京都喫茶店の歴史を尋ねる旅① 昭和初期に開業した喫茶店
京都は、全国トップクラスのコーヒーとパンを愛する街です。
総務省統計局の家計調査によると、京都市はコーヒーとパンの年間消費量が第1位です。京都は大学数が多いので、学生や教授がカフェに集まりコーヒーを飲む文化が根付いたのではないか、ともいわれているようです。
そのためコーヒー店や喫茶店の数も多くあります。京都は第二次世界大戦でほとんど空襲の被害にあっていないため、戦前からの喫茶店が残っているケースもあります。
そんな京都ならではの歴史を感じたくて、東京から旅してレトロな喫茶店を巡っています。
7時発の新幹線に乗ると、9時過ぎに京都駅に着くので、モーニングをいただくために喫茶店に直行します。そしてホテルに荷物を預けて、ランチをいただくために別の喫茶店へ。もう1軒でコーヒーをいただいて、ちょっと観光などして、コーヒー休憩。これで1日4軒はまわれます。
京都の喫茶店の夜は早いので、昼間に行ったお店でサンドイッチのテイクアウトをすることもあります。たまに夜まで営業しているお店があれば、夜も喫茶店ということも。
とはいえ、コーヒー1日4杯以上はちょっとつらいので、夜は抜いたり、ラーメン食べちゃったりもします。マンガを借りられるホテルに泊まって、近くの喫茶店とホテルを往復したこともあります。
コロナ後に営業時間が変わっていて、お店の前まで行ってみたらお休みだったり、飲食できると思って行ったら珈琲豆の販売のみになっていたりもしました。
そんな旅の成果です。京都市内に現存する昭和初期に開業した喫茶店を古い順にご紹介します。
1930年 進々堂京大北門前
京都市内に現存する喫茶店としては、一番古いお店。京都を代表するベーカリー「進々堂」の創業者・続木斉氏が、1930年(昭和5年)に京都大学農学部の横に、京都で初めての本格的フランス風カフェ「ノートル・パン・コティディアン」を開業したのがはじまり。現在の店主は、斉氏のひ孫にあたる川口聡氏。現在は「進々堂」とは別会社になり、「京大北門前カフェ進々堂」として営業しています。
創業者・続木斉氏は、日本のパン職人として初めてフランスに渡ったところから、このお店は日本におけるフランスパン発祥の地ともいわれています。また場所柄、京大の教授や学生御用達で、中庭はゼミ生専用のようです。
私が行った時は、夏休み期間だったので学生の姿はほとんどなく、中庭もクローズしていました。大きなテーブルはグループで利用するのにちょうどよさそう。ここで多くの学生さん達が議論を交わしたのですね。
店内の撮影はNGでした。名物のパンにカレーを付けながらいただく「カレーパンセット」をいただきました。あらかじめコーヒーにフレッシュミルクを入れて提供するのは創業時からのスタイルです。
1932年 スマート珈琲店
1932年(昭和7年)に洋食店「スマートランチ」として創業。戦後、自家焙煎珈琲を提供する喫茶店「スマート珈琲店」にリニューアル。京都三条の寺町通アーケードの中にあり、京都市内に現存する喫茶店として2番目に古い店です。
コーヒーやホットケーキなどの作り方は創業時から一子相伝で、現在は3代目である元木章さんとご家族、スタッフの方々でお店を経営しています。ホットケーキ、フレンチトースト、プリンなど卵を使ったメニューが充実。どこかなつかしい味です。
朝昼晩同じメニューを同じ味で食べられるのがうれしい。サンドイッチはテイクアウトもできます。ランチタイムには2階で本格的な洋食を提供されています。
1934年 フランソワ喫茶店
1934年(昭和9年)創業。西洋の街角のような外観、イタフランソワ・ミレーリアの豪華客船をイメージした内装は、オーナーの立野正一氏と若い芸術家仲間が設計しました。店名はフランソワ・ミレーにちなみます。当時は、反戦や前衛的な芸術を議論する場でもあったようです。
店内にはモナ・リザなどの名画の複製が飾られ、クラッシック音楽が流れています。喫茶店として初めて、国の登録有形文化財に指定されたのもうなづけます。
