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【短編小説】だけど永遠に、愛おしい

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記事一覧

【短編小説】だけど永遠に、愛おしい ①

「ねぇ、結婚しよっか?」 右手のスマホに目を落としながら鍛冶は優しい声でそう言った。 「え…

ちよこ
5年前
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【短編小説】だけど永遠に、愛おしい②

鍛冶とのメールのやり取りは非常にゆったりとしたものだったのに、仕事は忙しく、気づけば月末…

ちよこ
5年前
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【短編小説】だけど永遠に、愛おしい③

鍛冶が先導する形で二人は歩き始めた。椿は鍛冶の半歩後ろをついていく。ビルとビルの間の細い…

ちよこ
5年前
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【短編小説】だけど永遠に、愛おしい④

「はーお腹いっぱい! 鍛冶くん今日は本当にありがとね」 Yの字に伸びあがりながら椿は空を見…

ちよこ
5年前
10

【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑤

「なぁ。なぁー椿? 聞いてる?」 目の前で大きな掌が上下に動いて椿は我に返った。 「ごめん…

ちよこ
5年前
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【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑥

せっかくの日曜日なのに雨はずっと降り続いていた。梅雨は先週始まったばかり。そんなジメジメ…

ちよこ
5年前
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【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑦

――お店に連絡つきました。店員さんすっごく優しかった。先においでって誘われたから先に行って待ってることにします。 電車に飛び乗った椿の携帯電話が震えた。 そこに綴られた文章から鍛冶らしさがにじみ出ている。電話一本でどうやってそんなに見知らぬ店員と仲良く慣れるのだろう。椿は疑問に思ったが、定刻に遅れているので今はそこを突っ込むよりも到着することのほうが先だ。それに鍛冶を立ったまま駅前で待たせておくのも申し訳なかったので結果オーライとすることにした。 電車を降り、歩いて10分

【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑧

椿はほろ酔い気分だったが歩き始めるとアルコールが回り出した。加えて今日は、いつもより少し…

ちよこ
5年前
7

【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑨

家に帰ってからも椿の涙は止まらなかった。体中の水分が全て出尽くして干からびてしまうのでは…

ちよこ
5年前
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【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑩

「はい、もしもし」 椿の予想通り、電話に出たのは聞いたことのない女性の声だった。 「鍛冶、…

ちよこ
5年前
8

【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑪

いつまでもふさぎ込んでいられないことぐらい、椿にもわかっていた。会社をズル休みし続けるの…

ちよこ
5年前
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【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑫

朝一番に百貨店へ行った。栗まんじゅうの詰め合わせを購入するためだ。 “人の好みはなかなか…

ちよこ
5年前
8

【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑬

封筒からゆっくりと手紙を取り出す。そこには大学時代に見慣れた鍛冶の字が、行儀よく並んでい…

ちよこ
5年前
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【短編小説】だけど永遠に、愛おしい⑭

「今日は遠いところからわざわざありがとうございました」 リビングの扉が開き、鍛冶の母親が現れた。 丁度、椿の涙が止まり、落ち着いた絶妙のタイミングだった。 鍛冶が気遣にあふれていたのもきっと、この母親譲りなのだろう。 「こちらこそ、突然お邪魔してしまい、申し訳ありませんでした。でも、 鍛冶くん……祐介さんに……直接挨拶ができてよかったです」 「祐介もきっと、喜んでると思うわ。さ、明日もお仕事ですよね? 駅までお送りします」 再びセダンに乗り込んで、数時間前に通った道を戻って