日本全国感染症ケースカンファレンス道場破り（15）
［第15回］神戸の決戦　その2
（vs神戸大学医学部附属病院感染症内科　西村　翔）
忽那賢志　くつな　さとし
国国立国際医療研究センター
国際感染症センター／国際感染症対策室医長

（前回までのあらすじ）
　忽那と上村は神戸大学の一休さんこと西村に勝負を挑んだが，普段どおり圧倒的に負けた．しかし西村は当直でヒマだったので，暇つぶしにもう一戦延長戦を挑んできたのだった……．

西村「忽那よ……じゃあ二回戦と行こうじゃないか！」
忽那「フッ……望むところだッ！　次こそコテンパンにこらしめてくれるッ！」
上村「先生，ついさっきボコボコに負けたとこですよね？　どこからそんな自信がくるんですか……」
西村「ちょうど退屈していたところだ……次も興味深い症例を用意したぞ．見事診断できたら，岩田教授との面会を認めようではないか！」
忽那「奇遇だな……オレもそろそろこの連載に退屈してきたところだ……岩田教授を倒して，この連載の大団円を迎えてみせるッ！」
上村「いや，先生，ぶっちゃけすぎです」
西村「では始めるぞ」

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症例：33歳，男性
主訴：6日前からの皮疹と発熱
受診の6日前から四肢体幹に皮疹が出ていることを自覚していた．4日前から発熱，筋肉痛が出現し，2日前に皮膚科受診したところステロイド軟膏が処方された．しかし，その後も発熱と皮疹が改善しないため神戸大学医学部附属病院を受診した．
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忽那「発熱，皮疹か……オレの得意分野だな」
上村「先生，それ前も言ってましたけど結局診断できませんでしたよ」
忽那「今度こそいける気がする……大丈夫だ，上村，オレを信じろッ！」
上村「何一つ信じられませんけどね．発熱，皮疹といえばやはり今流行っている麻疹や風疹を考えたいところですね」
忽那「まあ普通は麻疹・風疹は気道症状を伴うものだがな．しかし，たとえばワクチン接種歴のある患者における修飾麻疹なんかは気道症状を伴わなかったりするからたちが悪いよな」
上村「あとはパルボウイルスB19感染症とかですかね……．海外渡航歴があればデング熱やチクングニア熱も鑑別にあがりますね」
忽那「何か薬剤を飲んでいれば薬剤熱も常に鑑別にあげないとな」

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特記すべき既往はない．普段から内服している薬剤も特にないという．薬剤や食物のアレルギーもなく，喫煙，飲酒もしていない．職業は空手の選手兼指導員であり，妻と子どもとの3人暮らしである．ペットは飼っておらず，それ以外の動物曝露歴もない．兵庫県生まれの兵庫県育ちである．
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忽那「空手家か……昔ファミコンでカラテカというゲームがあってだな……」
上村「先生，どうでもいい話はやめてもらえますか」
忽那「コミュニケーションって大事だと思うんだよなオレは．もっとさ，普段の師弟間の会話を大事にしようよ」
上村「先生，今道場破り中です」
忽那「ああ，そうだったな．だって特徴のない患者背景なんだもんな……こうなったらアレだ，アレ．海外渡航歴とか訊いちゃおうぜ」
上村「先生，それしか取り柄がないですからね」
忽那「鋭いな上村，実はそうなんだよ」
西村「海外渡航歴か，いいだろう」