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微生物検査 危機一髪!(35)

[第35回]コロナ検査にまつわるエトセトラ その2

山本 剛 やまもと ごう
大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)
大阪大学医学部附属病院感染制御部

(初出:J-IDEO Vol.7 No.1 2023年1月 刊行)

 前回から新型コロナウイルス感染症の検査に関連した話題を取り上げています.今回も続けて話題を掘り下げていきたいと思います.

Q1 抗原定性検査が薬局でも買えるようになりましたが,メーカーによる差はあるのでしょうか?

A1 試薬の評価や検討内容が統一されていない状況を考えるとハッキリしたことは言えません.

1)検査試薬の感度差は判定に影響するのですか?

 2022年11月8日時点では,厚生労働省で承認を得ている新型コロナウイルス関連の検査は,核酸増幅検査が47,抗原定性検査36,抗原定量検査8,インフルエンザ抗原など他の抗原定性検査とのコンボ定性検査16の合計107もあります【1】.半数は機器が必要な検査試薬ですが,半数は簡易キットでイムノクロマト法を原理とします.
 最も発売が早かったのはエスプラインSARS-CoV-2(富士レビオ)で2020年5月に承認されています.測定原理は核タンパクを標的とした検査キットで,抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体(マウス)を固相化したメンブレンに鼻咽頭から採取した抽出液を滴下し,30分後に判定をするものです.最小検出感度以上の抗原がある場合は,陽性判定ラインが出現し陽性と判定します【2】.臨床検査になるので,どうしても偽陽性・偽陰性が存在しますが,免疫検査は特に測定原理の特徴から考えると偽陽性反応が出やすいため,結果判定する際は慎重になる場面も多くなります【3】[図1].

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