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新しい『知財』カルチャーのつくり方について、インタビューをはじめました feat. QONVERSATIONS

「問い」をカタチにするインタビューメディア「QONVERSATIONS」「知財図鑑」による、インタビュープロジェクトが始まっています。知財ハンターたちが発掘する”すごい知財”と、クリエイターやビジネスリーダーらをつなぐブリッジとなる「知財図鑑」の取り組みを加速させ、「知財」の新しいムーブメントをつくることを目指し、知財図鑑代表の出村が知財を研究・開発する人、管理する人、活用する人など、さまざまなステークホルダーたちにインタビューを行っていきます。第一回は、QONVERSATIONSによる出村へのインタビューです。(許可を得て全文掲載しています)

―まずは、出村さんたちが「知財」に注目するようになったきっかけを教えて下さい。

2018年に開催されたパナソニックの創業100周年記念イベントで、同社が開発したタッチモニターの技術を使って未来のテーブルをつくるという企画に携わったことがきっかけです。それまでコネルでは、認知向上や販売促進などマーケティング課題からクリエーションを始めることが多かったのですが、この時に企業の研究開発プロセスにまで遡り、未来の価値創造をしていくことにクリエイターの能力が活かせることがわかったんです。制作プロセスにおいても、知財が真ん中にあることで、全体の打ち出し方を考えるプロデューサーやプランナー、技術面を担うテクニカルチーム、ヴィジュアライゼーションの部分を担当するデザイナーなどがバランス良く交わることができ、新しいクリエーションのスタイルが見えた気がしました。

―そこからすぐに知財図鑑のアイデアが生まれたのですか?

ちょうどその頃、コネルには異能者とも言えるようなユニークなメンバーが集まり始めていたこともあり、知財を活用していくようなプロジェクトを増やしていきたいと考えていました。2020年に発足10年を迎えるにあたり、日本で最も知財やテクノロジーの情報が流通しているクリエイティブカンパニーという特徴を打ち出していくのは良いことではないかと。そこで新たな実験場であると同時に、企業などが開発した新しい技術のプレゼンテーションなどもできるような開かれた場がつくれないかと考えるようになりました。結論から言うとそれは実現できなかったのですが、さまざまな企業の研究所や大学などを訪問し、お誘いをする過程で拝見した知財が総じて刺激的で、そこから知財ハンターという言葉も生まれたんです。

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ーこうした知財の情報はこれまであまり外に出ていなかったのですか?

研究成果の展示会やカンファレンスへの出展など、知財をお披露目するような場はあったのですが、それが生活者と密接に関わるビジネスの世界にはあまり届いていなかったんです。実際に僕らが出合ったテクノロジーについてクリエイターに話すと良い反応が得られることが多かったですし、研究者の方たちからしても僕らが普段の仕事に近いノリで技術の活用法などをブレストすることが新鮮だったみたいなんですね。それなら、自分たちが知財ハントを通して知り合った人たちとコラボレートしてプロダクトやサービスを生み出していくだけではなく、日々クリエーションや事業のネタを探している人たちにも情報を提供していこうと考え、非研究者のための知財データベースとして「知財図鑑」を立ち上げることにしました。

ー現在掲載されている知財の選定基準や編集方法を教えて下さい。

我々が取り扱っていこうとしている知財というのは幅広く、特許や権利のみならず、Web APIや新素材、すでにサービス化されたテクノロジーなども含まれます。知財の情報は、コネルのメンバーを中心に現在8名ほどいる知財ハンターたちによって集められ、またオープンに受け付けてもいるのですが、掲載の基準は応用性や拡張性の高さです。僕たちには、主に非研究者に向けて有益な情報を提供したいという思いがあるので、「なにがすごいのか?」「なぜ生まれたのか?」「なぜできるのか?」といった切り口から、その知財の特徴をわかりやすく伝えることを心がけています。

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「知財図鑑」より、知財紹介ページ

ー知財図鑑の中には、「妄想プロジェクト」というものが追記されている知財もありますね。

これは、その知財の活用方法を文字通り妄想し、ヴィジュアルと言葉で発信しているものになります。例えば、この技術をこうやって使えばフードロスが減るのではないかといった、世の中にこんなものがあったらいいよねというものを、分厚い企画書でプレゼンテーションするのではなく、「妄想」というフォーマットでスピーディに発信しています。これによって、実行に移す人やアイデアに共感してくれる支援者が現れるかもしれないですし、その知財が世の中に流通し、発展していく可能性が高まるのではないかと考えています。

ー知財図鑑を通して、どんな未来を実現したいと考えていますか?

