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川治温泉 まさか!のひとり旅②

川治温泉の岩風呂に衝撃を受け、宿に入る前に、だいぶ時間があるので、温泉街を歩きます。

温泉街の極みの定食屋

露天の岩風呂の上流に向けて、散策路があり、対岸には、いくつかの源泉があります。よく見ると、過去は、通行できたようですが、落石の危険があるか、今は立ち入り禁止。

手前に小さな堰があり、左から子持の湯、不動の湯、元湯という看板
右上のホテルから「元湯」に向けて階段が二本 ブロック塀で覆われた部分も元は岩風呂?

薬師の湯のおばさんが、「露天風呂が上流にあったけれど、どんどん下に降りてきた」というのは、この辺りでしょう。今は堰があるので、河床が高くなっていますが、昔はもっと水面が低かったようです。
昼食のため、温泉街を目指して、少し戻ります。

階段の上に「ラーメン」屋を発見
鄙びた定食屋さん 迷わず入ります
売りは1kgのメガ盛り焼きそば

温泉ラーメンにも惹かれましたが、メガ盛りの焼きそばがお勧めなようなので、普通の「焼きそば」700円を注文。

昔ながらのソース焼きそば

饒舌なおばさん店主によれば、かつては夜12時まで、営業しており、夜にも露天風呂に入りに来るお客さんが絶えなかったとのこと。
鬼怒川に負けず劣らずだったようです。
しかし、今では、ホテルの買収があちこちあって、名前が二転三転するから、覚えられないよ…、とも。
「鬼怒川と比べたら静かで、それもまた良いんじゃないですか」と聞けば、
「静かすぎて、怖い」と(^^;

川治に来た時には「福助屋」覚えといてください
湯の音が聞こえてくる福助屋の小路

温泉街散策、川治温泉を一巡

チェックインまで時間があるので、温泉街を散策。旅館・ホテルはまだまだ数はあるようですが、実際は如何に!

創業大正15年 老舗旅館の一つ「柏屋」

近くの蕎麦屋も閉業、小さな喫茶店一つ。伊豆長岡も同じようでしたが、温泉街となると、コロナもあり、厳しい現実です。

食事処は3か所あるか、どうか
こちらで温泉まんじゅう購入 川治温泉ではもうこの一軒だけ
一柳閣 こちらは伊東園ホテルズグループ
かわいらしい美容院、健在!
こちらでコロッケとメンチカツを購入 名物コロッケ!
「つもりちがい十ヶ条」 あるある
ここから地図では「温泉街」となってます 

温泉街とは言え、手前の二つのホテルは一軒は閉鎖、一軒は改装中。
ところで、先ほどのお肉屋さんのコロッケ歩きながら、何種類か頂きます。ニンジン・玉ねぎも入って、ホクホク。近所にあったら、毎日行くかも。

ジャーマンコロッケ(カレー風味、ソーセージ入り)

男鹿川を挟んで二つのエリアに温泉街がありますが、こちらは、温泉街というよりは、温泉街風集落という雰囲気。

お店と民家が点在 かつては店舗だったであろう空き地や空き家も多数
こちらは外資のホテル 星野リゾートも一軒ありました
唯一の生鮮食料品店か? 「サルが入ります。扉を閉めてください」
もう空いている店が一軒もない…
ということで、「かわじい」が示す通り来た道を戻ります

