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ニワトリを巡る物語

村のバザールへ行くと、コケコケ~ッとにぎやかな声がするお店が必ずある。
ニワトリ屋さんである。

イスラム教徒(豚肉を食べない)が大多数を占めるバングラデシュにおいて、ヒンドゥー教徒(牛肉を食べない)もキリスト教徒(豚肉を食べる)も仏教徒も、宗教を越えてみんなが一緒に食べられる肉は鶏肉だけである。

そのため、村のあちこちをニワトリが散歩しているのは日常風景であり、自転車にニワトリをぶら下げて持ち帰る風景も日常的だ。

村の道を闊歩する立派な鶏。


忘れてはならないのは、ニワトリを美味しくいただくために「さばく」という段階を通らなければならないということ。
バングラの村には日本のようにきれいにパックされた鶏肉が売っているわけではないので、当然のように各家庭でさばいている。
こどもたちも自然と手伝い、いのちをいただくことは生活の一部だ。
そこに、余計な喜怒哀楽はない。
生きるために、淡々と、執り行われる。

バングラ風チキンカレー。私の得意料理。

だが、淡々とさばくのはニワトリのいのちを軽視しているからではない。

それは、新鮮なチキンのトルカリ(カレー)として美味しくいただくためなのである。
鶏の足も内蔵も、食べられる部分はすべて食べ尽くすことで、いのちに感謝し享受している。
それが古代から脈々と続いている生きていくことの一部なのだ。

今日もバングラの人々は宗教やいろんなバックグラウンドを取っ払って「美味しい!」を共有できるニワトリを調理し、とっておきのパーツ(ニワトリの足)を客人のお皿によそっているだろう。





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