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泣く子も黙る感染対策(最終回)

[最終回]日常と非日常をつなぐ医療関連感染予防・制御の体制

坂本史衣 さかもと ふみえ
聖路加国際病院感染管理室マネジャー

(初出:J-IDEO Vol.6 No.1 2022年1月 刊行)

J-IDEO創刊号(2017年3月)から始まったこの連載は今回で30回目,そして,最終回を迎えた.最後に何を書こうか迷ったが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を通してみえた,パンデミックに強い医療関連感染予防と制御(infection prevention and control,IPC)の体制について考える機会にしたいと思う.

パンデミックがもたらす非日常のインパクト

パンデミックはいつ,どこで発生するかわからない.日本のIPC界隈では,長らく新型インフルエンザを想定した準備を行っていたが,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)発生でパンデミックへの備えが試されることになった.国や地域レベルでは,ニーズに合わせた検査体制の拡充,医療資源の集約化,サプライチェーンの維持,デジタルデータの活用,ワクチン開発といった課題がすでにみえているが,医療機関レベルではどうだろうか.
 パンデミックが発生すると医療機関の各部門では,感染予防のために,これまで行っていなかった新しい業務が日常業務に追加される[図1A].こうした非日常対応による負荷(インパクト)を最小限に抑え,事業継続の可能性を高めるには,あらかじめ推奨されるIPC体制を整え,運用しておくことが勧められる.パンデミックの最中に生じる不慣れな業務は,少ないに越したことはないからである[図1B].

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