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サイアノ和紙作家雑記vol.35『あおい寫眞館』のプレイベント開催


8/29に西会津国際芸術村にて、ポートレイト撮影と青写真づくりをする体験型写真館イベント『あおい寫眞館』を開催した。今回は僕、山田谷直行がつくる写真を担当し、撮影は福島県須賀川市のシロヤマ写真館さんが担当。うまくいったりいかなかったり、いろいろあったけれど、本当にやってよかったと思っている。



○笑顔が絶えないフォトセッション!


シロヤマ写真館のフォトグラファー、ちかさんとかなさんがつくる現場の雰囲気は、とにかく温かくて楽しくて笑いが絶えない。撮られる側も二人が発する空気と同調しはじめて、本当の笑顔が滲み出てくる。さらに撮る側、撮られる側だけじゃなく、その場に居合わせた人たちみんなをハッピーな空気で包み込む、マジですごいフォトグラファー。そのハッピーな空気感が滲み出た撮影画像を、今度はみんなでセレクトする。このときの温かな雰囲気がまたいいし、撮りたてホヤホヤをすぐに確認できるのは、デジタルの良さだなぁ~と改めて実感した。


○写真づくりを一緒に体験

撮って選んだあとは僕が担当する青写真づくり。1842年に発明された、サイアノタイプという古典写真技法を使い、旧会津藩の御用紙だった出ヶ原和紙に焼き付ける。まず撮影した画像データを僕が編集して、デジタルネガを出力する。ゲストにはその間に感光する薬品を和紙に塗ってもらう。和紙全面に塗ってもいいし、あえて余白をつくったり、刷毛目を残したり。この作業はとても個性が出るポイント! そのあとドライヤーで乾燥させたら、デジタルネガを和紙に重ねてUVライトで焼き付ける。

紫外線に感光すると青色に焼けるサイアノタイプ。日本では青写真などと呼ばれていた

・焼いて洗って乾かして!

UVライト照射開始から今回は約20分で焼き付け完了。ただこの状態ではまだ薬品も残っているので、イメージがハッキリとしない。水道水で洗い流すと徐々にイメージがあらわれ、さらにオキシドールをシュシュっとスプレーしたらいよいよ歓喜の瞬間❗️青と白の階調でイメージが浮き上がる。そのあと干して乾燥してから、アイロンをかけてシャキッとさせたら、僕とシロヤマ写真館とゲストの共同制作の結晶、青写真の完成。

焼き付け後に水洗、乾燥を終えていよいよ完成。デジタルとアナログを融合させた古くて新しい青写真

○モノとコトを写真に宿す

シロヤマ写真館の二人のフォトグラファーに、被写体となるゲストが同じ時間と場所を共有してつくりあげた今回のフォトセッション。そこから生まれた撮影画像はまさに共同制作の産物であり、とても意味のあることだと思う。それだけでも素晴らしいのに、あおい寫眞館ではモノとコトを和紙に宿すためのつくる写真をプラスする。

・じぶんにとって大切な一枚

青写真に限ったことではないけれど、モノとして写真を遺すことで子々孫々までじぶんの姿を伝えられる。家系図などの文字だけよりも、リアリティは間違いなくあるハズ。青写真を目にするたびに、あおい寫眞館での記憶もきっとよみがえる。撮られるだけじゃない、じぶんで作業をするから、その記憶はより一層深いものになると思う。副産物として約180年前の技法と独自の風合いを持つ手漉き和紙にプリントすることで、いつ頃撮った写真なのか? よい意味で時代感が曖昧になる。時間が経てば経つほど、ときを封印したかのような印象が芽生えてくる。あおい寫眞館でしか遺せないモノとコト。記録と記憶が詰まった、じぶんにとって大切な一枚をつくりあげられる。


○なぜ和紙にプリントするのか?

正倉院には奈良から平安時代の和紙がたくさん残っており、もっとも古い和紙は大宝二年(702年)。じゃあ青写真が1,300年以上持つのか? 正直言って、それはわからない。でも昔ながらの製法でつくられた和紙が現代まで遺っているのは、保存性の高さの裏付けでもある。デジタルカメラで撮影した画像データは、PCやスマホで手軽に見られてとても便利。でも、データが消失したり、将来的に規格やデバイスが変わったら見られなくなる可能性も否定はできない。だからこそ、人類史上最長の記録メディアとも呼べる紙に、遺すことが大切なんじゃないだろうか。

・世界で唯一の和紙に個性を刻み込む


あおい寫眞館が使う和紙は、旧会津藩の御用紙だった福島県西会津町の出ヶ原和紙。秋から冬に地元の楮の木を刈り取り、手作業で材料をつくり漉いた和紙を使用する。ちなみに今回使用した和紙は、刈り取りから材料づくり、紙漉きまで僕が行ったもの。一般的な写真印画紙に比べたら、シワがあったり、皮や繊維が目立つ紙もある。だからクリアでキレイな写真では決してない。でも、言い換えれば、一枚一枚表情の違う、ユニークな和紙。そこにじぶんで薬品を塗り焼いて青写真に昇華させることで、本当に世界で唯一の存在になる。あえて和紙を使うのには、一枚一枚表情の違う手漉き和紙に、ひとり一人個性の違う個人の記憶を刻み込みたいと思ったからである。

美術家の滝澤徹也氏が主宰する出ヶ原和紙工房に通い、紙づくりを覚えている。材料づくりや紙漉き、そのあとの作業など、たくさんの工程を経て和紙はできあがる

○あおい寫眞館の価値


趣きのある個性的な写真を提供するのは、あおい寫眞館の大きな特徴。でも、手漉き和紙や古典技法を使うのはあくまで手段の一つ。あおい寫眞館が提供する本当の価値は、時間を共有する過程で生まれる物語。受け身じゃなく、撮影と青写真づくりに参加するからこそ生まれる価値。撮られて選んで塗って焼いて洗って乾かして、青写真が出来上がった瞬間のゲストの表情をみたときに、僕はそう確信した。この笑顔をもっと広げていきたいと思う。

次回は2024年1月13日(土)、14日(日)に、今回ご協力頂いたシロヤマ写真館(福島県須賀川市)。2024年1月19日(金)・20日(土)には、momocamera(神奈川県茅ヶ崎市)にて開催決定。そのほかでも定期的に開催しながら、全国に広げていきたいと思っている。体験型写真館イベント『あおい寫眞館』で、じぶんでつくる写真をぜひ体感して、青写真に記録と記憶を遺してもらいたいと願っている。





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