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「ガールズ&パンツァー」10周年記念上映を轟音で体験してきました!

ガルパンはいいぞ(お約束w)。はい、ということで今回は「ガールズ&パンツァー」10周年記念上映をTOHOシネマズ池袋の「轟音上映」にて体験してきました!アニメの映画は数多あれど、この作品だけは絶対に劇場でその臨場感を味わい尽くしたかったのです。

TOHOシネマズ「轟音上映」とは

TOHOシネマズが誇るオリジナルの音響体験シアター。それがこの「轟音上映」です。まずはそれがどんなものか見ていただきましょう。

客席の前にデカデカと鎮座する、この圧倒的な存在感のスピーカー。

それが2基!!(まぁステレオだからそりゃそうだ)

轟音上映が行なわれるタイトルには、このように(轟音上映)と記されるのです。どんな音響体験ができるのか、ドキドキです。

「音の体感・迫力あるサウンド」を意識したシアターです。スピーカーユニットを向かい合わせで駆動させることで通常の1.5倍~2倍のパワーを発揮するアイソバリック方式を採用したサブウーハーを導入します。TOHOシネマズ以外では体験できない、空気を震わせる体感型サウンド・シアターを実現します。

TOHO CINEMAS 轟音Ⅱ紹介ページより

今回紹介する「ガールズ&パンツァー」(略称「ガルパン」)の内容については後ほど詳しく説明しますが、まぁひとことで言っちゃうと女の子たちが戦車に乗って戦う話です(いろいろ省略し過ぎ)。

動画を見てもらえれば分かるのですが、映像の半分くらいは女の子で半分くらいは戦車です。今回の轟音上映が最大限に活きるのはこの戦車の方。

キャタピラが地面を噛み締めながら突き進んでいく音が!
戦車同士が火花を散らしながらガリガリと接触する音が!
敵戦車を撃つ砲撃の音が!そして自戦車に着弾する音が!

響くのですよ!!!
この身体に!!!

ボディソニックが仕込まれているわけでもないのに(多分)、砲撃を受ける度にシートが揺れるって信じられますか?

戦車に乗ったことはありませんので、そこのリアリティをどうこう言うのはいささか説得力に欠けるのかもしれませんが、いやそれでも!私はあのとき確かに彼女たちと戦車に乗っていた!と思わせるような音響なのです。

戦車の内部にて常時感じられるあの振動感。
きしむキャタピラ。
かすれる鋼板。
そして砲撃時の思わず身構えてしまう、あの衝撃!!

PHOTO ACより(写真と作品は関係ありません)

轟音上映に加え、私が今回の鑑賞に際してあえて前から2列目という至近距離を選択したことも大きかったかもしれません。この作品は戦車内部からの視点で描かれているシーンも多く、その臨場感を言い表すならまさに地を這うトップガン。人によってはそのリアリティに軽く酔ってしまうかもしれません(というか私自身が酔いかけました)。

ガルパン自体は放映当時テレビシリーズを多少見ており、映画も家では見ていたのですが、映画館には行かなかったのですよね。でも後から思い起して「あれだけは映画館で観ておくんだった!」と後悔していたのです。それが今回、10周年記念上映でようやく叶いました。2022年10月9日、1日限りの上映でしたが、出来れば多くの方にこの映画を轟音で体験してほしいので、できたら今後もぜひリバイバル上映してほしいです!

「ガールズ&パンツァー」ってこんなアニメ

ガルパンはいいぞ(大事なことなので二度w)。いやはやなんだか、アニメファンの間で流行ったんですよねこのワード。ガルパンについて語るときの定型句というか枕詞というか。

正式なタイトルは「ガールズ&パンツァー」。略称は「ガルパン」です。ときどき「ガールズパンツァー」と思っている方を見かけますが、間に「&」が入るのでそこ要注意。直訳すると「女子と戦車」です。タイトル誤読して女子のパンツの話だと思った不逞の輩はシベリア極北の地にて強制労働の刑に処すので正直に名乗り出るように!

