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遅筆な私が長くライターを続けるためには

私は遅筆です。とにかく筆が遅いのです。

どれだけ遅筆かというと、3,000文字上限の記事を書くのに最短3時間、5,000文字の記事に至っては(テーマにもよるが)5日かかる事もあります。つまり1日1,000文字の記事1本しか書けないということです。これはライターとしては致命的な遅さではないでしょうか。

けれども一つ言い訳させてください。筆が遅いのにはちゃんと理由があるのです。

実際には、1つの記事が仕上がるまでに、記事の文字数の3倍以上文字を打ち込んでいます。文章を一通り書いて見直しては消し、消しては書いて見直し……という作業の繰り返しを行っているからです。

つまり2,000文字の記事なら最低でも6,000文字、5,000文字の記事なら最低でも15,000文字は打ち込んでいる計算になります。

もう1つ遅筆な理由があります。私が今やっている仕事が明らかに私の能力を超える難易度ゆえ、記事内容のエビデンスとなる情報を徹底的に調べ上げる必要があるのです。でないと1文字も書くことができません。

例えば、2,000文字程度の法律系記事(専門家と連絡を取りながら行う仕事)の場合で説明しましょう。

専門家から提示された公的機関発信の資料を裏表でプリントアウトすると約30枚。そこにびっしりと書かれた法律や通達に全部目を通し、蛍光ペンで記事の参考になる部分に線を引いていきます。

実はこの作業は容易ではありません。なぜなら、ご存知の通り公的機関のHPには普段滅多に読まないような難しい言葉が並んでおり、数行読むだけでも眠気が襲ってくるようなお堅い文章なのです。そんな文章がびっしりと書かれた書類を60ページも延々と読み続けることを想像してみて下さい。おそらくそれだけで眠くなる人も多いのではないでしょうか。

続きます。

そのあと線を引いた部分を参考に記事を書いていくわけですが、小難しい用語や、やたらと堅苦しい言葉が満載の文章を、何度もかみ砕いて中学生でもわかる簡単な文章に「翻訳」する必要があります。

実はこの作業が最も厄介なのです。なぜなら、難しい文章を誰でもわかるような表現に書き直すということは、自分が読んだ恐ろしく堅苦しい上に内容も難しい文章を完全に読解している必要があるからです。

幸か不幸か私は読書が好きなので、昔から難しい文章も含めて「読む」という習慣はついています。とはいえ、かつて銀行業務検定4級の勉強で六法全書のごく一部を読んで以来、この年まで法律など一度も読んだことがありませんでした。

いくら専門家から懇切丁寧な説明とともに記された骨子をいただき、疑問があればその都度適切なアドバイスを受けながら書くと言っても、本来は難関国家資格を持つ人が書くような記事です。私たちライターが、そのような記事を書くのは容易なことではありません。クライアント様から打診があったとはいえ、我ながらよくそんな仕事を引き受けたものだと呆れています。

けれども、記事を書くからには内容の間違いは許されません。もちろん専門家の皆さんが間違いを修正してくれるでしょうが、それに甘えるわけにはいきません。

私のやるべきことは骨子を書いた専門家さんが読者に伝えたい事をできるだけ正確に読み取り、読者がたやすく理解できる記事にすることです。それができないようではその仕事を続ける資格などないと思っています。

そのような理由から、時に利益度外視になることがあっても、入念なリサーチ(資料の読み込み)や得た情報の咀嚼に時間がかかってしまうのです。

私はずいぶん前に辞めた銀行員以外にこれと言った職歴もありませんので、専門性という点でかなり不利だと思っています。その不利をカバーするには人の倍も3倍も情報を調べて読みつくし、しつこいほどにその情報の正確性を確認しながら理解するしかないのです。

だからたった2,000文字の記事でも書き上げた後は放心状態。精魂尽き果てて疲労困憊します。仕事が立て込んでいる時期はそれほど運動をしておらず普通に食べていても体重が落ちることがあるほどです。そう考えると、ライターの仕事はある種の肉体労働と言ってもいいかもしれません。

もしかすると、記事を書くたびにそんな有様になる私は、全くライターに向いていないのかもしれません。とても非効率的で利益の面でも疑問を生じるような仕事ぶりだからです。

けれども、遅筆で記事を量産することができないという致命的な欠点がある私は、こうやって少しずつ専門性を高めることでオンリーワンのセールスポイントを作っていかないと到底この仕事を続けてはいけないと思っています。だからこの路線を崩さずやっていくつもりです。

幸い、現在子どもが自立して全くお金がかからなくなりました。現時点では時間だけでなくお金にも多少の余裕があります。それこそが現在の私の強み。そのある種幸運な状況を利用しない手はありません。だから今は研修生の時期と心得、遅筆は遅筆なりに、地道にゆっくりと専門性を高め、実績を積んでいきたいと思っています。

画像:ぱくたそ

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