［最終回］NCGMからの刺客　その3
vs宮里悠佑（国立国際医療研究センター国際感染症センター）
忽那賢志　くつな さとし
国立国際医療研究センター　国際感染症センター／国際感染症対策室医長

（初出：J-IDEO Vol.4 No.4　2020年7月 刊行）

上村「先生，久しぶりに東京に帰ってきましたね．せっかくなんでちょっとNCGM（国立国際医療研究センター）でゆっくりしていきましょうね」
忽那「バカヤロウ！　修羅の道を歩むオレたちに休息など不要ッ！　用事を済ませたらすぐに出るぞッ！」
上村「先生……この働き方改革の時代の真逆を行ってますね」
忽那「うむ．正確には本来の仕事はまったくせずに道場破りの旅に出ているだけだから，働き方改革の先陣を切っているわけだがな」
上村「それ働き方改革っていうか職場放棄です．ていうかNCGMに用事って何ですか？」
忽那「ほら，オレ人気者だからさ……原稿依頼がひっきりなしに来てるんだよな．だからそれを後輩に振る仕事をしないといけないから．ちょっと寄るだけだよ」
上村「ちょっと寄るだけっていうか，ほんとは働いてないといけないんですよ．いつまで放浪するつもりなんですか」
忽那「バカヤロウ！　組織というのは1人くらいいなくても回っていなくてはならないものなのだ……それをオレが身をもって示しているわけだな」
上村「最悪だなこの人」
忽那「じゃあちょっと医局の机見てくるからここでちょい待ち」
宮里「待て待てエエエイ！」
忽那「む，何奴ッ！」
宮里「ようやく見つけたぞ，忽那ッ！　ここで会ったが百年目！　神妙にしろ！　キエエエエエエエエエエエイ！」
上村「うわー，またヤバい人が出てきたな．いったい何の用ですか」
宮里「しらばっくれやがって……．勝負を挑むに決まってるだろオオオオオオオオ！　貴様らチームAC／DCの2人には懸賞金が掛かってるんだヨオオオ！　貴様らを成敗して懸賞金をゲットしてくれる！」

忽那「あ，久々に出たな，このWANTEDの紙」
上村「先生，懸賞金が5,250円から5,255円にアップしましたね！」
忽那「相変わらずめちゃ細かく刻んでるな．そういう上村こそ，缶コーヒーからシーチキンに格上げされてるじゃないか！」
上村「缶コーヒーとシーチキンとの格の上下がわかんないッス！」
忽那「ていうか宮里！　おまえこんな5,255円＋シーチキンのためにわざわざ戦いを挑むつもりかッ！」
宮里「挑むに決まってるだろオオオオオオオオ！　DCCフェローの給料をナメるんじゃネエエエエエエエ！」
忽那「そうだな．決まってるよな．オレもDCCフェローだったからその辺は確かにそうなんだよな」
上村「悲しいですね……」
宮里「いいから症例を出すぞオオオオオオオオオオオオ！」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
28歳男性が下痢と腹痛を主訴に救急外来を受診した．
X－14日，水様性下痢が出現した．X－10日，下痢の回数が増え，間欠的な腹痛も出現した．食事を摂取しても30分ぐらい経つと，嘔吐してしまうという．その後も下痢の回数，腹痛が増悪し続けたため，X日，自身の勤務中に夜間の救急外来を受診した．
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
上村「自身の勤務中ってどういうことッスか？」
宮里「患者はこの救急外来で働く医師に決まってるだろオオオオオオオオ！」
上村「いや，決まってはないと思うんですよね……」
忽那「職業・医師か……何かヒントになるかな……」
上村「嘔吐下痢の患者をたくさん診療してたら，患者さんからうつっちゃうこともありますよね」
忽那「ノロウイルス感染症とかな．でもさ，2週間も続いてるわけだろ？　ちょっと長すぎないか？」
上村「そッスね」
宮里「次は順番的にROSに決まってるな」