作品の舞台設定についてお話しします。

この世界では華道や茶道と並んで「戦車道」と呼ばれる戦車を用いた武道が大和撫子のたしなみとされています。

「戦車道」とは文字通り戦車を用いたチーム戦で、その戦いは以下の競技形式で行なわれます。ひとつは敵チームの戦車を全車走行不能にした側が勝つ「殲滅戦」。もうひとつは敵の代表戦車(フラッグ車)を先に走行不能にした側が勝つ「フラッグ戦」。武道であるため「礼に始まり礼に終わる」とは言うものの、その実態は実際の戦争さながらに陽動作戦や包囲網、敵の無線傍受にハリボテを用いた隠れ身など、勝利を得るためにありとあらゆる手段が用いられます。

戦場では文字通り火花を散らす壮絶な戦いが繰り広げられますが、走行不能になった戦車からは「しゅこん♪」という音と共に白旗が上がり、その時点でその車輛は競技から外れるルール。殺伐とした戦闘の連続の中で少し心が和む瞬間であり、この戦車戦があくまでも「戦争」ではなく「競技」として行なわれていることの表われともなっています。

戦車道には華道や茶道のように各流派があり、家元が存在しています。主人公の西住みほはそんな流派のひとつ「西住流」家元の娘であり、流派の哲学と自身の考えとの違いから戦車道を捨てて大洗女子学園に転校してきたという過去を持っています。そんな彼女がとある理由からどうしてもという生徒会からの要請により戦車道の道に半ば無理やり引き戻され、戦車道全国高校生大会にてほぼ戦車道未経験の隊員たちを率いて戦っていく…というのが大筋のストーリーです。

戦車道が「大和撫子のたしなみ」とされているという設定のため男性がほぼ登場せず、戦場に出てくるのは敵も味方も女子ばかり。様々な個性を持った女子たちが戦場の女子会さながらに盛り上がり、怯え、叫び、戦うその様は男性不在のハーレムのよう。これだけ女子がいれば誰かひとりくらいは好みのタイプいるだろうという作者の声が聞こえてくるかのようです(笑)。

相対する敵高校チームはその個性付けからイギリス、アメリカ、イタリア、ロシア、ドイツといったイメージをまとっており、若干ステロタイプなところもありますが本作のみどころのひとつでもあります。このあたりは「ヘタリア」好きな人だったらちょっとハマるかもしれません。

戦闘中、女子たちの乗る戦車は幾度にも渡る砲撃を受け、飛び跳ね、転がりますが、にもかかわらず車輛内の女子たちは元気いっぱい。どんな衝撃を受けてもへこたれず、テンション高く反撃の機会を伺い、また生き残るために全力を尽くします。あの有り様が乙女のたしなみってどうなのよという言葉が喉からここまで出てきそうになりますが、それを言うのは野暮ってもの。そういう話なんだからそこに対するリアリティは求めちゃいけません。この設定を考えた時点でもう既に作者の勝ちなのです。そう、これはおそらく最も成功した「設定勝ち」のモデルケースなのです。

▲上記は「ガールズ&パンツァー」公式サイトです。

ガルパンは「設定勝ち」のアニメ

ガルパンはいいぞ(まだ言うかw)。とは言え、なにがいいのかって聞くと人によって勧めるポイントが異なっているんですよねこのアニメ。ということで、ここから先は私の意見としてお読みください。

先にお伝えしたように「設定勝ち」のアニメです。

「設定勝ち」っていうのは私の造語なので検索してもたぶん出てきません。つまり「その設定考えた時点で勝ちだよね」っていうのを私なりに略した言葉です。

ガルパンの設定は現実世界をベースにしていますが、先に述べたようにその内容は無茶苦茶です。

女子にだけ課せられる「戦車道」なる武道。
戦車がどれだけ街を破壊しまくっても許される町の風紀。
どんなに激しい戦闘にあってもカスリ傷程度?で済んでしまう頑丈な女子。

劇場版では会場となった遊園地のジェットコースター上を戦車で走るわ、観覧車を砲撃で破壊し自身の武器として転用するわ、他の戦車を踏み台にして飛ぶわ…とやりたい放題(砲台!)。
リアリティ?なにそれ美味しいの?