夕方、歩き疲れて立ち寄って、ピザトーストをいただきました。きちんと4枚おかれたバジルが格調高い!おしゃべりに花を咲かせるマダムに交ざって、時空を超えたような気がしました。
1934年 築地
1934年(昭和9年)創業。河原町通から少し入った雑居ビルの合間に立つ、2階建の洋館です。3代目である現店主の祖父(初代)が演劇好きで、「築地小劇場」から名前をいただいたそう。
思い切って扉を開けると、重厚な装飾品とクラシック音楽。ちょっと、よそ者感を味わいます。精巧な装飾がほどこされた存在感のある赤い布張りの椅子は、初代がデザインしたそうです。
「ウインナー珈琲」発祥の店で、普通のコーヒーはメニューにありません。戦後、生クリームの粗悪品が出回っていたので、「本物だよ」という意味で泡立てて提供したのがはじまりだそうです(偽物は泡立たない)。
そんな歴史を感じさせてくれるお店です。
1935年 珈琲の店雲仙
1935年(昭和10年)創業。京都の自家焙煎店のパイオニア的存在。現在は3代目の高木利典氏が仕事のかたわら店に立っているので、営業は日曜日のみ。珈琲豆の焙煎はまだまだ修行中とのことで、「丁稚珈琲」を名乗られています。
かなりレトロな外観。窓越しに古い焙煎機が見えます。店内は昔懐かしい低めのテーブルに皮張りのソファ。1番奥はその昔、防空壕に使われていた場所だそうです。渡瀬恒彦さんや夏目雅子さんが出演した映画「南極物語」のロケに使われ、そのときの写真が飾られています。
厚焼きのホットケーキは、北海道産小麦粉、沖縄産砂糖と紀州の塩を少々入れて、 さっくり混ぜて銅板でじっくり焼いたもの。「THANK YOU FOR YOUR KINDNESS」の刻印が入って、温かい。とってもおいしかったです!
1935年 大洋堂珈琲
京都西陣千本丸太町にある自家焙煎珈琲の店。創業1935年(昭和10年)で、現存している焙煎卸業者の中で、珈琲専門にやっていた最古参のようです。過去には飲食もやっていたようですが、現在は豆や珈琲器具の販売のみになっていました。個人のお客様だけではなく、レストランやコーヒショップにも豆をおさめていらっしゃいます。
1937年 喫茶 静香
創業者の宮本良一氏が、「静香」という名の先斗町の芸妓さんがやっていた喫茶店を買い取って始めたお店です。自家焙煎なので、静香開業にあたり、烏丸にある「珈琲の店 雲仙」の先代にコーヒーの焙煎を学んだそうです。
現在の店主は、創業者のひ孫の奥様。2016年にリニューアルしましたが、アンティークな木製の家具やベロアのソファーなどの内装は創業当時のままのようです。
今出川通と千本通の交差点近くの『西陣』と呼ばれる地域の一角にあります。西陣というのは、応仁の乱の西軍の陣地なのだそうです。京都で”戦争”といったら、応仁の乱のことらしいですからね。
デニッシュパンのフルーツサンドが人気で、テイクアウトもでき、できれば予約。私はフルーツサンドは持ち帰って、店内ではホットケーキをいただきました。今年2023年に寺町三条に新店「パンとコーヒーのSHIZUKA」をオープンされて、フルーツサンドは買いやすくなりました。
*昭和初期 喫茶農園
祇園・花見小路の入り口にある老舗喫茶店。元々は西洋料理のレストランとして、昭和初期に開業したようですが、正確な年はわかっていません。現在は、こだわりのコーヒーと軽食を提供する喫茶店として営業しています。
観光客にとっては、とても便利な場所にあります。私もこれまで何度も前を通っていたと思うのですが、そこが喫茶店だという認識はあまりありませんでした。
こんな一等地で、コーヒー一杯500円って、とってもありがたい。クリームソーダやあんみつもメニューにあります。モーニングも営業しています。
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