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ピオレドールとアルピニズム

平出さん、中島さん、ピオレドール受賞おめでとう!

2020年8月10日(日本時間22:00)、2019年の登山51隊のノミネートリストから日本の登山隊が選出されました。

2019年夏、平出和也氏=中島健郎氏がパキスタン・カラコルム山群のラカポシ(7,788m)に未踏の南面ルートから挑んだ登山です。

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フンザよりラカポシ7,788m(2000年8月1日撮影)

ラカポシの山名は、地元ギルギッド・ドゥマニ地方で「雲の生まれる山」「雲の首飾り」の意味。

6月3日 日本〜イスラマバード(エアチャイナ)
6月6日 イスラマバード〜ギルギット道路1,500m
6月7日〜9日 ラカポシ南面偵察
6月16日 BC 3,660m設置
6月17日〜19日 順化と偵察
6月20日〜26日 BCに滞在
6月27日 BC〜C1 5,200m
6月28日 C1〜C2 6,200m
6月29日 C2〜C3 6,800m
6月30日~7月1日 C3に滞在
7月2日 C3〜ラカポシの頂上7,788m〜C3
7月3日 C3〜BC
7月5日 ギルギットに到着
7月7日、空路でイスラマバードに到着
7月9日 イスラマバード(エアチャイナ)を出発
7月10日 日本に帰国

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当初目標の山はティリッチミール主峰7,708m。チトラルで登山許可を待っていましたが、結局許可は出ず。

それから代わりの山を探し、フンザから見える美しい峰、ラカポシの南面ルートを偵察。

フンザは平出氏が頻繁に訪れる故郷であるかのような場所で、フンザから見た山を登ることがライフワークのようになっていて、その中でラカポシは最も目立って魅力的でした。

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最も難しい登山ルートは? 南面は手つかずのまま。過去に偵察されてはいましたが、誰もルートを見つけることができていません。

Piolets d'Orピオレドールは登山界のアカデミー賞と例えられますが、平出氏は3回目、中島氏は2回目の受賞になります。

なお、ピオレドール生涯功労賞 - "The 12th Walter Bonatti - Piolets d’Or Lifetime Achievement Award" は、フランス人女性クライマーの Catherine Destivelle(60) に贈られます。

2020年の表彰式は、昨年に続きポーランドのロンデック・ズドゥロイで9月11日~22日の間、第25回ロンデック・マウンテン映画祭の間に開催されます。

COVID-19の新たな感染拡大も想定して、入場制限、移動の制限など、いくつかの制限がありますが、昨年より長い時間をかけ、Piolets d'Or は縮小することなくオンラインイベント等を兼ねて開催が予定されています。

10年以上続いているピオレドールの選考イベントに続き、2019年12月、「アルピニズム」がユネスコの無形文化遺産リストに追加されました。ロンデックでのパネルディスカッションで、この認定が今後どのような行動に移されるのか興味のあるところです。

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2017年8月22日、平出氏と中島氏は、パキスタン・カラコルム山群のシスパーレ7,611mを北東壁から初登攀に成功し、第26回ピオレドールを受賞(東京新橋にて2018年11月24日撮影)

Piolets d'Or アワードの目的とは

世界中で、今年最高の登攀についての意識を高めること。冒険のセンス、世界の素晴らしい山々で、登山芸術の背後にある勇気と探検の感覚を祝うこと。

ピオレドールは、登山の豊かな歴史からインスピレーションを得ています。 それらは、パートナーシップと連帯する感覚を共有できるお祝いであり、個人または集団の成果に報いるものです。

現代の登山では、登頂よりも、登攀スタイルと手段が優先されます。膨大な財政的および技術的リソース(酸素ボンベ、固定ロープ、高所ポーター、いわゆる「パフォーマンス向上」物資...)と大人数、高コストで頂上に到達する登山は対象外です。Piolets d'Or は、最小限の物資で、経験に基づいて、創造力に富んだ革新的な新しいルートにスポットを当てています。

パフォーマンスを評価するための基準

審査員は、登山者の国籍に関係なく、次の基準に照らして、ポイントごとに、および全体を通して、これらの登攀を評価します。

● 登攀のスタイル。
● 冒険の精神。過去に誰も登っていないルート、創造的で革新的なアプローチ。
● コミットメントのレベルと自己完結型登山。
● 高度な技術力。
● 客観的な危険を考慮したルートの適合性。
● 効率的でエコなリソースの使用。
● これらリソースの使用に関する透明性。
● 人、クライミングパートナー、他チームのメンバー、ポーター、ローカルエージェントへの尊重。
● 環境保全の尊重。
● 同じような経験や冒険を楽しむ可能性を残すことで、次世代に続くアルピニストを尊重。

「アルピニズム」がユネスコの無形文化遺産に登録

フランス、イタリア、スイス3ヶ国の「アルピニズム」が、人類の無形文化遺産として2019年、ユネスコの代表リストに記載されました。

アルピニズムは、岩や氷雪の多い地形で、四季を通じて、高い山の頂上や壁を登る「芸術」です。

これには、必要な技術、道具、ピッケルやアイゼンなど特殊なギアを使用した、身体的、技術的、知的能力が含まれます。

アルピニズムは、山岳環境の知識、実践の歴史と関連する価値観、特定のスキルで構成される共有文化を特徴とする伝統的な身体的実践です。自然環境、変化する気象条件、自然災害に関する知識も不可欠です。

アルピニズムは、美的側面にも基づいています。アルピニストは、エレガントなクライミング動作、景観の熟考、自然環境との調和に努めています。クライミングは、永続的な痕跡(自然物を傷をつけたり、固定ロープや支点など)を残さない、クライマー間で(遭難時の)支援協力の義務を負うなど、各個人のコミットメントに基づいて倫理原則を動員します。アルピニストの考え方のもう1つの重要な部分は、アルピニストを結ぶロープに代表されるように、チーム精神の感覚です。ほとんどの地域メンバーは、アルプスのクラブに所属しており、アルプス登山の経験を世界中に広めています。クラブは組織化され、グループ登山や、有用な登山情報を提供し、さまざまな出版物に貢献し、アルピニスト文化の原動力となっています。 20世紀以降、3か国すべてのアルパインクラブは、さまざまなレベルでの頻繁な2ヶ国間または3ヶ国間で会議を通じて関係を築いてきました。

ALPINISM は2019年12月11日、ボゴタで開催されたUNESCO Inter-ministerial General Assembly 総会にて厳格に宣言されました。

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