この間、街を歩いていた観光客は片手に入るくらい。前を行く星野リゾートから出て来た女子旅二人組は、先ほどのコロッケ店で、コロッケを食しています。

イザベラ・バードが見た川治温泉

再び、川治温泉の元湯、源泉の見える場所に戻って来ました。こちらには足湯が二か所あり、早速浸かります。足湯の壁には、過去の川治温泉の様子が掲げられています。

対岸の源泉エリア が一望できる「足湯」
温度はぬるめですが、寒いので、冷えた足にはちょうど良し

そう言えば、コロッケ屋で見つけた川治のPRチラシ。

イギリスのイザベラ・バード シーボルトの息子もこの地を訪ねています

そう、確かに鬼怒川に沿って、北上していくイザベラ・バードは、知っていましたが、この地で一泊しているのでした。イザベラバードという女性、明治の初期にまだ外国人が足を踏み入れたことのないところまで旅をしたのですが、その記録は「日本奥地紀行」にあります。
彼女は明治11年6月26日にこの地を訪れているのですが、当時は一軒の温泉旅館、その名も「近江屋」(現リブマックス・リゾート)ということで、見上げれば、目の前のホテルです。

クリーム色の建物が今のホテルの一部 敷地はかなり広そう

足湯に掲げてあるかつての写真は以下の通り。

近江屋から階段が延びて河原の岩風呂に繋がっています 一つ上の写真とほぼ同じ位置
年代がもう少し古そうな写真 川にも浸かっている!(いずれも年代不明)

イザベラバードの日本奥地紀行には以下の通り。

川沿いには皮膚病に苦しむ人がおおぜいやってくる温泉が湧いている。これは粗末な階段を下りきったところにある小屋の中にあるのだが、入口には戸が付いていない。私はたくさんの男女が湯に浸かっていたので、湯の温度を確かめることができなかった。人々は日に四回湯に入り、一回に一時間かける〔という〕。
(注)当時まだ小屋掛けだった川治温泉。明治7年(1874)の「温泉冷泉取調通達」によれば同3年に66人だった浴客は同年4年には120人、同5年には292人と増加傾向にあり、バードの記述と符合する。大正前期以降の鉄道整備によって大温泉場に発展。

完訳 日本奥地紀行1 イザベラバード(金坂清則 訳注)

ということでここがまぎれもなく、川治温泉。湯治場の様子を初めて見たイザベラバード、混浴に当惑したのでしょう、温度を測りたかったが、近づけなかったようです。
明治23年の温泉の記録では、温泉の温度は46℃でやはりぬるめ。1回1時間で、アルカリ性単純泉にゆっくり浸かっていたであろうことも想像できます。

今でも、階段跡のようなものは確認できます 二本ある?!
こちらは昭和20年代中盤? 湯舟も広く、水面がかなり下にあります
これは確かに岩風呂!(温泉にっぽん 円尾敏郎 ワイズ出版より)
別の角度からだと長い階段は鮮明(同上)

岩風呂の位置が下がっていったということでしたが、お風呂の位置も、湯舟の形も、変化があったようです。

投宿は「登隆とうりゅう館」

入口はいたって質素   看板は沿線沿いに大きく「天然温泉 登隆館」

15時過ぎ、ご主人が暖かく迎えてくれて、お部屋まで案内してくれました。

川沿いの和室 先ほどの元湯も下流に見えます

館内は、意外に広く、現在どこまで使用できているかは分からないですが、かつての中小企業の慰安旅行などには重宝されたのではないかと思うような規模です。
お風呂に向かいます。「ぬるゆ」で推している温泉とのことで、加温は16時から始めので、ぬるゆを楽しみたい場合は、16時前にどうぞ。

大浴場は基本男性ですが、19-21時は女性と入れ替わり
源泉は34.5℃ この季節だとちょっと厳しい 加温されたお湯が出ている所に座り込む

源泉は温めているとは言え、お湯はもう文句つけようがない泉質です。歴史的に湯治場で知られているのは、伊達じゃないと云ったら失礼、まさに本物。今となっては有名な温泉地から、その名が外れるとしても、間違いない泉質。アルカリ性単純泉の中なら、個人的にはTOP5に入ります!

小浴場はこんな感じ 大浴場もでしたが、湯舟からはお湯が溢れています

さて、夕飯は各自の部屋へ配膳形式。お膳が3つ並びます。豚の焼肉のようなものはちょっと変わったメニュー、地のモノとしては、鮎にキノコと里芋の味噌煮込み。

もつ煮風の鍋は地元の味というところでしょうか 体温まりました!

