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EBTG(Everything But the Girl)1996-2001年(感想)_リスニング用Drum'n'Bassと、踊れるリミックス

EBTG(Everything But the Girl)は、Ben WattとTracey Thornが1980年代前半から活動しているユニット。以下に1996年以降にEBTGとしてリリースされたアルバム/シングルといくつかのソロ作品についての感想などを。

1988-1995年リリースについての感想はこちら。


Walking Wounded (1996年)

同名アルバムからのシングルカット曲は、Drum'n'Bassのリズムにのせてさらなる音楽性の変化が聴ける。UKシングルチャート6位。

ビートの密度は控えめで、激しく踊るというよりグルーヴにのって体を揺らせるような音楽でそれなりに心地よい。B面にも他アーティストによるDrum'n'Bassミックスが収録されている。
Goldie『Timeless』が1995年で、Drum'n'Bassがやたらと流行っていたから時流にのったのだろう。当時はあまりにもDrum'n'Bassが流行って食傷気味だったが、今となっては素直に聴ける。
本作以降レーベルがVirginとなる。



Walking Wounded (1996年)

アルバム全編がDrum'n'Bassまたはエレクトリックなビート。あまりの変貌に初期のファンを置いてけぼりにしているのではと心配になるほどだが、UKアルバムチャート4位、USでは37位と前作に引き続きセールスも好調。
プロデューサーはBen Watt自身であったり、Spring Heel Jack、Howie Bなどダンス・ミュージック寄りの人選で複数。

ダンスビートとはいえEBTGの音楽はそもそもまず歌ありきなので、機能的にあまり踊れる感じはしない。
だからリスニング用に最適なアルバムだと思っていて、暗くて深い空間へ誘ってくれるような音楽が心地よい。
本作からは4曲シングルカットされているが、それ以外ではアルバム中盤でクールダウンさせてくれるダウンテンポの「Mirrorball」が好き。

2015年の再発時に追加された曲では、「Corcovado (Knee Deep Classic Club Mix - Ben Watt Vocal Re-edit)」が最高の出来。
暗めなハウスにリミックスされた「Wrong (Mood II Swing Dub)」も良い。



Wrong (1996年)

アルバムからのシングルカットで、UKシングルチャート8位。
リミキサーにTodd Terryがいて、「Wrong (Todd Terry Remix)」などは二匹目のドジョウかよ!と突っ込みたくなるほど「Missing」の焼き増しのようなハウス・ミュージック。
Deep Dishのリミックスもあるが、似たような印象の曲で特に言うことは無い。


Single (1996年)

かなり地味なダウンテンポだがアルバムからのシングルカットで、UKシングルチャート20位。
B面収録の「Corcovado」はAntonio Carlos JobimのカバーでDrum'n'Bassに。


Driving (1996年)

なぜか5thアルバムの収録曲が1996年にリミックスされており、編集盤の『The Best of Everything but the Girl』発売に合わせたリリースと思われる。
キャリアの長いアーティストが売れている時期にこそ編集盤をリリースするのは、いかにもレコード会社の考えそうなことで、リミックスなら本人たちの負担は無く未発表曲を追加出来る。

リミキサーにはまたしてもTodd Terryがいて「Driving (Todd Terry Remix Version)」で「Missing」の焼き増し感満載だが、切なさとポジティブさの同居したこのリミックスはかなり良いと思う。
ダウンテンポでまったりとしたMasters at Workのミックスもステキだが、Todd Terryの方がノリは良い。



Before Today (1997年)

アルバムからの4枚目のシングルカットで、UKシングルチャート20位。
雰囲気のある曲で、重たくなり過ぎていないDrum'n'Bassの「Before Today (Adam F remix)」が良い。
Darren Emersonによるリミックスが2種類あるが、テンポは速いしテクノにしては派手過ぎる。
むしろ「Before Today (Chicane remix)」がアンビエント・ミュージックのようで好き。

The Future of the Future (Stay Gold)/Deep Dish with EBTG) (1998年)

Deep Dishとのコラボは王道のハウス。EBTG絡みの曲にしては珍しくポジティブな印象の曲。
オリジナルよりは、跳ねるリズムの「The Future Of The Future (Stay Gold) (David Morales Classic Club Mix)」の方が踊れる。


Five Fathoms (Love More) (1999年)

アルバムからのシングル・カットは4つ打ちのハウス。
正直に言ってEBTGのオリジナル曲は、”踊る”機能としてはイマイチな曲が多いと思っているのだけど、この曲は別格で素晴らしい。
叙情的ないつもの切ない雰囲気と、反復するビートの組み合わせに無理やりな感じが無いし、展開も控えめなのが良い。


Temperamental (1999年)

UKアルバムチャート16位、USでは65位と前2作品よりはセールス的に低調。
前作に引き続き暗めのダンスビートで統一された一枚。

「Five Fathoms」「Lullaby Of Clubland」「The Future OF The Future」のようにシングルカットされたハウスも良いのだが、「Low Tide Of The Night」のようにしっとりと歌を聴かせる曲が好み。

本作は、2015年にはDeluxe Editionがリリースされ、シカゴ/デトロイトで活躍するプロデューサーChris Brannによる、15分近くあるディープハウス「Five Fathoms (Wamdue Project Remix)」のグルーヴ感が心地よい。



Blame (1999年)

シングルカット曲は、リミックスも含めてDrum'n'Bass。
Drum'n'Bassは激しいのが好みではないから、聴けるのは「Blame (Fabio Remix)」くらいで控えめなのが聴きやすい。



Temperamental (2000年)

同名タイトルのアルバムからのシングルカット。
軽快なアコギがリズムを刻むラテンっぽいディープハウス「Temperamental (Ananda Project Remix)」が何気に良い。
原型はほぼ無いが高揚感のあるオルガンの音が特徴的な「Temperamental (DJ Spen & Karizma Da Deepah Dub)」も踊れる好ミックス。



Lullaby of Clubland (2000年)

『Temperamental』からの4つめのシングルカットは叙情的なTracey Thornのヴォーカルが前面に出たハウス。切ない雰囲気の曲だが「Missing」ほどの湿度は無いのがかえって良い。
B面にはリミキサーが参加しており、ピアノの音色に疾走感のある「Lullaby Of Clubland (Matty Heilbronn Soulflower Instrumental)」が踊れる。



Back to Mine (2001年)

様々なアーティストによるミックスシリーズ『Back To Mine』のvol.6にEBTGが登場。選曲のセンスの良さが光る。
Spotifyに誰かがリストにまとめていたのでリンクを貼ったがCDでは曲間を繋いでミックスされている。

前半はダウンテンポで、中盤からハウスのリズムを刻むも、後半では再度テンポを落としてまったりとさせる。
全体的にクールダウンさせるリスニング用の音楽に統一されており、夜に部屋を暗くして聴きたいような音楽で、EBTGの音楽よりもさらに暗い印象。

Beth Ortonによる「Stars All Seem to Weep」の憂いを帯びた歌唱法は、Tracey Thornに少し似ている感じがしてなるほどなぁと思うのだが、
意外なのはSlick Rickの「All Alone (No One to Be With)」のようにヒップ・ホップも含まれること。
本作のピークタイムは、アフロなリズムでスピリチュアルなDubtribe Sound Systemによる「Do It Now」で、ピアノの音色がひたすら美しい。


長くなってきたので、続きは次回以降。


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