月島軍曹が好きだった

※3/18発売の272話のネタバレあり。

ゴールデンカムイはヤングジャンプを毎週読むくらいに好きな漫画だ。

その中で出てくる屈強な兵士、月島軍曹がえらいことになってしまった。今週は272話だ。

月島軍曹は、父親が原因で婚約してた彼女を失ってしまった辛い過去を持つ軍人だ。

そこから立ち直ったり、命を預けていた上官を信じられなくなったりしながらも、よく言えば純粋、悪く言えば世間知らずな鯉登少尉と樺太遠征を通し、人間らしさを取り戻していった。

しかし樺太から帰ってきて、彼は昔に戻ってしまった。今まで複雑な気持ちを持っていた上官への信仰心を取り戻し、人殺しへの躊躇がなくなった。

月島軍曹は日清戦争、日露戦争と二回も戦争を経験しており、もともと人殺しができる軍人だ。父親をも殺し、死刑囚だった過去もある。

そんな月島軍曹だが、今回殺した相手はかつて日本のために一緒に戦った仲間、有古一等卒だった。

ここ最近のゴールデンカムイは過去編が続いており、有古一等卒の父親が月島の信仰している上官、鶴見中尉によって間接的に殺されたことが判明した。

今週は有古一等卒が父親が死んだことを回想し、涙を流すシーンが描かれた。漫画とは思えないほどに人間らしいシーンだった。

多くの読者が有古一等卒に感情移入し、心を痛めた。そんな矢先に、同じ話数で、月島軍曹は彼を殺した。

殺した理由は鶴見中尉を裏切ったからだ。

過去月島軍曹は他の裏切り者を見逃したことがある。鶴見中尉に反するわけではなく、戦線離脱しようとした兵士に対してだ。

有古一等卒もその兵士と似ている理由だ。鶴見中尉に反したいわけではなかった。
密告したり邪魔をしたいわけではなかった。鶴見中尉に囚われていた自分と同じアイヌの女の子を助けたかったのだ。

あの時見逃した兵士と有古一等卒の何が違うのか?

違うのは月島軍曹だ。
見逃した時は鶴見中尉への信仰心が揺らいでいた。しかし今の月島軍曹は完全なる信者。鶴見中尉のためならなんだってする無敵な兵士。

信仰心が揺らいでいた時の月島軍曹が好きだった。
ついつい人助けをしてしまったり、殺す必要のある相手を見逃したり、鶴見中尉の任務よりも鯉登少尉の命を助けてしまったり……
上官命令に従順な月島軍曹ではなく、情に流されてしまう彼が好きだった。

涙は出ないが、これからどうなってしまうのかわからない。

鯉登少尉によって変化していた月島軍曹も、鶴見中尉によって人殺しマシーンへ戻ってしまった。

今まで何ヶ月も行動を共にしていた鯉登少尉ののとすら、殺してしまう、そんな雰囲気だ。

当たり前のように酷い死に方をするのか。
ここから更生して、婚約していた彼女と再会するのか。

月島軍曹の幸せについて考えてしまう午後だ。

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