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微生物検査 危機一髪!(36)

[第36回]検査結果の報告が与える影響について考えてみませんか?

山本 剛 やまもと ごう
大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)
大阪大学医学部附属病院感染制御部

(初出:J-IDEO Vol.7 No.2 2023年3月 刊行)

 「微生物検査室の仕事について臨床医はどの程度知っているのであろうか?」と疑問を持ったことがある方はいると思います.微生物検査室の役割は,病原微生物を検出して診断の支援を行うことや薬剤感受性をはじめ治療に必要な情報を一元的に報告することではないでしょうか.
 しかし,実際に検査をしているとオーダー情報に目的菌の記載がないためにどの微生物を検出してほしいのか不明確であったり,目的菌が多く記載され過ぎて検査目的がうまく絞れていないなど感じる機会があります.医師は感染症を診断,もしくは除外診断したいために検体を提出していますが,多くは症候群または病態から結びつくcommonな微生物が出てくることを期待しているのではないでしょうか.一方で,「臨床医と微生物検査室との間でどうしてコミュニケーションがうまくいかないんだろう?」と思ったことはないでしょうか.コミュニケーションエラーは抗菌薬適正使用支援を行う上で大きな障害となるので少しずつ改善したい内容も多いですね.

1.臨床医と微生物検査室とのコミュニケーションエラーはどんなものがあるか

 臨床医と微生物検査室との間で起こるコミュニケーションエラーには,①検体の搬送上のトラブル,②検査オーダーに関するトラブル,③検査結果を口頭で報告する際の聞き違い,④脆弱な検査システム稼働によるトラブルなどがあります【1】[図1].

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