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Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(9)

Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(9)
第9回 ICT(→AST)への臨床推論教育 ②
岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント
北海道科学大学薬学部客員教授


はじめに

 前回も述べましたが,抗菌薬適正使用につながる臨床感染症の分野はここ10年くらいで大きく変化しています.今後も10年近くはさまざまな点で変化が続くことが予測されますが,その変化についてこられている医療者とそうでない医療者の差が現場ではとても大きくなってきているのを実感します.PK/PDに基づいた抗菌薬の投与が大切! といっても,添付文書にはまだ書かれていない投与方法だったりします.また,適切なタイミングでの適切な培養提出に加え,その培養結果の解釈,そして背景や重症度に基づいた適切な抗菌薬選択と治療期間への知識はそれなりの量で大変でしょう.この“適正か否か”の判断には臨床推論の知識なくして対応することは難しいでしょう.感染症医の仕事であることは間違いないのですが,そこへのサポートをICT(→AST)の皆さんにもお願いできればと思い,コンサルタントを続けてきました.もともと感染症は医師だけでなく,看護師・薬剤師・検査技師とのチーム医療が重要な代表的分野です.他国にはないスタイルかもしれませんが,「適正使用のサポートは感染症医じゃなきゃいけない」ということはなく,既存の多職種チームであるICT(→AST)がそれを担うことで理想のチームのひとつになりうるとコンサルト先の病院では日々感じます.
 感染症チーム医療の一員として,抗菌薬適正使用をサポートするためにICTメンバーの皆さんに知っておいてほしい臨床推論の基礎知識を確認したいと思います.特に,「具体的な診断名が下されているなかでの適切な抗菌薬の選択・量・投与間隔・投与期間へのサポート」ができることはとても大きいでしょう.また,感染対策業務も同じですが,感染症チーム医療では適切な知識を持っていても,それを伝えるコミュニケーションスキルが重要になり,そこにも臨床推論が役立つと感じます.伝達方法についても患者の状況だけではなく医師が考えている全体の方針などを踏まえて提示できることが大切と考えます.


抗菌薬適正使用の判断に必須のスキル:
臨床推論とは?

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