第三回「詫び文公開後の展開」

 千田氏の最初の抗議(8月頭)からマイナビ出版HP上での詫び文掲載(8月21日)までの出来事は、第一回、第二回で書いた。(論評ではなく事実関係だけが欲しい方は、第一回①経緯第二回①経緯の部分だけを辿られるとよいと思う)

 本稿では主に詫び文掲載(8月21日)から、本連載開始(9月8日)までに起きた出来事を時系列でまとめていく。今回はほとんどが既に公開されている情報である。取材者としての私だけが知る情報は、水面下でのsuimon氏とマイナビ出版とのやり取りとなる。

+++++
★目次
0.8月3日~8月17日までの主な出来事 
1.詫び文掲載(8月21日)~本連載開始(9月8日)までの主な出来事
2.まとめ
+++++


0.8月3日~8月17日までの主な出来事 

◆8月3日 千田氏からマイナビ出版に抗議が入ったとの相談をsuimon氏から受ける。(→第一回①経緯
・この時の論点は第一回②論点を参照。

◆8月4日 suimon氏報告書をマイナビ出版に提出

◆8月17日 マイナビ出版からsuimon氏に詫び文の掲載が決まったとの連絡が入る。(→第二回①経緯
・この時の論点は第二回②論点を参照。


1.詫び文掲載(8月21日)~本連載開始(9月8日)までの主な出来事

◆8月21日 
・マイナビ出版のHP上に詫び文が掲載される。

◆8月22日
・千田氏が連続ツイートを開始。ある程度広まってから呟くと告知。
(他業界の人達にとって理解しにくい事件であったためか、炎上的な拡散は起こらなかった。また、将棋情報局アカウントは本件についてツイートを行っていない)

・suimon氏、連続ツイートを行う。(この時期は参考文献の書き方には問題があると考えていた。私達も先方の姿勢やロジックのおかしさを指摘してはいたが、法的にどう解釈してよいかについて自信がなかった)

◆8月23日
・弁護士の伊藤雅浩氏が本件に興味を持つ。

◆8月25日 
・将棋ソフト開発者の平岡拓也氏、弁護士の伊藤雅浩氏が本件に関するツイートを行う。平岡氏は「C-book」に関して検証。伊藤氏は本件についての見解を述べる。
・千田氏、説明を打ち切る。


◆8月26日
 
・橋本、ツイートで本件に関する連載を告知。
★水面下での事情……マイナビ出版からsuimon氏側に付くという類の連絡があったため、即時の論戦は取りやめに。

◆8月28日 橋本、マイナビ出版社に新書第2弾の執筆停止を申し入れ

◆8月30日 
・橋本連続ツイートでマイナビ出版社に公開質問を行うと告知。
★水面下での事情……マイナビ出版がsuimon氏側に付いて解決を行うと言いながら何もしなかったため。

◆8月31日 
・マイナビ出版から3者での話し合いによる解決の打診があったため、橋本の公開質問は中止に。

・suimon氏ツイッター上で報告書の一部を公開。


 ――ここからしばらく日にちが空くが、マイナビ出版は事態の解決に向けて何の動きも取らなかった。

◆9月5日
・橋本、本件に関する連載の内容を告知。

◆9月7日 
・マイナビ出版からsuimon氏に連絡が入る。suimon氏とマイナビ出版等の話し合いの前提として、第三者に話し合いの内容を漏らさないという約束が交わされる。
(よって、橋本が入手できる情報は9月7日以前のものとなる。9月7日時点において千田氏は以前と同様の主張を繰り返しており、マイナビ出版は態度を明確にしていない状態であった。)

◆9月8日 
・「現代将棋新定跡をめぐる問題に関して」の第一回をnoteに掲載。


2.まとめ

 私たちは、22日のsuimon氏のツイートにあるように、うちうちでの穏便な解決を模索し続けた。

 25日に伊藤弁護士が専門家の立場から連続ツイートを行ったことで流れが変わったことを感じた。ただでさえ不可解であったマイナビ出版の詫び文に一分の根拠もなくなってしまったのだ。

 それでもsuimon氏は穏便な解決を求め続けた。しかし、千田氏は本件に関して沈黙し、マイナビ出版は放置しようとした。結局、橋本が8月30日にツイートを行ったことで渋々話し合いに応じたという感じである。この時点で真摯な対応がなされていれば本連載を急ぐこともなかったが、再び放置されることとなった。
 9月5日に橋本が本連載の内容告知を行ったことで再びマイナビ出版からsuimon氏に連絡があり、9月7日から本格的に話し合いに入った。

 私の認識では私がsuimon氏から本件の情報が取れるギリギリの9月7日時点で、千田氏は2つの主張(パクり、参考文献の問題)を取り下げておらず、マイナビ出版社は自分たちの立ち位置を明確にしていなかった。

 情勢が変わった時点(8月25日前後)以降でも、マイナビ出版がリーダーシップを発揮して事態を収拾できる機会は何度もあった。結局、外部からの言論がない限り動かず、変わらないことを悟った私は、本連載の開始を早めることにした。

(続く)

<メモ1
 本稿に登場する弁護士の伊藤雅浩氏は、将棋に詳しく、ソフトフェア知財を専門のひとつにしているという稀有な人物である。私は伊藤氏の見解が、本件に対する見解として最も信頼できるものだと考える。
 後の回で、棋譜の著作権、手順の著作権、定跡ファイルの著作権について考察していくが、伊藤氏のツイートを大いに参考にしたいと思う。

<メモ2>
 第一回、第二回の論点の補強として、伊藤氏のツイートを貼っておいたほうがよいですね。今から追加します。

<メモ3>
 9月7日以降の交渉状況は入手していないが、suimon氏がツイッター上でマイナビ本の話をしていたりするので、うまくいっているんじゃないかな、と推測している。単純に著者の先生を尊敬しているだけかもしれないが……。

<メモ4>
 有力棋士への忖度もあったと思うが、マイナビ出版の担当者が定跡ファイルがどのようなものかについて全くの無知だったのではないか――という話もある。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

54

橋本長道

現代将棋新定跡をめぐる問題に関して

「コンピュータ発!現代将棋新定跡」(suimon マイナビ出版)に対してプロ棋士・千田翔太六段が抗議を行い、マイナビ出版が詫び文を出した事件の経緯と論点を綴っていきます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。