でもそれでいいし、それがいいんです。
だってこれは現実世界ではなく、ガルパンという設定なのですから。

作者が全身全霊を込めて「自分のやりたいこと」をこれでもかこれでもかと詰め込み、押し通し、具現化した世界。
それを視聴者に認めさせ、エンターテイメントとして成立させた時点で、それはもうこの設定を作り上げた作者の勝ちなんです。

私が言う「設定勝ち」っていうのはそういうこと。

まぁね、ぶっちゃけ創作なんてすべてそういう要素があるんですけれども、あえて「これは設定勝ちだなぁ」って言うキーポイントを挙げるとすれば、それは「無茶苦茶を押し通す説得力」なんじゃないかって思います。現実に空想の概念を無理やりねじ込んで納得させる力って言い換えてもいいかもしれません。
断言しますが、ガルパンはこれが桁外れに優れています。

私自身、ガルパンの話がそこまで好きかって言うとそうでもありませんが、その荒唐無稽な設定と作者の理想を認めさせた説得力の凄さは流石と言わざるをえません。多くの人に「ガルパンはいいぞ」と言わせる源泉のひとつはそんなところにあるんじゃないかと思っています。

ガルパンのリアリティは「音」にあり

ガルパンはいいぞ(もうほとんど洗脳だよなこれw)。設定世界やお話しがどんだけ無茶苦茶でも、ガルパンにはそれを力技で押し通してしまうリアリティが仕組まれていました。それは「音」です。

このアニメの半分くらいは戦車で戦っているシーンと言って良いでしょう。つまり四六時中キャタピラが回転しており、戦車ですから車輛はずっと振動しっぱなしです。さらに飛び交う砲撃の凄まじさ…。

この「音」にガルパンは妥協しませんでした。

戦車内の振動音が、キャタピラの回転が、迫ってくる砲撃が、轟音となって観る者に伝わってきます。そして思い出させてくれるのです。どんなに可愛らしい女子がおしゃべりしながら乗っているのだとしても、これは戦車であり、ここは戦場なのだということを。

ガルパンはその戦車に関するリアリティが高く評価される傾向にあるように思います。私自身にはミリタリーに関する知識がさほどありませんので、その方面について語ることは避けておきます。
ですが、この圧倒的な「音」!!これについてはいくら戦車の知識がなかろうと伝わってきます。無論戦車に乗ったことなんてありませんから、これがリアルなのかどうかは知りません。それでも伝わってくるのです。動く戦車の中にいるという臨場感が。砲撃時の衝撃が。被弾したときのダメージが。

その「音」が視聴者に臨場感を上乗せで与えてくれるのです。

ガルパンが愛され続けている理由は設定の作り込みと物語による刷り込みによる説得力もさることながら、この「音」に対する徹底したこだわりによるところもまた大きいのではと思っておりました。

だから、どうしてもこれだけは劇場で、それも出来る限り音響設備の良いところで観ておきたかったのです。

「ガールズ&パンツァー」10周年記念上映を轟音で観た感想

ガルパンはいいぞ(ひつこいよお前w)。ということで10月9日に行なわれた「ガールズ&パンツァー」10周年記念上映に話を戻します。

今回の上映は『ガールズ&パンツァー 第63回戦車道全国高校生大会 総集編』(2018年公開)と『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015年公開)の2本立てとなっていました。これで3,000円ですので、感覚的にはちょっとトクした気分です。

2本合わせて18:30~22:40まで上映でしたので、結構長丁場です。

そして轟音シアターにいざ、着席。

あとは約4時間、女子高生たちの活躍を合間に観ながらひたすら戦車に身を委ねるという贅沢な音響体験です。

昔見たはずなんだけど、結構ストーリー忘れてるな私…。

まぁでも、私にとってのガルパンは「音」を浴びる体験。設定や物語はもうそういうものだと受け入れているので、そこはもう受け流す。学園の維持を賭けた女子高生たちの熱い戦いみたいなドラマはあるんだけど、なにはさておき音ですよ音!!戦場をキャタピラで駆け巡り、砲撃を受けるその体験は普通の映画体験では到底味わえません。

まぁ冒頭にも書いたように、音響体験凄かったですよ。
やっぱりガルパンっていうコンテンツの力あってこその轟音ですよね。
女子もいいけど戦車!
戦車こそガルパンの醍醐味!
Viva戦車!
いさ進め、Panzer vor!(パンツァー フォー!)

