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Zero 7 2012-2022年(感想)_質の高いダウンテンポを聴かせるEP/シングル

Zero 7は、Sam HardakerHenry Binnsからなるプロデュース・ユニット。
以下2022年までにリリースされたいくつかのシングル、リミックスをピックアップした感想などを。
2010年までの感想はこちら。


The Colour of Spring/Zero 7 (2012年)

CDでは2枚組になるTalk Talkのトリビュート盤『Spirit of Talk Talk』への収録曲。
神秘的な女性ヴォーカルとエレクトロニカのようなシンセによるスピリチュアルな印象の曲。全体的にまったりとした感じはいかにもだが、リズムを刻む音が極限まで抑えられていているからZero 7のリミックスだと言われないと気付きづらい。

ヴォーカルに、feat.Only Girlとクレジットされているが、どのような人物なのかは不明。この曲は後に『EP3』へも収録されている。



Crush (Zero 7 Remix)/Hello Skinny (2013年)

ロンドンを拠点に活躍するドラマー/コンポーザーとして活躍するTom SkinnerのプロジェクトHello Skinnyの曲をリミックス。
Zero 7にしては珍しく、トライバルで呪術的なビートの曲で暗くテンポも速め。
そして、Tom Skinner本人の加工写真と思われるカバーがホラーっぽくてなんだか怖くてインパクト大。



Our Song (Zero 7 Remix)/Ultraísta (2013年)

ロンドンで結成されたトリオ、Ultraístaの曲をリミックス。
Laura Bettinsonによる切ないヴォーカルが印象的で、暗く深いダウンテンポ。リズムパートが徐々に強調されていくことでテンションが高まっていくような感覚がある。


On My Own (2013年)

2曲入りのZero 7 オリジナル曲。「On My Own」はオーストラリアの男性シンガーDanny Prattを起用したソウルテイストの溢れるディスコのよう。B面にはAORっぽい「Don't Call It Love」を収録。

生音にこだわったダウンテンポのように、これまでのZero 7からすると少し意外性のあるトラックだが、センスの良さは相変わらずだから期待は裏切らない。2曲とも好き。



Simple Science (2014年)

4曲入りのEPはバレアリックな感じ。
タイトル曲はオースラリアのシンガーDanny Prattを起用したエレクトロニカっぽいハウスビートの曲。ファルセット・ヴォイスとシンセのアルペジオの組み合わせが印象的。
Michael Jackson「Don't Stop 'Til You Get Enough」を引用した静かなディスコグルーヴの「Take Me Away」も多幸感があって好き。
眼球または、顕微鏡で拡大したなにかのような不気味なカバーデザインのせいで敬遠しがちだが、全ての曲のクオリティは高い。

「Simple Science」にはTodd Osbornのリミックスもあって、原曲に忠実なディープ・ハウスとなっている。


EP3 (2015年)

『EP2』が2000年だったから、15年越しでシンプルにタイトルへEPと名付けられた作品がリリースされた。
繊細に編まれたシンセサウンドと男性ヴォーカルによるな「400 Blows」や、José Gonzálezを起用した静かにチルできる「Last Light」、スピリチュアルなエレクトロニカといった「Crush Tap」など、バレアリックな雰囲気の5曲全てが品質の高い名盤。


Swimmers (2019年)

Zero 7によるオリジナル曲で、ヴォーカルにイギリスのシンガー・ソングライターJem Cookeを起用したダウンテンポ。
無駄なものが無い空間というか、夜に水の中をゆったりと泳ぐように静かな曲。独りでひっそりと聴きたくなるような心に染みてくるような曲。近年のZero 7による楽曲では最もリピートしている曲でクセになる。


Aurora / Mono (2019年)

Zero 7によるオリジナル曲。José Gonzálezを起用したアトモスフィックな「Aurora」と、詳細不明だがHiddenという男性シンガーを起用したフォーキーな「Aurora」をリリース。
どちらもクールダウンには最適なダウンテンポ。


Shadows EP (feat. Lou Stone) (2020年)

Zero 7によるオリジナル曲。ロンドンを拠点に活動するLou Stoneを起用した4曲入りのEP。
ソウル、フォーク、ダウンテンポと、様々なジャンルを内包したEPでこれまでの延長線上にはあるのだが、新たなヴォーカリストと組んでいるおかげでまた新たな印象を与えてくれる良盤。
深みに誘ってくれるかのような美しいチルアウトを聴かせてくれる「Outline」がイチオシ。


Symmetry (Zero 7 Remixes)/SYML (2020年)

シアトルを拠点に活動するBrian Fennellのソロ・プロジェクト、SYMLの曲をリミックス。
メランコリックなメロディーと優しいハイトーン・ヴォイスをダウンテンポに仕上げた「Symmetry (Zero 7 Remix)」と、キックの4つ打ちでディープ・ハウスとなる「Symmetry (Zero 7's Mix For Trouble)」の2つのリミックスをリリース。
繊細でスピリチュアルなサウンドスケープは近年のZero 7の作品の中でもかなりクオリティが高いと思う。



Less Talk (2021年)

サックスの音がジャズっぽくもあるインスト曲。
少し楽しげな雰囲気の漂う屈託の無さはZero 7にしては珍しいかもしれない。


Care (Zero 7 Remix)/Byulah, Memblem (2022年)

Ninja Tuneレーベルからアルバム300枚のリリースを記念して発表されたコンピ盤『NTPM300』への収録曲。
ダウンテンポではあるのだが、話しかけるように歌う女性ヴォーカルの印象的な、少し陶酔感もあるアンビエント・ミュージック。


2012年以降のZero 7の活動をざっと振り返ってみると、アルバムがリリースされていないために活動そのものがメディアに取り上げられないから露出しづらくて情報をキャッチしづらいのだが、「On My Own」以降のセルフリリースのシングルやEPはどれも品質が高い。
元々センスの良い音楽をつくっていただけに、様々なヴォーカリストを起用することで、楽曲のバリエーションの幅も拡がって長く聴いてきたファンも飽きないから戦略的だと思う。


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