企業が開発した新しい技術などは、権利を侵されないためとか、いざという時に先行者優位を取れるようにするためといったディフェンシブな理由で特許申請されるケースが多いそうなんですね。こうした知財は積極的にオープンにされることは少ないのですが、オープンにすることで世の中に貢献できるものも少なくないはずです。例えばそれを情熱を持った若き起業家に譲渡や売買したり、CSRの一環で開放するという選択肢があっても良いと思うんです。知財を持っている側、活用する側のミスマッチによって世の中が進化のチャンスを失ってしまうことは非常に残念ですし、そうした機会損失を少しでも減らすことが「知財図鑑」の大きな目的です。同時に、進化のスピードを早めたいという思いもあります。いまは中小規模のプレイヤーたちも色々なことにチャレンジできる時代だからこそ、「車輪の再発明」のための時間は極力省くべきです。すでにある技術をセンス良く活用しながら、スピーディーに提案を行い、世間の反応を見ながら改善・発展させていくという文化を定着させたいと考えています。

ーオープンイノベーションの機運も高まっている中で、こうした考え方は広まりつつあるようにも感じます。

そういう側面もありますが、一方でまだまだ自前主義にこだわりすぎて新規事業の種が花開く前に立ち消えるケースが少なくないと感じています。オープンイノベーションのためのフレームワークなどはたくさんありますし、それが得意な個人も少なからずいますが、企業全体としてオープンな思考を持ち、新しい挑戦の立ち上げに成功しているところは少ないのではないでしょうか。昨今は、GAFAのような組織においても、すでにあるものを有効に組み合わせていくというスタンスが明確になっていますし、もっとコラボレーションが当たり前の世の中になっていくといいなと思っています。

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「知財図鑑」より、妄想プロジェクトページ

ー一方で、新しい技術を発案・開発している研究者側の意識についてはいかがですか?

研究者の方たちのモチベーションのひとつになっているのは、学会や専門誌、論文データベースなど同業者がリーチする媒体に自分の研究成果が載ることです。もちろんそれは大切なことですが、例えば自分の息子から「親父すごい!」と言われたらやっぱりうれしいと思うんですよね。研究成果が一般生活者から称賛・尊敬される場として、「知財図鑑」が使われるようになるといいなと思っています。ゆくゆくは、知財を開発した側が自ら「知財図鑑」に登録するようなことが習慣化されたらうれしいですし、そのための価値づくりというのが目下の課題です。

ーカンバセーションズでは、どんな人たちにインタビューをしていきたいですか?

いまお話ししたような課題感があるので、やはり知財に関わる研究をしている方や、知財をビジネスとして取り扱っている方たちにお話を伺い、そこにどんなニーズや思いがあるのかということを探ってみたいですね。あと、対象としては大きくなりますが、特許の保護や活用促進などについてどんな方針を持ち、具体的に何に取り組んでいるのかということを、特許庁に聞いてみたいです。また、知的財産権の専門家である弁理士さんにも、知財をオープンにしていく上でのマナーや手順、あるいは知財を使う側、使われる側双方がハッピーで安全な状態とはどんなものなのかということなどを伺ってみたいですね。

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ー知財を活用する側に関してはいかがですか?

そもそも「知財図鑑」というもの自体が、非研究者、クリエイターの立場からつくられているものなので、基本的にはこれからも知財を活用する側の観点からサービスやUIのブラッシュアップを続けていくことになるはずです。そうした前提があった上で、例えばいま企業の新規事業部における知財活用のワークショップやカリキュラムづくりをしないかというお声がけなども頂いているので、そうした取り組みに興味がある企業などに具体的なニーズなどをヒアリングしてみるのも面白いかもしれません。

ーカンバセーションズでのインタビューに期待することや、これをきっかけに実現したいことなどがあれば聞かせてください。

カンバセーションズで公開されるインタビュー記事は、自分たちの強力なプレゼンテーションツールになるはずですし、インタビューを続けていくこと自体がプロジェクトの推進力にもなると思っています。また、インタビューを通じて仲間や支援者が見つかるなど、新しいつながりが生まれることにも期待しています。「知財図鑑」はその名の通り、いつか出版化したいという思いがあるのですが、カンバセーションズでのインタビュー記事や、僕らがnoteで発信しているコンテンツが、知財の情報などとともに一冊の本になるというのも面白いかもしれないですね。僕らの取り組みにどこかの出版社が興味を持ってくれて、書籍化のお誘いをしてくれるような状況が、カンバセーションズをきっかけに生まれたら素晴らしいなと思います。

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パナソニック創業100周年イベント「NEXT100」で展示された「Transparent TABLE」。「知財図鑑」誕生のきっかけとなった展示ともいえる。


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