三日月ノ戯レ

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  • しょこらさんの作品

    拙いですが拙作をまとめました

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帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 大詰め

「チハヤ・・・チハヤ!」  童の声にハッと目を開ける。 チハヤは小さな石の墓に手を合わせていた。 長い夢を見ていたのだろうか、それともこれは自分の記憶なのだろうか・・・  なぜか涙が止まらない。 「チハヤ〜どうしたんだよ?なんで泣いてるんだよ?」 「泣いてねーよ、目にゴミが入ったんだよ」 「はいはい、優しいお姉さんはチハヤくんが泣いてるところなんて見てないってことにしといてあげるよ」 「どうせ誰にも言わないであげるから飴買ってとかいうんだろ」 「おっチハヤは物分かりがいい

    • 帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 巻之陸 「童の闘い、千早丸の闘い」

      命の宝玉 「あった・・・黒蟒の頭・・・」  童が指差した先、大蛇黒蟒が再生した鎌首を持ち上げ、童達を頭上から見下ろしていた。 「怪しげな術を使う者達よ・・・私の体を切り刻んで何を探そうとしている・・・ わかるぞ・・・チハヤの魂か?・・・そうであろう?欲しいよのう禿の娘よ」  童は蛇の言葉に動揺することなく千早丸の宝玉のありかを探していた。 「やっぱりアンタも女だねぇ。悪い奴でアタイの事を女ってわかってくれたのはアンタが最初だから。そこだけは褒めてあげるよ蛇女!」 「童

      • 帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 巻之伍「天羽々斬」

        仮初の命  祠の外・・・  蝦蟇蟲は駆け付けたマキビに介抱されていた。 「遅いです。あとで説教しなければ・・・」 「すまんな、だが私がくるまでお前たちが頑張ってくれたおかげでいいものが手に入った」 「何?マキビの愛がこもった・・・」 「あとでいくらでも聞いてやる。今は童の事が先だろ」  蝦蟇蟲をはぐらかすように言葉をさえぎるマキビ、 いつものことだが少しくらいはやさしい言葉をかけてくれても、と思う 「・・・雰囲気も何もあったものじゃないわね、マキビらしいわ」 「褒め

        • 帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 巻之肆「祠の奥」

          黒蟒(こくぼう)  朽ち果てて崩れそうな大きな社、一葉もなく枯れてしまった神木。 その傍らに山に穴を開けたような小さい祠があった。 入口をくぐれば子供なら屈むこともなく通ることのできる暗く長いその先には十丈はあるかと思われる広大な空間が広がっていた。  祭壇のように一段高いところに童は横たわっていた。 高い天井から滴がポタリと童の頬に当たる。 「う・・・うぅ・・・」  意識が戻った童は上体を起こして辺りを見回してみた。 湿気を帯びた空気が体に纏う。薄暗く周りに何がある

        帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 大詰め

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        • しょこらさんの作品
          10本

        記事

          帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 巻之参「記憶」

          村人たちの記憶  主の部屋に向かう・・・ マキビがその部屋に入るのは二度目である。 外から声をかけて扉を開ける。 昨日招かれて初めて入った時と比べると全く異なった印象を感じた。 ななか落ち着かず、部屋の空気も澱んでいる気がするのは気のせいか・・・  見渡してハッとしたのは、部屋には主のほかに既に千早丸の両親も座っていたことであった。 硝子玉で見ていた時には確かに姿は見えていなかったが、童には見えていたはずである。 "刻が巻き戻されたのか、はたまた如何なるまやかしであろう

          帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 巻之参「記憶」

          帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 巻之弍「禁足の地」

          咎 「マキビ、大変なことになったわ!」 蝦蟇蠱が屋敷に戻って来た。 「どうした?峠の道が崩れでもしていたか?」 「あ、そうなんだけど・・・もしかしてわかってたとか?」 「まぁ、そうだろうなと」  マキビの想定通りであった。先の地震で崩れたのであろう。 「宙からの出入りはどうだった?」 「無理ね、飛んでは見たけどこの屋敷辺りを中心に強い『負の結界』が形成されてる。マキビでもすぐに解除できるかどうか・・・」 「負の結界か・・・どうやら私たちは『禁足の地』に誘い込まれたのかも

          帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 巻之弍「禁足の地」

          帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 巻之壱「蛇払い」

          術師、道に迷うこと 「師匠、もしかしてアタイたち道に迷った?」 「うーむ、そうかもしれないねぇ」 「やっぱり・・・街道から逸れてるのはわかってたんだけど、自身ありげだったからさぁ」 「童よ、今の所都からは大した御用も受けてはおらぬのだ、慌てることもあるまい。道もほれ、轍が残っておる。馬車も通るのであれば往来する者もそのうち・・・」  師匠と呼ばれた男は彼が童と呼ぶ少女を連れてふたり山奥の街道を東国から都へ向かっていた、はずであった。  神宮へ参詣する人たちが多く通る街道

          帝殺しの陰陽師〜第壱帖 蛇〜 巻之壱「蛇払い」

          帝殺しの陰陽師~前奏

          序〜あらすじ〜 古より呪詛を生業とする者あり、 穢れを払う事もあれば 人を呪い、陥れ、 或いは命を奪うことも躊躇わず行う者・・・ 陰陽師の中でも禁忌とされる呪詛や蟲毒の扱いに長けているごく限られた者に与えられる称号が『呪詛師』である。 散楽師がよく着ている派手な装束姿に痣のような手脚の肌模様。  顔は竜骨の面を頭から目深に被り表情は見ることができず。 ただ、面の下から見える口元は妖艶で、 女達はその少し上がった口角に魅了されるという  帝すら配流の末に呪い殺し呪詛師

