帰省は移動時間30分で。
うーん、取れない。
土曜日の午後、浴室乾燥していた黒いニットに手をかけると、白い毛玉がやたらと目立つ。
友達からもらった古い洗濯機のせいだろうか。それとも洗剤?ハンガーからはずしながら、そんなことを考えた。
一人暮らしを始めて、半年が経とうとしている。
心配だからと反対する親を振り切り、通勤に1時間がかかる実家と職場の中間に部屋を借りた。
27歳。もう充分すぎるほどに実家を堪能した。
晴れて手にした生活は、わたしを自由に開放した。好きなものを食べ、好きな時間に入浴し、寝る。休日は一日誰とも話さないこともあるけれど、テレビがあれば大丈夫。
黒いニットは何だか前よりもクタッとした気がする。実家にいたときは母が伸びないように丁寧に洗濯してくれていたのだろうか。
わたしは大事にされていたのだ。
親から離れることでそう実感することもできた。
スマートフォンの画面が明るくなった。母からのLINEだ。
「今週も帰ってくる?夜ご飯何がいい?」
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