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抗菌薬相互作用整理BOX(11)

抗菌薬相互作用整理BOX(11)
[第11回]シプロフロキサシンでショックに!?
~チザニジンとの相互作用~
山田和範 やまだ かずのり
中村記念南病院薬剤部係長


はじめに

 先日,筆者の施設を救急受診した海外の方の内服薬を鑑別していると,その中にシプロフロキサシン(CPFX)がありました.そのパッケージを確認すると1回500 mg,1日2回服用と記載されていました.わが国では注射薬を除き1日1,000 mg以上の用量で使用するケースはまず見かけませんが,海外の添付文書では,感染症全般に対し1回500~750 mgを1日2回服用するよう記載されています.つまり1日1,000~1,500 mg服用することになります.日本の用量に慣れたわれわれからするとなかなかのHigh Doseですね.
 救急受診した海外の方へは,当院から新たに処方された薬の薬効,用法用量について説明したあと,特に相互作用を起こすものはなかったため,「No drug interaction, no problem, O.K. ? Perfect!」と伝えました.今回は問題となりませんでしたが,CPFXは代謝酵素CYP1A2の阻害剤であり,チザニジンとは併用禁忌となっています.というわけで,今回はCPFXとチザニジンの相互作用について取りあげます.


相互作用のメカニズム

 チザニジンは中枢性筋弛緩薬であり,経口のバイオアベイラビリティは平均21%と低く【1】,初回通過効果を顕著に受ける薬剤とされます.In vitroではCYP1A2が代謝に関与していることが明らかとなっています.服用後1~2時間で効果が最大に達し,服用後3~6時間で効果が切れるため,通常6~8時間ごとに1日3回服用します.
 一方,キノロン系抗菌薬は,その種類によってCYP1A2の阻害作用に違いがみられ,in vitroでは,エノキサシンがCPFXを上回り,CYP1A2の最も強い阻害作用が認められたと報告されています【2】.また,同じキノロン系抗菌薬のオフロキサシン(OFLX)はその影響はほとんどなく,フレロキサシンはCYP1A2への影響は認められませんでした.エノキサシンは現在販売されていないため,市販されているキノロン系抗菌薬の中では,CPFXがCYP1A2の阻害作用が最も強い薬剤といえます.
 この2剤を併用するとチザニジンの代謝が阻害される結果,チザニジンの血中濃度が上昇し副作用が発現することになります.


相互作用による影響

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