Comes Again」からしていつもの暗くて憂鬱な感じではなく、優しく包み込んでくれるような感じ。さらには「It's All True」のように多彩なシンセ音が聴けたり。全体的にエレクトリックでダンスビートの曲が多い印象。

暗いダンスビートで耳馴染みの良いポップというのが、元MolokoのRóisín Murphyのそれに近い。
UKアルバムチャート38位。ポップで風変わりでありながら出来の良いアルバムで、2nd以降のソロアルバムでは最も充実していると思う。


Love and Its Opposite/Tracey Thorn (2010年)

UKアルバムチャート51位、英国でのリリースは、Ben WattのレーベルStrange Feelingから。プロデューサーはEwan Pearson

前作同様にEBTGでの暗さや哀しい雰囲気が薄まっており、「Hormones」「Why Does The Wind?」などは肩の力が抜けた軽快なポップスに仕上がっている。
Ewan Pearsonはリミックスワークが独特な人で、個人的にかなり好きなプロデューサーのひとりであるため期待し過ぎていたかもしれないが、ぼんやりした印象の1枚だから繰り返し聴くことは無いかも。


Tinsel and Lights/Tracey Thorn (2012年)

UKアルバムチャート91位。プロデューサーは再びEwan Pearson
12曲中10曲がカバーの牧歌的なクリスマスアルバムとなっている。
元々クリスマスソングがあまり好きではないのもあるが、暗い曲で寄り添ってくれるようなTracey Thornを求めている人には内容的に合わないものがある。


Hendra/Ben Watt (2014年)

こちらもプロデューサーはEwan PearsonBen Wattによる31年ぶりのソロ作品は抑圧された気怠いロック。
Tracey Thornのソロ作品もそうだが、EBTGではやらないようなことをやっている印象。

ボサノヴァっぽい曲もありつつ、カバーデザインのような寂寥感のある素朴な雰囲気は全体的に『North Marine Drive』と似ていてなかなかの好盤。
また、元SuedeのBernard Butlerが参加しているだけあって、ギターの音色がどこか懐かしさも感じさせる。


SOLO- Songs and Collaborations 1982-2015/Tracey Thorn (2015)

シングルのみのリリースであったり、様々なアーティストたちとのコラボなどの編集盤。そもそも単発でのコラボの多い人なので、こういう企画はとても嬉しいのだがSpotifyに無い。
The Style Concilとのコラボ「The Paris Match」や、「It's All True (Escort Extended Remix)」など比較的レアな曲が聴けるのが嬉しい。
シュトゥットガルトで結成されたTiefschwarzとコラボしたハウス「Damage」のグイグイくる感じも良い。


Fever Dream/Ben Watt (2016年)

セルフ・プロデュースのソロ3枚目は、路線的には前作と近いロックだが、引き続きBernard Butlerが参加しており、少しギターサウンドがブルースっぽくなりつつ、音も自己主張している。
こういう渋い大人のロックをBen Wattに求めていないので個人的な好みとなるが、前作の方が物静かで良かった。


Half-Light/George Fitzgerald feat. Tracey Thorn (2018年)

イギリス出身のプロデューサーGeorge Fitzgeraldとのコラボは繊細なディープ・ハウス。
いくつかバージョンが存在するが、途中からキックの4つ打ちが足される「Half-Light (Night Version)」がリスニングに最適で心地よい。


Record/Tracey Thorn (2018年)

ソロ5作目はUKアルバムチャート91位。プロデューサーは再びのEwan Pearson
シンセベースの音が印象的な「Queen」や、Corinne Bailey Raeとデュエットしていたミドルテンポの「Sister」など、まぁまぁ好きな曲はあるが過去作と比較してしまうとイマイチ。
エレクトロニック色の濃いポップスでは、他で似たようなアーティストが数多存在するため、Tracey Thornの個性が際立たないからかもしれない。


Storm Damage/Ben Watt (2020年)

Ben Wattのソロ4枚目は前作を踏襲してより渋さを増した印象。本作ではBernard Butlerが不参加。厳かな雰囲気の「Irene」は良いと思う。
全体的にダウンテンポだが引っ掛かりのある曲はなく、過去作と比較してぼんやりした印象の1枚。


Storm Shelter/Ben Watt (2021年)

『Storm Damage』から4曲とカバー曲を含む全6曲入りのミニアルバム。
シンプルなピアノ弾き語りがメロディーの良さも相まってかなり良くて、
様々なアーティストによってカバーされてきたTen Cityの「That’s The Way Love Is」の美しさといったらない。
個人的にはダンスミュージックは外部のプロデューサーに任せてBen Wattにはこういう素朴な音楽だけをやっていて欲しいと思ってしまう。


Fuse (2023年)

EBTGとしての24年振りの新作で、レーベルはBuzzin' Fly Recordsから。

エレクトロニックなポップスは、暗くて憂鬱な雰囲気のアルバムなのだが「Lost」「Forever」のようにどこかに救いもあるような深みのある1枚。

ただ少し単調というか地味な作品のため、過去作と比較すると物足りなさを感じるのは確かで、カバーデザインも均等に並ぶ斜線がデジタルな風合いで硬質なのに、明るい紫との組み合わせが軽薄な感じがする。
デザインが悪いわけではなく、音のイメージとまるでマッチングしていないと思うのだ。


1982年のデビュー当時からの約40年の活動をざっと振り返ってみて思うのは、初期の3枚『A Distant Shore』『North Marine Drive』『Eden』が良すぎて、それ以降の作品と比較してしまうことと、Tracey Thornの他アーティストとのコラボはどれもユニーク。
90年代中頃からは音楽性の変化によってダンス・ミュージックへ傾倒し、外部プロデューサーによるリミックスには良い曲もあるが、オリジナルはダンス・ミュージックとしては機能的にイマイチということ。
また、2000年代のソロ作は既存ファン向けという印象でどこか物足りない。
作品によって好みは分かれるがしかし、挑戦する姿勢は伝わってくるのでアーティストとして素晴らしいと思う。


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