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サイアノ和紙作家雑記vol.34『遺すべきモノやコト』

あおい寫眞館で使う和紙をつくるため、
現在、西会津町に滞在中。
到着した日の夕方、
約1キロの蒸して皮を剥いで
自然漂白して乾燥した楮を水に浸す。


楮を煮ている。段々柔らかくなって、紙に近づいてくる


翌日、楮をよく洗い、
鍋で約2時間、コトコト煮る。
そのあと、付着した黒い斑点や
チリと呼ばれる皮を丹念に取り除く。
すべて終えたら棒で材料を叩いて
紙漉きに使う材料の完成。
丸一日、朝から晩までかかった。

僕が通う出ヶ原和紙工房は
地元に自生する楮の木を刈り、
口伝や文献からこの地域の
紙づくりの製法を学んで
いまも継承している。
他の地域のやり方ではなく、
この土地のやり方にこだわった
紙づくりをやっている。
紙づくりを通して
先人たちの文化を遺している

一方、西会津はとても美味しい
お米が取れる町。
それを未来へつなげるために、
地元の有志と農家、IT企業などが連携して
「石高プロジェクト」なるものが動き出した。

全容をまだ把握できていないが、
興味が湧いたので材料をつくり終えてすぐ、
ZOOMでのミーティングに参加した。

中山間地域の米づくりが抱える問題と
石高プロジェクトで解決できるビジョンなどを
学ぶことができた。
大量生産消費社会の弊害や
ポスト資本主義とも呼べるような
ワクワクする内容だった。
農家の方の生の声も聞くことができたが、
その中でも印象に残っているのが、
「持続可能な農業環境を次世代へ受け継ぐ」
戦後、大量に米を供給するため、
効率化を推し進めた結果、
土壌などが疲弊してしまっている。
農家自体も収入といった面を考えると、
次世代へ受け継がれる
魅力ある産業にしなければならない。

とても共感した。
弱いものが淘汰されるのが
資本主義経済かもしれない。
でも、米づくりという
日本の根源とも呼べる存在が
持続できないなんておかしな話。
現状では淘汰されてしまうのであれば、
なんとかするしかないと思う。

ひとり一人ができることは
小さなことかもしれない。
でも、できることを
精一杯やることに意味がある。
和紙づくりを通して
和紙は長く遺るし、
和紙自体を遺すべきだと感じたのと
同じなんだと強く感じた。

弱い存在は淘汰されるのは
ある面では真理だと思う。
ただ半面、遺さなければならない
存在があることも事実だと思う。
失ったモノやコトを再生することは
遺すことよりも大変。
社会経済と文化、芸術がつながって、
本当に遺すべきモノとコトを
表出させるときにきていると感じた。
僕もやれることを精一杯やろうと思った。

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