サンダーバード(1965)お気に入り5エピソード

出会いから30年


国際救助隊の活躍する特撮ドラマ「サンダーバード」を初めて見たのは1992年のテレビ東京系における放送だった。当時筆者は小学校6年生、最初の放送を見た世代である担任の先生が、再放送開始に伴う学習雑誌の特集記事を紹介してくれたことがきっかけだと記憶する。

折しも中学受験を控え、重い気持ちの状況で「サンダーバード」の物語はしばし童心に帰るいわば癒しの時間となり、すっかりハマった。以来30年、子供時代には気付かなかった側面の魅力を感じるなど、見返したい作品であり続けている。今回は2020年に誕生から55年を迎えてなお、日本で愛される名作の私的ベスト5を御紹介。なお、第1話「SOS原子力旅客機」は別格なのであえて外している。話数はNHK放送時の数字を適用した。

「サンダーバード」のあらましと筆者の見方はこちらを参照。

第5話「世界一のビルの大火災」

初めてきちんと見たエピソードゆえ思い出深い。些細なきっかけ、安全機構の不具合など現実世界の大事件で起こりうる事柄が連鎖する。国際救助隊の情報収集能力、まず先発隊を送り、何が要るか取りまとめてから後発隊が続く出動体制のスムーズさ、現場と本部の確かな連携で難しいミッションを成功させるさまが端的にまとまっている。

第7話「原子力機ファイアーフラッシュ号の危機」

第1話の続編的エピソード。最初の墜落事件後の会議風景はどこかの国でもよくある風景だが大臣がきちんと収めるところは違う。2度目の墜落事件後に4号がファイアーフラッシュの乗員を救うプロセスは後年の映画「エアポート’77」を彷彿とさせる。普段は留守番の多い四男ゴードンが海と空で大活躍するエピソード。最後の見せ場もやはり第1話の発展形。エピローグの落ちは笑える。

第14話「火星ロケットの危機」

話の流れがスムーズなゆえに気付きにくいが、ロケットが登場するエピソードなのに事件自体は「宇宙」と殆ど関係ないのが面白い。ジェリー・アンダーソンは「サンダーバード」より前に「宇宙船XL-5」を生みだしていたことに加え、未来の世界では宇宙探査と宇宙旅行は特別な出来事ではないと想定したので「サンダーバード」における「宇宙」の扱いはどちらかといえば脇役的。
本エピソードでは英国滞在中のブレインズが事実上救助活動の指揮を執るのだが笑っていいのか分からない扱われ方になってしまう。

第23話「恐怖のモノレール」

事件が表面化する前に国際救助隊が潜入捜査を行い、犯罪組織を壊滅に追い込むエピソード。「救助活動も大事だが事件を未然に防ぐのはもっと大事だ。調査大歓迎だね」というジェフ・トレーシーの言葉は現実世界の色々な人間に聞かせてやりたいと思う一方、国際救助隊が秘密組織である必然性を実感する。恐らく普段から世界中の秘密隊員を使い、怪しい会社やプロジェクトを探し出し、抹殺しているとみられる。救助活動の向こう側にある国際救助隊の「裏の顔」を実見できるエピソード。また前述の第14話でも感じるがブレインズの国際救助隊、というよりトレーシー家への忠誠心は強い。孤児の自身を引き上げてくれたジェフ・トレーシーに対する恩義を忘れていないのだ。

第26話「海上ステーションの危機」

家族組織ならではのユーモアに火と水の重なる洋上の大事件が絡む奥行きの深いエピソードで「サンダーバード」の集大成といえる内容。
印象深いのは最初の事件後にジェフ・トレーシーが長男スコットを叱る場面。「これは国際救助隊の(出向く)仕事ではない」。つまり何でもかんでも出動するのではなく「国際救助隊でなければ解決できない」事件に限って活動するのだと。安売りしないのはブランドの価値を守る上で重要だが、ある意味「断る勇気」を要する。
彼らが裕福で救助活動を生活の糧にしてはおらず、仮に依頼が来なくなればそれはそれで何事もないんだから結構な話と割り切れるからこそ達しうる境地。また一連のやり取りから救助には行かず、5号などで日夜収集している情報を提供することで間接的にサポートした「語られざる事件」の存在も推測できる。
本エピソードでも事件の背景になる出来事を通信の傍受で事前に掴んでいるように情報収集能力こそ、国際救助隊の本質だし、人命のかかったミッションや利害の錯綜する事態を解決するには情報収集と分析能力こそが重要だと我々に教えてくれる。

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