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銀貨を食べる勇気


ショコラリスト®︎サユリです。

皆さん、新年明けましておめでとうございます。
わたしはお正月はゆっくり過ごし、1月6日には新年をお祝いするガレット・デ・ロワを食べました。

フランスの風習では1月6日はキリスト教の公現祭、エピファニーと言います。キリストの誕生を祝って、東方から三賢者がやってきて謁見したそう。


その日を祝うために伝統的なアーモンドフィリングのパイを食べます。ホールパイの中にはフェーブが一個仕込まれていて、切り分けたパイにフェーブが入っていた人はその日の王様となります。

近頃は日本でも本格的なガレット・デ・ロワが手に入りやすくなってきました。わたしはドンクのガレット・デ・ロワを予約しておき、1月6日に美味しく頂きました。あ、ただしフェーブは別添えでした。間違えて食べちゃうといけませんから、ね。


ドンクのガレット・デ・ロワは毎年、定評があり、パッケージもフェーブも紙製の王冠まで付いていて、デザインもシックでおしゃれなんです。


1月15日まで販売しているとのこと。新年の縁起の良いお菓子なので、気になる方は、ぜひ家族や友人と味わってみてはいかが? 


さて、フェーブ。
小さな陶器の人形などが一般的ですが、その昔、教会などで後継者を決める際には、やはりお菓子の中に銀貨を入れて振る舞い、銀貨を引き当てた者が選ばれたそう。

うーん、
それって、公平なのか、テキトーなのか?
もし、わたしが当事者ならば悩ましくなると思いますが……

と、ここでふと、ワープしたように、なぜか思い出したのが、チャールズ・チャップリンの1940年の名作『独裁者』

観たことありますか?
タイトルだけは聞いたことがある?

近頃はチャップリンを知らない世代も増えていますが、わたしが映画ライターとして専門誌に執筆していた頃は、プロの大前提としてチャップリンの全作品は言わずもがなの必須必見でした。(もちろん、今でも教養として必須必見には変わりませんが)

『独裁者』はチャップリンの作品の中でも問題作として、勇気を持って世に問うた名作です。当時、独裁勢力を振るいまくっていたドイツのヒトラーに真っ向から立ち向かっています。チャップリンの唯一の武器はドタバタ喜劇。

このドタバタの中に、確か銀貨を食べるシーンがあったはず……と、ふと思い立って、正月中にゆっくりと見直してみました。

さすが天才と言われたチャップリン。脚本、監督、演技をすべて一人でこなしています。SFXもデジタル編集でもない時代に、フィルム実写で、世に訴えるタイミングを逃さず、芸術面でも妥協せずに創りあげたという点でも、奇跡のような映画です。

この作品の見どころはユダヤ人の床屋とヒトラーを思わせる独裁者ヒンケルの二人をチャップリンが演じ分けるところ。全く正反対の人物を、一人二役で面白いおかしく魅せてくれます。

ユダヤ人の床屋は、ひょんなことが重なってヒンケルの率いる兵士たちに目を付けられ、身の危険が迫っています。そんな折、ユダヤ人の男たちが集まってヒンケル暗殺の実行犯を選ぶことになりました。

そこで出てくるのが、じゃじゃん!銀貨の入ったプディングなのです。
配られたプディングの中に銀貨が入っていたら、ヒンケルの官邸に忍び込んで建物を爆破する大役を仰せつかるのです。

危険な状況下で、自らが犠牲になるべく命のかかった実行犯を、五人の中から選び出すという緊迫したシーンなのですが……


ここで大笑いしてしまったことをわたしは覚えていました。今回、改めて観直して、やはり大笑いした名シーンでもあります。 

床屋は自分が当たりませんように……と思いながら食べたプディングの中に、なんと!大当たりの銀貨が入っていたのですね。ヤバ……そうとは悟られないよう、こっそり飲み下してしまうのです。その際のチャップリンの絶妙な表情と言ったら!

ところが……
一枚さりげなく飲み下したと思ったら、あれ?もう一枚!

小心者の他の男がこっそりチャップリンのプディングに銀貨を回してしまったのです。実はこの作戦を阻止しようとして、床屋のガールフレンドが、五個のプディングすべてに銀貨を入れていたのです。


結局、勇気のない他の男たちの銀貨を次々と、チャリンチャリンと飲み下していくチャップリンの姿に大笑いさせられる名シーンでした。

『独裁者』の名シーンといえば、真っ先に上がるのがヒンケルが世界征服を目論んでバルーンの地球儀と戯れるシーン、そして何といってもラストの有名な床屋の演説シーンです。

ドタバタしながら、ヒンケルと取り違えられた床屋は、世界中に向けたラジオ放送で自らの想いを訴える大舞台に運ばれます。

当時としては大胆不敵すぎるヒトラーへの痛烈な批判を、チャップリンはスクリーンを超えてに世界中に訴えたのです。

現在、映画はモノクロのフィルムから色鮮やかなデジタルへと変わり、わたしもこうやってデータ配信で過去の名作を自宅のパソコンでみられるようになりましたが、今もまだ戦争や独裁は世界各地に起こっています。

チャップリンの演説は、ヒトラーの時代も今現在をも超え、その先の未来、ひとりひとりの心の奥にある平和と理想について語られているように響いてきました。

ラストシーンはそれまでのドタバタから別次元にチューニンングされたような、凛とした空気感が冴え渡っています。1940年のチャップリンが未来のわたしたちのためにチューニングしたかのように。

👇こちらが、ラスト名演説シーンの抜粋です。
👇画像をタップするとYouTubeに飛びます


このラストシーンは名演説として、今もテキストや動画などで世界中に広まっています。


ガレット・デ・ロワを食べながら、2024年の新年、わたしもチャップリンからのメッセージを受け取りました。

床屋は銀貨を食べずに飲み込み、結局は吐き出してしまった小心者でしたが、ラストでは言葉と想いに最大限の勇気を込め、自分に正直になり、戦いを挑んだのです。

さぁ、2024年が始まりました。
わたしも今年、勇気を持って、自分の想いに正直に立ち向かって行こうと思います。

小さいけれど、ひとりひとりが充たされて行くことで、世界は平和のエネルギーを放てると信じています。

お読み頂き、ありがとうございます
皆さんも素晴らしい2024年になることをお祈り申し上げます。



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