Sarcina §1 はじめに ー喫茶店のレモン水ー
どこか遠いところに行きたい。
知り合いや親戚、そのまた知り合いすら居ないような場所で、暮らしてみたい。
見たことのない景色を、この目に焼き付けたい。
いつだって、そう思い続けてきた。
山がちでコンビニも無いような村落に育った僕にとって、"外の世界"は常に憧れだった。代わり映えのしない人間や出来事に擦り減らされる生活で、それは更に心の内へとどんどん染め込まれていった。
ここ以外に、もっと素晴らしい場所があるはずだ、と。
― 数年後10:38
とんでもないこ