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学名コドクノウネウネ(詩)


通年、日没から日の出まで活発にうごきます。

生息域は広く、
電車の車窓をながれる暗闇や、毛細血管のようにのびる裏道、街灯の明かりと夜闇のその境界線や、廊下の隅の埃だまりなどを住処にして、行き交う人間をじっと見ています。

コドクノウネウネと目が合ってしまうと、途端に何となく悲しくなったり、漠然とした不安に襲われたりします。
厄介なのは、人間からは彼らの姿がみえないことです。
ですので、当然、目が合ったことにも気づけません。
目を合わさないで済むようにと下を向いても、足元の影に紛れ込んでいることがあるため、完全に防ぐことは難しいでしょう。

コドクノウネウネは人間の心の瘡蓋を主な栄養源としています。
基本的には道端に落ちている瘡蓋を食べて生きていますが、瘡蓋が不足している場合は、人間の心の硬くなった部分を無理やり削って食べてしまいます。
表面を削り取られた心は、無防備な柔らかい部分を夜風にさらし、月光がもたらす沈黙に浸すことになるため、先に記したような不意の感情を抱くことになると考えられています。

コドクノウネウネの寿命は短い個体だと一日、長い個体でも一週間ほどといわれています。
また、どのような形で繁殖しているのかは不明で、研究者たちの間でも様々な推論がなされています。

みなさま、夜にふと寄る辺ない気持ちに襲われたときは、コドクノウネウネの存在を疑い、それ以上食べられないよう、目をかたく瞑り、あたたかい手で胸を覆ってみてください。

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