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Official髭男dismを聴きながらストのパリを歩く

12月5日から、フランスでは無期限の大規模ストが実施されている。

年金制度改革案に対するマクロン大統領への抗議としてパリ交通公団やフランス国鉄が端を発したこの全国規模のストライキは、1995年の3週間続いたゼネストと比較され、日々ニュースや新聞を賑わせている。

フランスに住んで3年強の私には、初めての長期間にわたる大規模スト。9月にあった同様のストは、1日だけでしかもフランス国鉄はかろうじて動いていたので、ルートを変えて少し歩けば良いだけだったのだが、今回は3本に1本間隔のいつ来るかわからない&来ても満員のバスか、レンタル自転車か、レンタルキックボードか、徒歩。。。

運動神経に自信がない上に、自転車にも10年近く乗ってない私は、かくして徒歩で50分程度かけて仕事に通っている。最初の日こそ、ちょっとしたイベント感覚も手伝ってそこまで負担に思わずにいたが、三日目、四日目となるとさすがに疲れてくる。普段音楽を外で聴くことはしないのだが、疲れを紛らわすために髭男や米津玄師の曲を聴きながら歩くとなんだかいい感じ。パリっぽいフランス人歌手の曲を聴いたりもしてみたが、なんだかしっくり来すぎる。J−POPとパリの街の微妙な違和感が、不思議な心地よさで足の疲れを忘れさせてくれた。

通勤ルート途中にセーヌ川があり、エッフェル塔を横目に見ながら橋を渡るのだが、この景色だけは何万回見ても見飽きない気がするのは不思議だ。もちろんエッフェル塔だけでなく、週末の夜に真冬でもカフェのテラス席に陣取りおしゃべりの止まないパリジャン達や、ホテルのレセプションで暇そうに座っているムッシュー、朝であれば早い時間から賑わっているブーランジュリー、、、普段電車で通り過ぎるだけの通勤路に息づくパリの人たちの生活を垣間見、自分はパリにいるんだなあ、なんて今も思ってしまう。きっと、この先何年住もうとも、異邦人としてのこの感覚は変わらないような気がする。

ストライキをして権利を勝ち取ることに肯定的な人が多いフランスでは、交通機関の麻痺による不便さや経済に対する打撃を憂えても、ストやデモをやめろとは言わないことがほとんど。例え給料が出なくとも、ストライキをして自己の社会的権利について主張するのは当たり前、という姿勢は、日本人である私には羨ましいほど。同時に、日本で生まれ育った自分の考えの傾向が、いかに日本的かということに気づかされる。世界的に最も少子高齢化の進んだ日本でこそ、年金に対するストやデモがもっと起こってもいいだろうと思う反面、地下鉄やJRが全運休した東京を想像できないのも事実だ。

でもなぜだろう、フランスの人たちが国の政策に抗議して立ち上がっているのを見て、こっちはなんとかするからがんばって、と応援したくなる。怒りや不満の声であると同時に、自分たちが動けば国は動く、という希望の声にも聞こえるからだろうか。

ともあれ、いつまで続くか心配しても仕方がない。電車があれば乗るし、なければ歩く。私の場合は少なくとも、髭男の最新アルバムと、夏に無印で買ったスニーカーがあれば大丈夫、、かな。




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