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Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(27)

[第27回]新型コロナウイルス感染症への札幌市での活動―コロナの次のフェーズを見据えた札幌市のデータ分析―

岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント/北海道科学大学薬学部客員教授

(初出:J-IDEO Vol.5 No.5 2021年9月 刊行)

はじめに

 前回は,感染症コンサルタントとして行政に新型コロナウイルス感染症対策で関わるということ,特にその活動の一つとして,札幌市のデータであるweekly analysisを出していることについて紹介させていただきました.感染症コンサルタントとしてのニーズは医療機関での臨床感染症や感染対策が多かったのですが,感染症は幅広く,新型コロナウイルス感染症の流行で新しいニーズの高まりが出ています.行政に関わるといっても,私は臨床医ですので,ニーズの多くは現場でのコロナ治療に関することや,医療機関や施設でのクラスタ対応といった感染対策もたくさんあります.しかし,特にこのコロナ禍では感染症疫学としてのニーズの高まりを感じます.幸い自分は,北海道大学でMPH(master of public health:公衆衛生修士)を取得させていただき,その後も,PhDコースで継続的に感染症疫学・人口学を研究させていただいています.異動されてしまいましたが,西浦 博先生が指導教官としていらしたため,感染症疫学に関する講座がとても充実していました.いま,その学びをこの新型コロナウイルス感染症の流行で活かさせていただいています.
 札幌市は一つの地方都市ではありますが,市のなかでは日本第4位の人口を持つメガシティー(約200万人)であることや,コロナの冬の季節性(コロナは気温が1℃下がると実効再生産数が0.03上がる)からもどうしても全国的に注目されるような流行の最先端かつ最難関になりがちです.このような特徴を持つ札幌市において,リアルタイムでの流行分析を無視した対策は,多くの住民の命に関わり,そしてその分析と提示はとても重たいものだと日々感じてやっています.このような背景からも,札幌市独自のデータを持続的に出していくことがとても重要で,前回は札幌市のデータ分析活動であるweekly analysisを紹介させていただきました.都道府県単位でこのような詳細データを出しているところも多くはないですが,全国的にみても市ではほとんどないのではないかと思います.さて,今回は前回に続いて札幌市のデータ分析状況をお伝えしたいと思います.特にいま,新型コロナウイルス感染症の対策は大きな転換期を迎えています.その理由はワクチン接種による感染性や重症度の変化です.

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