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泣く子も黙る感染対策(28)

[第28回]カテーテル関連尿路感染の予防

坂本史衣 さかもと ふみえ
聖路加国際病院感染管理室マネジャー

(初出:J-IDEO Vol.5 No.5 2021年9月 刊行)

 カテーテル関連尿路感染(catheter-associated urinary tract infection:CAUTI)とは,採尿バッグに接続された膀胱留置カテーテルを使用する患者に起こる尿路感染を指す.医療関連感染に占めるCAUTIの割合は年々低下しており,かつては約40%を占めていたが,近年は10~20%となっている【1,2】.
 膀胱留置カテーテル(以下,カテーテル)は1日の留置につき,細菌尿を起こすリスクが3~10%上昇し【3,4】,30日目にはほぼ100%となる【5】.細菌尿を認める患者の10~25%がやがて尿路感染の症状を呈し,0.4~4%が二次的血流感染に至ると報告されている【6~8】.CAUTIの主要な原因微生物は,Escherichia coli,Klebsiella spp., Proteus spp.をはじめとする腸内細菌科細菌,Enterococcus faecalisおよびその他のEnterococcus spp.,また,Pseudomonas aeruginosaを中心とするブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌である【1,2】.
 CAUTI予防の基本は,①カテーテル挿入・留置をデフォルトにしない,②不要なカテーテルは速やかに抜去する,③清潔に挿入・管理する,の3点である.この3点をよりわかりやすい形で示したのが,米国医療研究・品質調査機構(Agency for Healthcare Research and Quality:AHRQ)が作成したCAUTI予防のための包括的プログラムである【9】[表1].本稿では,このプログラムに沿ってCAUTI予防策を解説する.

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