見出し画像

EBTG(Everything But the Girl)1988-1995年(感想)_AOR路線からダンスビートへの転換

EBTG(Everything But the Girl)は、Ben WattTracey Thornが1980年代前半から活動しているユニット。以下に1995年以降にEBTGとしてリリースされたアルバム/シングルといくつかのソロ作品についての感想などを。
1982-1986年リリースについての感想はこちら。


Idlewild (1988年)

大人向けのポップスといった雰囲気の落ち着いた曲が多く、雨の日曜午前とかに家でまったりと聴きたい音楽。UKアルバムチャート13位。
過去の記憶を掘り起こすような優しい「Oxford Street」も良いけど、Ben Wattの声が染みる「The Night I Heard Caruso Sing」も良い。

本作はセルフ・プロデュースとなっており、耳あたりの良いシンセなど80年代っぽい音が時代を感じさせる。良い悪いは置いといてアレンジがこなれてきたことで、初期作品のような瑞々しさやインディーっぽい勢いが薄まっているのは確か。

2012年には本作のDeluxe Editionがリリースされており、アコギとストリングスの組み合わせが美しいDanny Whittenのカバー曲、「I Don't Want To Talk About It」(UKシングルチャート3位)が収録されている。



The Language of Life (1990年)

5枚目のアルバムのプロデューサーはジャズ系で有名なベテランのTommy LiPumaで、Miles DavisAztec Cameraも手掛けている人。UKアルバムチャート10位。

哀愁漂う「Driving」は好き。前作の延長線上にあるジャズまたはAOR路線。2012年には、未収録曲などを追加したのDeluxe Editionもリリースされており、リミックスにMasters At Workなどが参加しているが、引っ掛かりのある曲は無かった。


Worldwide (1991年)

通算6枚目のアルバムはセルフプロデュースで、UKアルバムチャート29位。
本作は翌年にリリースされた『Acoustic』や『Covers E.P.』からの曲などが追加されたDeluxe Editionが2012年にリリースされており、「Time After Time」などのカバーが収録されている。

ちょっと背伸びして聴くようなシティ・ポップ、またはAORといった印象で、これは『Baby, The Stars Shine Bright』以降の4枚はどれもこのような印象を抱く。残念ながら個人的にこういう音楽はあまり好みでは無くて、アルバム1枚を通して聴くのが苦痛。長いことEBTGを敬遠してきたのはこの時代の作品に原因がある。
というより、初期の3枚『A Distant Shore』『North Marine Drive』『Eden』が良すぎた。


The Only Living Boy in New York EP(1993年)

アルバム未収録の4曲入りEP。
なかなかの好盤で、初期作品を思い起こさせるアコースティックな作品だがネオアコというよりフォークっぽい。2人のコーラスが染みる表題曲はPaul Simonのカバー。


I Didn't Know I was Looking for Love (1993年)

こちらもアルバム未収録の4曲入りEPで、どれも素朴で聴きやすい。
余談だが表題曲は1998年、Karen Ramirezによってカバーされハウス・ミュージックとしてヒットしており、「Looking For Love (Kevin Yost's Calling Mix)」はかなり良い。


Rollercoaster EP(1994年)

挿し込まれるオルガンのような平坦な音が印象的な曲で、まったりと聴かせながらも静かに心を掴んでくるボサノヴァっぽい表題曲はアルバムからのシングル・カットでかなり好きな1曲。
他3曲も原点回帰している素朴なアコースティック作品で、内容的にとても充実している。
カバー写真がこれまでの落ち着いた印象と異なり、胸毛をチラ見せしてこちらを見据えてくる挑戦的なBenn Wattは新たなジャンルへの決意表明だったのか。


Amplified Heart (1994年)

このアルバムはUKアルバムチャート20位、USでも40位につけており、セールス的にも成功した。

前作から大きく路線変更されたアルバムで、原点回帰のようなボサノヴァっぽい曲と、これまでに無かったダンスビートが混在した1枚。
内容・セールス共にキャリアのピークともいうべき1枚で、特にアコースティックな曲のクオリティを気に入っている。

輩っぽく俯くBen Wattと、顔色の優れないTracey Thornはお互いを見ておらず、不穏な空気の漂うカバー写真からもこれまでとの大きな変化を感じさせる。
90年代前半までのカバーはどれもぼんやりしていて印象に残りづらかったのだが、この作品以降、2人の佇まいが垢抜けてカバーデザインが不自然なほど洗練されてくる。


Missing(1994年)

『Amplified Heart』からのシングルとして一度リリースされ、1995年に再発された際に「Missing (Todd Terry Club Mix)」のおかげで世界的にヒットした。UKシングルチャート3位、USでも2位につけている。

売れ筋を狙い過ぎたベタさのせいか、正直聴き飽きてもいるがTracey ThornのアンニュイなヴォーカルとTodd Terryのド定番なハウスビートの相性がとても良い。
「Missing (Ultramarine Remix)」もまあ悪く無いと思う。

カバーデザインはTracey Thornが突っ立っているものよりも、タイポグラフィーの方が圧倒的に好き。
淡い色合いでEBTGとMissingの文字を透過させ、Everything But the Girlを白く抜いたカバーも美しい。美しいカバーデザインは見ていて飽きない。
私は道玄坂のどこかしらのレコード屋で購入したのだが、全体的に白くシンプルなデザインが店内でも目立っていたのを記憶している。



Protection/Massive Attack (1994年)

Massive Attackの2ndアルバムでTracey Thornが2曲でコラボ。
溜息の出るほど美しいダウンテンポの名曲「Protection」が素晴らしく、気気怠くまったりとしながらも浮遊感とグルーヴのあるリズムと、力強くも憂いのあるヴォーカルの組み合わせが非日常へ意識を誘ってくれる感覚がある。寒い冬の早朝に外を歩きながら聴くと浸れる。
「Better Things」は、暗くて怪しいトリップホップでこちらもまぁ良い。
そもそもアルバムも歴史的な名盤。


The Hunter Gets Captured By The Game/Massive Attack With Tracey Thorn(1995年)

再びのTracey ThornMassive Attackとのコラボは、映画Batman Foreverのサントラ収録曲でThe Marvelettesのカバー。
憂いのあるヴォーカルは、怪しい雰囲気のTrip Hopと本当に相性が良いと思う。


長くなってきたので、続きは次回以降。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?