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VC達による2023年の小売・美容業界の予測はどのようなものだったか その1:シリコンバレー編

私が統括を務めるFaB Tokyoの本部であるFaB SFでは、今年2〜3回のイベントが開かれました。パンデミックが始まった2020〜2023年まで、起業家達がより忙しくなったこと、またFaB SF統括メンバーが個人のファンド活動で忙しくなったこともあり、FaBのイベントそのものは、これまでのような100人規模のイベント開催を改め、10〜30人ほどの小規模の会合へとシフトし間下。

開催されたイベントやGatheringは可能な範囲で写真やQuick Takeawayという形でブログなどに残されるようになっています。私も今年は忙しく、コミュニティでは主催としては大きく貢献できませんでしたが、2023年を振り返る目的も含めて、今年行われたFaBイベントをサマリー・日本語訳してみました。

以下は、2023年1月にSFにて、小売・ファッション・美容・ウェルネス分野のVCと起業家を20人以下集めて行なったイベントのサマリーです。

また、FaB SFFaB Tokyoについてご存知ない方は、以下の添付記事をご覧ください。


2023年1月に行われた、FaB SFにてVCと起業家の集まり

参加したVCメンバー:Odile Roujol (FaB Ventures), Rima reddy (Commerce Ventures) , Vincent Diallo (Interace Ventures), Claire Chang (IgnitexXL, chapter leader of FaB Seoul) , Anarghya Vardhana (Maveron VC) Ludovic Ulrich (Microsoft ; venue sponsor)  - San Francisco

  今回集まったメンバーは全員SFかパロアルトをベースにしているVCsです。(FaB SFの初回で登壇してくれたAnargyaも来てくれています。)

Anargya Vardhena (Maveron VC) , Odile Roujol (Fab community and Fab ventures), Rima Reddy (Commerce ventures), Claire Chang (IgniteXL) , Vincent Diallo (Interlace Ventures) - San Francisco

Anarghya (Maveron VC):  私たち調達時にラウンドをリードしており、年間5-8件の投資を行います。通常スタートアップのボードの席にも座ります。我々は初期から次のフェーズ、そして長期にわたって起業家に寄り添ってサポートをします。フィンテック、ソーシャルアプリ、エルスケア、エドテック、コンシューマー領域をメインに投資を行います。

Rima (Commerce Ventures): “我々はコマーステック、フィンテック、小売テック、サプライチェーン、店舗分析などに投資を行い、逆にブランドやDTCなどには投資しません。

Vincent (Interlace Ventures) “我々は、B2B向け小売テック、コマーステック、新しいショッピング体験やイノベーションを起こすサービスに投資をします。
Claire (IgniteXL):  我々のフォーカスは、美容、ウェルネス、広い領域で教育などに投資をします。


起業家からの質問1
「2023年、我々が注意したことが良いことはなんでしょうか?」

Anarghya (Maveron VC):  すべての創業者に対する私たちのアドバイスは経費を削減することです。2023年はお金を集めるのは大変になるでしょう。キャッシュを保管してください。ランウェイを伸ばしてください。

また、より小規模なチーム構成を心掛けてください。シリーズAとBでは、範囲を縮小してください。私たちは、「いくつものことをやるのではなく、1 つまたは 2 つのことを上手くやりましょう」と言います。80%ではなく、40%の成長をする。そしてキャッシュフローをプラスにしましょう。EBITDAに焦点を当てましょう。そして市場が再び IPO の準備を整えれば、当社は良い状態になるでしょう。
フラットラウンドもダウンラウンドも起こるだろう。Q3とQ4はもう少し楽観的になる可能性はありますが、現在の資本コストとインフレ率を見ても、まだわかりません。
今はさらに難しくなり、真の生存者が明らかになるだろう。これはスタートアップと組織のシフトです。いくつかのスタートアップにおいて、何人かの幹部は解雇されなければならなかったりしますが、それは彼らは予算の削減を理解していないことが理由でしょう。

Rima (Commerce Ventures):まぁでも良いこととしては、VCsは今この世界や業界で何がトレンドになっていくか、しっかり勉強するようになるでしょう。私たちは、今サプライチェーンを注目・勉強しています。ブロックチェーンが活用されていたり、オーガニックやUGCによって顧客を獲得する方法など。

起業家からの質問2
「VincentとRimaは小売テックやニューコマースに注目していると聞きましたが、何か起業家が知っておくべきトレンドの傾向やイノベーションなどはありますか」

Vincent (Interlace Ventures) :

小売効率化・サプライチェーンなどに主に注力しています。コロナをきっかけにロジスティクス危機が起こりましたし、その分野での改善の必要性を強く感じたからです。
この分野ではかなり多くの資金が投下されています。そしてVCsの多くは、そのタイミングが来るのを常々見計らっています。

起業家からの質問について3
「現在)、私たちは皆リモートで働いており、AI はどこにでも存在します。(2023年1月時点)
SF とベイエリアは特異性を維持し、引き続き技術トレンドをリードし、ベンチャーキャピタルの支援を受けたデータドリブンな企業を構築するのでしょうか? シリコンバレーに留まる価値はありますか?」 by アレッサンドラ

Rima (Commerce Ventures):

NYC,LAと住んだ後、今はSFに住んでいます。このシリコンバレーの地の投資家達は、元起業家だったり現場でオペレーションをひたすらやってきた人です。
LAはひょっとするとLPや起業家はセレブ寄りなところもあります。
NYCはよりフィナンス出身の人が多いです。
私はシリコンバレーのエコシステムが何か特別でユニークなものだと感じていますよ。


Claire (IgniteXL): 

それだけじゃないですよね、スタンフォードやバークレーなどの協力で優秀な人材のハブがあります。テクノロジー、ニューリテール、数多くの特別なプラットフォームがここにはあります。
私はアジアにもたくさん出張しますが、SFは会社を起こす起業家には今も昔も特別な場所なんです。


___翻訳はここまで___

いかがでしたでしょうか。
これが今年の2月に、投資家達が予想した2023年の状況です。振り返ってみると大きなズレはなく、よく状況を捉えた予測とアドバイスをしていたように思います。
人員・経費を削減し、手元のキャッシュを増やしていくアドバイスは2023年で小売業界だけでなくどの業界でも求められたように感じます。

また、今後の働き方について私個人の見解も書いておきます。
パンデミックが始まった時に、メディアや周りの人が皆「今後リモートワークが始まる」「シリコンバレーの終わり」と言って州外に家を買って引っ越したり、新しいスタートアップエコシステムといってテキサスやフロリダに引っ越したりしていました。
自分の信頼するエンジニアで歴史をよく勉強する友人が、「10年ほど前にも(パンデミックではなく他の要因があり)人が一瞬だけ一斉にシリコンバレーから出ていった時期があった。そこでメディアや人が声を揃えてシリコンバレーは終わると言っていたが、3,4年もしてあっという間に人が戻ってきたことがあった。結局このパンデミックでも、人がシリコンバレーから消えるということはあり得ない。」と2020年に予測していたのを、私は覚えていました。
実際はその通りなのではないかと感じています。
無駄な対面ミーティングの数が減り、業務の効率化が進み、オフィス出社が週3,4日と緩和対策をしているテック企業はいるものの、ベイエリアに住まずに完全リモート受け入れてくれるテック企業の数はそれほど増えないでしょうし、シリコンバレーそのものがエコシステムのパワーを失うということはあり得ないかと感じます。

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