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デビュー30周年マライア・キャリーのリマスタリングEP

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マライア・キャリーのデビューアルバムが1990年6月12日発売ということで今年30周年とのこと。記念に#MC30キャンペーンとして7月から毎週金曜に初期EP(90~95年頃)が発表されていた。EP収録のリミックス曲は未発表というより、当時発表されていた楽曲のリマスタリング版となり、改めて聴くと目新しさは無いが、やはり時代を感じさせる懐かしさはある。

The Live Debut – 1990
Someday
There’s Got To Be A Way
Emotions
Make It Happen
Dreamlover
Never Forget You
Anytime You Need a Friend
Fantasy
One Sweet Day
Always Be My Baby
Underneath The Stars
Honey
My All
Butterfly
The Roof
I Still Believe
Breakdown
Sweetheart
Do You Know Where You’re Going To
Mariah En Español

発売されたのはこれら21枚のEPで、以下いくつか気になったトラックについての感想などを。

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Fantasy EP

1 Fantasy Featuring O.D.B.
2 Fantasy (Bad Boy Fantasy)
3 Fantasy (Bad Boy Mix)
4 Fantasy (Puffy’s Club Mix)
5 Fantasy (Def Radio Mix)
6 Fantasy (Def Club Mix)
7 Fantasy (MC Mix)
8 Fantasy (The Boss Mix)
9 Fantasy (Def Drums Mix)
10 Fantasy (Sweet Dub Mix)
11 Fantasy (Live at Madison Square Garden – October, 1995)

1995年発表の5thアルバム『Daydream』からのシングルカット。
Tom Tom Club「Genius of Love」を大胆にサンプリングした「Fantasy」。初期のマライアの曲ではこの曲が一番好き。

元ネタの「Genius of Love」は1981年発表のモタッとしたリズムのトラックで、音がこもっているのと途切れがちに差し込まれる電子音がどこかのんきな印象の楽曲。そこへ若かりしマライアの爽やかな歌声が多重録音されてパッケージングされると不思議な調和が生み出されて時間軸を感じさせない名曲が出来上がるという。

前半4曲目まではWu-Tang Clan、Ol' Dirty Bastardのラップが入って怪しさが増して混沌としたミックス(PVもヤバい)となっている。また、Puff Daddyのミックスもあるがそんなに変化はない。後半5曲目以降はDavid MoralesによるハウスとLiveがおまけについて全部で11曲。

Fantasy (Def Club Mix)は、アレンジに富家 哲も参加しており、オリジナルとは一転して重く暗いハウストラックになっている。途中4:50あたりからテンポが遅くなり、オリジナルバージョンの差し込まれる豪快な展開が好き。サイレン音で盛り上げる入っているあたりに古臭さを感じさせるがこれはこれで。
跳ねるようなデジタルピアノで美しいハウスに仕上げているFantasy (Sweet Dub Mix)も捨てがたい。
最後に収録されているMadison Square Garden収録のLiveバージョンも音が良く、観客の歓声も盛り上げるためにタイミングよく差し込まれているため臨場感がある。

Fantasyはジャケも良くて、黒でまとめたマライアがシンプルでスタイリッシュ。風にたなびく髪に手を添えてこちらを見つめる様子からは、快進撃を続けていた頃ならではの自信を感じさせる。

マライアのビジュアルっていつの頃からか挑発的になっていくのだけど、Fantasyと対照的なのが『The Ones』のジャケ。

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モノクロで立ち姿のマライアがこちらを見ているのは「Fantasy」と同様だが服は身体のラインを強調しており色は白。胸を持ち上げて谷間を見せながら太ももをギリギリまで露出させている。離婚した最初の旦那(Tommy Mottola)の束縛からの開放によるせいだと思うのだけど、ギャップがあり過ぎ。

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Emotions EP

1 Emotions (Special Motion Edit)
2 Emotions (12" Club Mix)
3 Emotions (C&C 12"Club Mix No.1 Mix)
4 Emotions (C&C Dub-Dub Mix)
5 Emotions (12" Instrumental)