配膳の車にはそれなりの数、お膳が乗っており、聞いたところ、
「地味に混んでおります」ということで、お風呂では誰一人会いませんでしたが、結構なことです。
また、「外は、雪がちらついて来ました」と。
どおりで、寒いわけだと膝を打ちながら、美味しく頂きました。

雪は見えず…、明日に備え、就寝

川治温泉から下今市へ

日が昇る前に目覚め、お祈りの後に「温活」

朝、電車がないため、朝食は抜きにしてもらい、7時過ぎに駅まで、送迎していただきました。宿主人に聞けば、川治も鬼怒川も湧出量が減っているようで、季節性だけではないようです。理由は分かりません。登隆館の源泉ももいくつか分けているようで、「薬師の湯のお湯も、うちから引いているんですよ」とのこと。登隆館の大浴場に浸かっていたら、そんなことも分からないくらい潤沢で、今思えば、贅沢でした。

地方ローカル線とは思えないゴージャスな駅舎

少し時間があるので、駅からすぐの小網ダムを見学。主には発電用に使用されています。ここから上流への遊歩道もあります。

小網ダム 重力式、堤高23.5m 
静かな湖面は鏡のよう
ホームからもわずかにダム湖が見えます
新藤原行 乗車人数は数名
車内はきれいなボックスシート

龍王峡を抜けて、あっという間に、新藤原駅。こちらは、東武鬼怒川線の終着駅なのですが、野岩鉄道ができてからは、様相は激変ということで、かつての終着駅は、どんな感じだったのか。

鬼怒川線は東武電車の6,7両のロングシート 
1番線には車止め 駅舎も新しいようです
昭和の終着駅 関東編(鉄ぶらブックス)

なんとものどかな昭和の風景です。車内から覗くと、少しだけ名残が感じられます。

手前には霜が降り、寒さにめげず柿がまだたわわに残っています
朝日を浴びて、右岸の山々もまぶしい
列車は慎重に鬼怒川を渡ります 車窓としてはこの辺りが鬼怒川の見どころ
もうすぐで下今市ですが、林業の会社も目に留まります
大谷川を渡ると西側の視界が開け、日光の山々(男体山、大真名子おおまなこ山、女峰山…)
SLの発着駅だけあり、イメージ保ってます

宇都宮で会いましょう

ここから、JRの今市駅まで徒歩10分弱。駅舎は新しいですが、跨線橋は下今市駅に負けず劣らず、男体山を眺め、イイ跨ぎ方ですW

味わいある跨線橋 奥には日光連山
JR日光線で宇都宮まで

宇都宮駅、降りたのは初めて。そうそう、ココは例の新チンチン電車が、通ったばかりでした。早速、コンコースを渡り、拝見。

宇都宮ライトレール 2023年8月開業 新規路面電車としては75年ぶり!

ドイツで走ってそうなモダンなスタイル。
駅で、旧友と合流、聞けば、工業団地に向かうトラックや、通勤でも、かなり市内も混雑していたようで、これができてから、緩和されたようです。

新鮮! 開業から乗客数も絶好調らしい

いろいろと話しながら、今日はもう、まさかないだろうと、思いきや、
昼食は、宇都宮餃子でもなく、まさかのハワイアンレストラン!

お出迎えの一言は、「アロハ~」
トロピカルなジュースに肉料理「ロコモコ」

十数年ぶりの再会、お互いの身の上話し、家族の話、変わった部分もあれば、変わらない部分もあり…。お互いキリシタンの繋がりで、離れていても、かけがえのない友がいることは本当に喜ばしきことです。

日は傾いて、帰路に着きました

今年ももう残すところあとわずか。
やり残したことないか、一年振り返りつつ…。
師走の慌ただしい中、読んでいただき、ありがとうございます! (2023.12.2-3)

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