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泣く子も黙る感染対策(29)

第29回]第5波以降のCOVID-19医療関連感染対策考

坂本史衣 さかもと ふみえ
聖路加国際病院感染管理室マネジャー

(初出:J-IDEO Vol.5 No.6 2021年11月 刊行)

 本稿を執筆している2021年10月1日現在,都内では過去最大級の第5波がいったん収束し,緊急事態宣言が解除され,ほっとした雰囲気が街にも医療現場にも漂っている.
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の中心地は各地の都市部であるが,なかでも東京は,その人口規模や密度から感染者数が際立って多く,東京から周辺地域に感染者が「染み出す」という表現で語られるように,地方の感染状況に影響を与えてきた.
 今回は東京における第5波を振り返りながら,都市部の医療現場に今存在するCOVID-19医療関連感染リスクと対策の方向性について考えてみたいと思う.

首都圏における第5波の背景

2021年7月から始まった第5波では,首都圏を中心にかつてない速度と規模で新規感染者数が増加し,40~50歳代を中心とした重症者の救急搬送困難例が相次いだ.しかし,9月以降は急速に収束に向かい,現在の一日当たりの新規感染者数は第4波と第5波の間の時期を下回る水準となっている[図1]【1】.

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