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悪人(詩)


まっさらな世界に筆を押しつけるとき
汚している気になって
ああ、もう戻れない、戻れないぞと
迷い 唸っている間に
乙女の七色の返り血を甘んじて浴びた

指先もすっかり血に染まったので
食事の間も
散歩の最中も
鉛袋を抱えたように気が重く
こんなことなら乙女を引き裂いて無かったことにはできまいかと思い巡らせた

ふと自分は一体いまどんなに悪人づらをしているのかと不安になって鏡を覗いた

白けた鏡面のざらついた光の一枚向こうに
黄ばんだ頬からなだらかに広がる青白い顔をみた
ふたつの茶けた目があり
ちぢれた枯葉のような唇があり
骨と肉のさかいめにべったりはりつく深い影があった

気づけばすっかりそれに見惚れて
やはり自分は悪人でいようと思うのである
これはもうお手上げである

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