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その図書館でほんとに地域活性化できる?

全国に図書館が増加傾向で、年100万人超が訪れるテーマパーク級の集客力を誇ったり、貸出冊数を10年間で84%伸ばす図書館もあり、地域活性化に繋がっている、という記事。

僕も本が好きなので図書館はよく利用するし、
新しくてカフェのようなオシャレな図書館が増えて地域活性化につながるのは嬉しい。
実際、僕の隣町にも2年前の2021年に35億円かけて最新デザインの図書館が開館し、確かに利用頻度が増えた。

住民(利用者)の立場では嬉しい反面、
地域の財政的な(費用対効果という)視点ではどうなんだろう。
と疑問に思ったので、調べてみました。

下記は、記事にもあった高知県梼原(ゆすはら)町立「雲の上の図書館」。

世界的な建築家の隈研吾氏が設計を手掛け、建設費約12億円で18年に開館した高知県梼原町立「雲の上図書館」。地元産木材をふんだんに使った内外装が特徴で、集中力を高めてくれそう

確かにこんな図書館があったら住民としては嬉しい。
一方、梼原町の人口は約3000人で、近隣住民にも開放しているとはいえ、利用状況は下記の通り。

文部科学省データ

年間貸出冊数が18,100冊って、町民一人当たり年間6冊。
それって、成果(税金の使い方)としてはどうなの?

記事にもある通り、図書館数が増えるのと反比例して、書店数は右肩下がり。

日本経済新聞

つまり、図書館がなければ売れていたかもしれない本が、売れなくなってる。
「雲の上図書館」の例でいくと、
人口3000人、税収70億円の町が、12億円かけて図書館を作り、周りの書店を潰して、雇用や税収を減らしている、とも言える。
建てて終わりではなく、維持管理にもコストはかかる。
多額の税金を図書館に使った反面、他の公共工事に使える予算は減るはず。

市長や町長の立場から考えると、
道路のインフラ修繕などの地味な税金の使い道をするよりも、
「オシャレな図書館を建設」した方が目立つし功績として評価されやすい。
住民としても、自分の地域にオシャレな図書館ができれば悪い気はしない。
お互いWinWinな関係で、図書館が増える理由は理解できる。

でも、(特に人口の少ない地方に)その金額で建てる図書館が本当に必要なの?
そこまでして作る図書館の存在意義ってなんだろう。
図書館にオシャレさは必要?
収益を生まない図書館の評価基準って?
買う本と借りる本の境界は?


色々考えた結果、個人的な意見としては、

  1. (建設費だけでなく、今後40〜50年の維持管理費や、人口減による税収の減少も考慮した上で)税収に十分余裕があるなら、オシャレな図書館を建ててほしい。

  2. もし余裕がないなら(地方都市の大半がそうだろうけど)、他の事業との優先順位を考え、図書館という箱(建物)より中身(蔵書)に予算をかけて、本を充実させて欲しい。余裕がないのに無理して建て、多額の負債だけが残るようなことになると、地域活性化どころか衰退しかねない。

大半の地方都市ではこれからどんどん人口が減っていく。
市や町のリーダーには、「目立つ功績」よりも、
本当に必要な事業にしっかり優先順位を付け、住民にも税金の使い方を説明しながら進めてほしい。

結局は、売上も発生せず採算性を考えない公共物件とはいえ、
一般企業と同様『費用対効果』の目線を持って考えられる人に企画、運営して欲しい、ってことかな。

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