          帝殺しの陰陽師~前奏

          paperspaceでのDepth map liblary and poserは現在使えません

          7月20日頃のメンテナンス以降、 paperspace上でStable Diffusion WebUIを使っているときに拡張機能である Depth map liblary and poser をインストールしているとエラーを連発して画像生成ができない状態が続いています。 お手手の修正とか助かってたんですけどね とりあえずはDepth map liblary and poserのフォルダごと削除で他の機能は使える様になるのですが 便利な機能なのでなんとかならないものですかね

          paperspaceでのDepth map liblary and poserは現在使えません

          おっちゃんでもできたPaperspaceで快適Stable Diffusion Web UI環境

          注記 起動用のスクリプトは定期的に更新しております。 2023/11/23に生成ができなくなる一部バグがあると言うことで修正しております。 AIイラストくんについて 2023年5月、Twitterで瞬間最大風速を記録した話題の一つが LINEでAIイラストを生成できる「AIイラストくん」でしたね。 6月13日現在招待制のため招待コードを求める人がたくさんいるようです。 まぁチャット形式で簡単にAIイラストを結構高画質で作ってくれるので たくさんのイラストを作らせていた

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          「血は苦手なので今日もいちごミルクって言いましたよね?!」第二話「美少女吸血鬼は懇願する」

          -1-ふたりにはいつもと変わらない朝の通学風景 ナディアの住む洋館- 実は日本最古の洋風建築というその事実は伏せられている。 トランシルバニアの建築士が密かに日本を訪れ、吸血鬼の棲み家として建てたのが始まりと言う。 その館の主、ナディア・イオネスクは吸血鬼の名家イオネスク家の次女である。 長く黒髪、ルビーのように燃える真っ赤な瞳、 街を歩けば下心がはみ出ている男たちやスカウトたちが必ず声をかける美貌の持ち主、だが本人には見た目に対する自覚が全くと言っていいほどないので彼らの

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          「血は苦手なので今日もいちごミルクって言いましたよね?…

          「血は苦手なので今日もいちごミルクって言いましたよね?!」第一話、「美少女吸血鬼はメイドに叱られたい」

          AIイラストくんで作成した吸血鬼のイラストから始まった妄想クソラノベです。 NEXTNFTにて販売中ですがその無料部分を公開します。 第一話、「美少女吸血鬼はメイドに叱られたい」 主「 ナディア・イオネスク」はイラついていた。 何十年何百年と時を経ても朽ちることなく手入れの行き届いた住まい、広い寝室、豪華だがケレン味のない内装と調度品に囲まれ今朝も至福の目覚めを迎える・・・はずであった。 毎朝7時ちょうどに寝室に起こしにくるメイドの 紗姫がやってこない。 「いや、起

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          沿海州の亡霊・第七章~転生したら膝枕だった件

          11.シュブール暴走 ニィナ「これは・・・どういうことですの?」 シュブール「なぜ、あなたは膝めがけて帰ってくるんですか?!それも、そんな格好で!」 俺「は?」 どうやら俺は死んではいないらしい、 そして頭の下に柔らかい何かが・・・ ニィナ「仕方ありませんわねぇ、今夜はこの方と楽しませてもらいますかしらねw」 シュブール「え?!」 ジェノ「お嬢様!」 ニィナ「あぁシュブールさん、この方があなたがあちらの世界から召喚なさったという膝枕の方ですか、 確かに素敵な膝をお持ちの

          沿海州の亡霊・第七章~転生したら膝枕だった件

          沿海州の亡霊・第六章~転生したら膝枕だった件

          10.刃 ヒザーラはヒサコから受け取った箱を抱えて自室に戻ってきた。テーブルの上に箱を置き、恐る恐る開けてみる。中を覗くとヒザーラは満面の笑みを浮かべて「枕!」と叫んだ ヒザーラ「あぁ、これこそ亡き母上の膝ではないか!この肌の色、柔らかさ・・・まさしく母上そのものだ!」 ・・・いえ、俺ですけど・・・ ヒザーラ「はやくこの膝に頭を預けたい!だが・・・あまりに焦りすぎると母上になんと言われるか・・・落ち着け、落ち着け俺・・・まずは、この膝の感触を手のひらで・・・ ああっ

          沿海州の亡霊・第六章~転生したら膝枕だった件

          沿海州の亡霊・第五章~転生したら膝枕だった件

          9.ニィナ・ピロゥと膝枕 沿海州ー 沿岸沿いに白い壁と橙色の鮮やかな屋根が連なる街並みを駆け抜ける一台の馬車。 整備された石畳に響く車輪の音・・・ 馬車の目的地は、沿海州領主ピロゥ家の屋敷。 車止めに止まると中から大柄の男たちが数名、そして手を添えられながらニィナが降りてくる。 最後に降りた男の腕シュブールが眠ったまま抱かれていた。 銀色の猫の姿で・・・ ニィナは男たちに周りを監視するよう伝えると屋敷の中に入っていった。 門の向こうにスラリとした男が主人の帰りを

          沿海州の亡霊・第五章~転生したら膝枕だった件

          沿海州の亡霊・第四章~転生したら膝枕だった件

          8.園遊会 夕暮れになると王都の町に神殿の鐘の音が鳴り響く。 人々は仕事の手を休め、鐘の方角に向かって祈りを捧げる。 鐘の音以外聞こえない、時間が止まった様な風景、 鐘が鳴り止むとまた仕事や家事に戻る。 だがこの日、寺院は鐘を鳴らすことなく町は祈りを忘れているかの様な喧騒に包まれていた。 城内での大きな行事が行われるからである。 城内中央の庭園でヒサコ妃殿下を迎えての園遊会が始まろうとしていた。 周辺各国の大使、王都の貴族や要人、寺院の代表たちが集まっている。 国

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