91年発表の2ndアルバムからのシングル・カット曲。
このEP収録5曲すべてにC&CのDavid ColeとRobert Clivillésが関わっており、少しテンポ遅めのハウスに仕上がっている。各曲の違いは分数の長さと、ボーカルの入れ方が違うくらい。
マライアが小鳥のような高音で声を張り上げる元曲をシンプルにハウスビートへのせているミックスだが、元曲が名曲なのでそれだけでOK。
Emotions (12" Club Mix)の美しくもねちっこいハウスビートがgood。

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Someday EP

1 Someday (New 7"Straight)
2 Someday (7"Jack Swing Mix)
3 Someday (New 12"House)
4 Someday (New 12"Jackswing)
5 Someday (Pianoapercaloopapella)
6 Someday (House Dub Version)
7 Someday (New Jack Dub Version)
8 Someday (New Jack Bonus Beats)

ほとんどの楽曲のリズムが90s初期に流行ったNew Jack Swing。誰がリミックスしたのか確認したところ、まさかのShep Pettibone。マドンナのリミックスなどで安定感がある人だけど、まさかNew Jack Swingまでやっているとは思わなかった。
だけど、やっぱりこの中では定番ハウスをやっているSomeday (New 12"House)が一番良い。クラシックな歌モノハウスになっているのだけど、意外にマライアのトラックにはこういう定番ハウスが少ないため貴重だと思う。ピアノやパーカッション、太いベースラインで組まれたリズムがいかにもShep Pettiboneらしくて良い。

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Underneath the Stars EP

1 Underneath the Stars (Drifting Re-Mix)
2 Underneath the Stars (Drifting Re-Mix w/o Rap)
3 Underneath the Stars (Sweet A Cappella)

ドラムとベースを入れずに、残響が長く優しいオルゴールのようなシンセ音と、マライアの声を重ねただけの「Underneath the Stars (Sweet A Cappella)」が良い。星空の下で芝生に寝転がっった若かりし頃の歌詞の雰囲気がよく出ている。ジャケのマライアも可愛い。

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Anytime You Need A Friend EP

1 Anytime You Need a Friend (C & C Radio mix)
2 Anytime You Need a Friend (C&C Club Version)
3 Anytime You Need a Friend (C&C Extended Mix)
4 Anytime You Need a Friend (C&C Dub)
5 Anytime You Need a Friend (Boriqua Tribe Mix)
6 Anytime You Need a Friend (All That And More Mix)
7 Anytime You Need a Friend (Soul Convention Remix)
8 Anytime You Need a Friend (Ministry of Sound Mix)
9 Anytime You Need a Friend (7″ Mix)
10 Anytime You Need a Friend (Dave’s Empty Pass)
11 Anytime You Need a Friend (Anytime Edit)
12 Anytime You Need a Friend (Video Edit)
13 Anytime You Need a Friend (Stringapella)

3rdアルバム『Music Box』からのシングル・カット曲。
13曲のほとんどが反復する低音シンセベースとデジタルピアノの音色の混ざった歌モノハウスとなっており、この曲でのマライアの歌い方はJocelyn Brownのようにドスをきかせた張り上げ方になっている。
ゴスペル調のイントロから始まる「Anytime You Need a Friend (All That And More Mix)」は11分弱もあり、リズムパートの抜き差しによってマライアの歌唱力を楽しめる大げさな展開になっていてよい。しかし13曲中11曲に、David ColeとRobert Clivillésのクレジットが入っており、さすがに違いがよく分からない。

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自伝と未発表曲集を発表したマライア

9月には自伝が発売されて、10月には『The Rarities』というタイトルで未発表トラックやB面集の楽曲を2枚組にまとめて発売予定とのこと。
もう今年で50歳なので、昔のように毎年新作というわけにもいかないだろう。歌唱力があるせいか、元々時代を先取りした楽曲でシーンに驚きを与えるような人ではない。そのため今後は新規ファンの開拓というよりも既存ファンにウケるような曲しか発表しないのではと思われる。

多様性を受け容れようという風潮のあるこの時代に、容姿にコンプレックスがあるゆえに、過度な画像加工によって痩せている姿をアピールしたり、2018年には双極性障害であることを告白したりと苦労話も多いマライア。
これまでのファンに向けて夢を与えるような楽曲もよいのだが、苦労を積み重ねてきたからこそ歌える楽曲を聴いてみたい気持ちもある。

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