▲来場者特典配布された「水島努&杉本功 10周年記念描き下ろしミニ色紙」です

まぁそんなヒネた鑑賞の仕方をしていた私ですが、最後にひとつだけ、どうしてもお話ししておきたいエピソードがあります。それを話してこの記事を締めくくりたいと思います。

カチューシャに愛を

劇中に登場する高校の中にプラウダ高校と言うのがあります。青森県の学園艦であり、チームの性質としてロシア的な個性付けがなされています。

そんな彼女たちの進撃の際に流れるBGMはロシア民謡の「カチューシャ」 (Катюша)。
以下のYouTubeは非公式なのだと思いますが、これはお見せしないと伝わらないので貼っちゃいます。

ちょっと心にきましたよ、さすがにね…。

このチームを束ねる隊長の名前はカチューシャ。前大会では西住みほが以前にいた黒森峰女学園を破った宿敵でもあります。

「小さな暴君」と呼ばれるほど背が小さく、副隊長に肩車をしてもらってまで相手を見下した態度を取るというちょっといけ好かない人物として登場。チャームポイントはその低身長と口元からのぞく八重歯。

私、ガルパンってあまりにも登場人物が多過ぎるのでひとりひとりの個性にどうにも向き合って受け止められなかったのですが、唯一このカチューシャだけは特別に印象に残っているんですよ。この作品における唯一の私の推しキャラと言っていいかもしれません。彼女、ワガママで怒りっぽくて、戦場においてもギャンギャンとヒステリックにわめき散らす、ちょっと子供じみたところがあるボスなのですが、なんでだか不思議とどこか憎めないところがあるんですよね。冷静な副隊長ノンナをはじめ仲間にも慕われていることから、それなりの人望があることが分かります。

劇場版では戦況悪化の際、副隊長ノンナがカチューシャに逃げるよう進言するシーンがあります。これに対し「逃げるなんて隊長じゃないわ!」と聞く耳を持たないカチューシャ。それに対するノンナの説得が…。

あなたはこの試合に必要な方です!あなたはウラル山脈より高い理想と、バイカル湖のように深い思慮を秘めている。ですから早く、撤退を!

そう言うとノンナは自ら敵戦車の盾となり走行不能に。それを見たカチューシャは悔しさに全身を震わせながら、ついに撤退を決意するのです。

このシーンだけはちょっと涙ぐんでしまいました。

カチューシャに対する私の感情もあるのですが、どうしたってこのご時世、彼の地でいまも起こっているあの戦争に想いを馳せてしまうから。

カチューシャを生き残らせるために自身の戦車を敵の放火に晒し、笑って犠牲になった仲間たち。それを目の当たりにしつつ敗走せざるを得なかったカチューシャ。あんな激情型の性格の彼女が、自分の仲間を守り切れずに独り生き残る…それが彼女にとってどんなに辛いことだったろうかと…。

現実に起きている戦争もそうなのか私には知る由もありません。
軽々しく現地のことをそのような目線で観ることは失礼でもありましょう。

ですが、やはり感じ取ってしまうのですよ。
劇中でロシア語やロシアを想起させる言葉を聞いてしまうと、そのシーンが現実に起きているリアルな戦争と重ねてしまう。
人の性なのかも知れないですね、こういうことは。


いま起きているあの戦争において、現地で戦っておられる方々の心情を推し量ることなど、私の立場で到底できるはずがありません。そして安全な国にいる身で安易に同情の言葉など言い難いのもまた事実です。

だから、私はそっとここで呟くことにします。

いつの日か~それがどのくらい先の未来になるか分からないけれど~ロシアもウクライナも理不尽な戦争から解き放たれ、平和な日常を謳歌できるようになりますように。
戦争の傷跡が癒え、お互いの国に対するわだかまりも消えてなくなった頃、この日本のアニメ作品「ガールズ&パンツァー」を純粋な娯楽作品として楽しんでいただくことができるような、そんな日が来ますように。

そして、そんな日がもし訪れたならば…ぜひ本作中にて描かれたプラウダ高校のカチューシャ隊長を見てほしいのです。ちょっと怒りっぽくて短気なところがあるけれど、誇り高く仲間に対する思いにあふれた愛すべき隊長の姿を。その小さな背を伸ばし、胸を張って高らかにКатюшаカチューシャを歌い上げるその雄姿を、ぜひ見てほしいのです。

このアニメに対する締めの文章として相応しいかは分からないけれど。
そんな未来が叶うことを祈りながら、私はガルパンを、カチューシャを心に留めておきたいなと思っています。

(了)

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