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平和構築の仕事ー治安への恐怖について

今回日本での休暇中に3つの大学でゲストスピーカーとして平和構築の仕事の話とか国連でのキャリアの話をした。
そのうち二つは地方の大学で国際協力について学ぶ授業だったのでとても関心をもって授業を聞いてくれた。
事後アンケートで質問を回答することになっているので、久しぶりにNoteを再開してみた。

3つの大学で多かった質問が「命の危険を感じたことはあったか?」という質問だった。また、「国連の職員として紛争地域で働き始めるときに「怖い」という感情はなかったのでしょうか」という質問もあった。

平和構築に関する仕事をするうえで、命の危険を感じることはなくはない。僕ではないが、同僚の中には銃撃戦に巻き込まれたり、誘拐された経験を持つ人もいる。ただ、こういう話をするとやっぱり怖いと良く言われるが、こういうケースはごくまれで、平和構築関係の仕事でもいろいろあるので、必ずしもこういう恐怖体験が日常茶飯事というわけではない。
むしろ恐怖というのは無知から来るものも多いのではないかとも思う。また中途半端な知識も逆に恐怖を招くのではないだろうか。

例えばとある紛争中で反乱軍によって占拠された空港に降り立つとする。海外旅行をしたことがない人はどの空港だって怖いと思うけど、その国が紛争中という情報だけ知って行くとさらに怖い。しかしそんな何の情報もないままその国に行くことってあるだろうか?
初めて紛争国や危険といわれる国に行く場合、普通だれでも事前に情報を集める。これは国連職員も同じで、結構いろいろな人からその国の情報を仕入れてから行く。空港でどう立ち振る舞うか、何をすべきで何をすべきでないかの情報を手に入れる。そうするとある程度恐怖感が減る。そして一度経験すると、二度目行くときはさらに恐怖感が減る。

一方、一度も海外旅行したことのない両親、親せきからは「そんな危ない国に行ってー」と毎回同じことを言われてうんざりした経験のある人も多いだろう。

つまり知らないから怖いと感じるのである。どんな紛争国だって人間が暮らしているところである。行ったら即死亡!なんてことはない笑。

今回、事前アンケートで海外で働く場合一番不安なことは何ですか?と聞いたら、圧倒的に多かった回答が「治安」だった(衛生、言語とかより多かった)。日本の治安は世界一良いと言ってもよいくらいなので当然であるが、現地の治安状況に合わせた行動をとることで一定のリスクは減らすことができる。個人的には「情報」と「経験」で大分リスクを減らすことができると思う。

なお、国連では、セキュリティに関するオンライン研修と実地研修があり、オンライン研修は全スタッフが受けねばならず、実地研修は紛争地に行くスタッフ向けのものである。実地研修はそれこそ、銃撃戦の場合の対応から、実際にバスに武装勢力が乗り込んで誘拐されるケースなんかも経験する。これはどちらかというとメンタルを鍛える部分もあると思う。常に冷静に考えて判断することが大事であるからだと思う。

紛争地に赴任すると必ず専門家から治安全般についての講義があり、移動時の車は防弾車だったり、行動範囲が決められていたり、一人一人に防弾チョッキとヘルメットと無線が与えられたりとそれなりのルールや行動規範が決められている。危ない場所は危ないなりの行動が要求され、それを守っていればそれほど命の危険にあうことはない。

自分は若い時から途上国に行ったり、アフリカでの生活が長く、セキュリティに関する行動規範が植え付けられてその分恐怖心が減っていたので、紛争地に行くといってもそれほどの恐怖感は持たなかった。恐怖ではなく、治安の悪いところに行ったらどうすべきかと考えるようになった。

日本は治安はよいけれど地震がある。日本人は地震が起きた時の行動規範は小さいころから習っていて、多少の地震が起きても恐怖は感じないのではないか。日本の大学院時代、留学生用の寮のチューターをしていたのだが、小さな地震の度に留学生が部屋から出てきて怖がっていた。東日本大震災が起きた時、アフリカから来た研修生と一緒にいたのだが、某国の司法機関から来たいつも威張っていたお偉いさんが、地震が起きた時全く身動きが取れず、指示されて初めて机の下にもぐり、そこから恐怖でぶるぶる震えて地震が終わってからも出られなかったこともある。その後アフリカからの研修生が地震と放射能の恐怖で日本に行くことを拒否した例もたくさんあった。

このように考え方次第で日本も危険な国になってしまうのだが、とはいえ治安の悪い国はやはり危険に巻き込まれる可能性がないことはないので、必ずしもこれを読んで絶対大丈夫!とは思ってほしくはない。

ということで前置きが長くなってしまったが、次のエントリーで実際にあった怖い話を書こうと思う。

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