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Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(21)

[第21回]新型コロナウイルスにより悪化が懸念される感染症の脅威
―コロナ禍における耐性菌の驚異的拡大と感染症コンサルタント―

岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント/北海道科学大学薬学部客員教授

(初出:J-IDEO Vol.4 No.4 2020年7月 刊行)

新型コロナウイルスの現時点でのまとめと雑感


 新型コロナウイルスがこの地球上に現れ,半年以上が経ちました.診断バイアスを考慮した計算でも季節性インフルエンザの10倍以上の致死率があると考えられています.しかし,基礎疾患や年齢などの背景因子次第で軽症から重症まで重症度がきわめて幅のある感染症であり,安心してよいともよくないとも言えないなんとも表現しにくい感染症です.また,感染性に関しても,基本再生産数(R₀)が2程度とインフルエンザと同じくらいのようにみえても,3密などの環境の違いや手洗いやマスクなどの感染対策次第でそれ以上にもなりうるし,それ以下に抑えることも十分可能であるといった具合に,実行再生産数(Rt)の分散が大きいというこれまた対策次第でいかようにもなりうる感染症であることがわかってきました.ところが,ロックダウンや3密回避などやればよいことはわかっていても,経済活動も無視することはできなく,その理想の感染対策が経済的な側面だけではなくこれまでの日常を崩すものであり人間の我慢の限界ともバランスを取りながら,withコロナとして上手に付き合っていくことが求められています.勝ち負けとかではない,他者を排除することではない,まったく新しいものを作るということでもなく,これまでのものを洗練されたものに進化させてともに生きていくものとして受け止めるものとする,それが得意なのが日本人です.“コロナを自分たちの一部とする”,その形づくりは日本人の得意とするところであると自分は考えます.それを創り上げていくスタートラインにいる,そんな状況が今と考えます.

今後のコロナウイルス流行で大切なこと

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