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Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(7)

Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(7)
第7回 メール・電話などでの感染症コンサルト
岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント
北海道薬科大学客員教授


はじめに

 前回はProcess 1の介入(現状の把握とマイクロバイオロジーラウンドの形成)からProcess 2へ移り,職員への体系的な感染症レクチャーについて述べました[図1].感染症の最もよい学びの場は一つ一つの実症例のコンサルテーションへの対応であることは間違いありません.しかし,日本において感染症を学ぶ機会は医学部時代から初期研修期間を含めまだまだ十分とはいえません.コンサルト先の病院では,体系的な臨床感染症レクチャーを行うことで職員全体の感染症の知識のレベルアップを図っています.職員全体のレベルアップというととてもよく聞こえますが,実際に全職員向けに毎回きまった時間に体系的なレクチャーを行うことは現実的ではありません.職種により求められている知識もバラバラです.そういう意味で,最も効果を発揮すると感じるのが研修医への教育です.研修医は良くも悪くもまだ臨床の知識が十分ではないので,経験やインプレッションで行うような独特の診療がしみついていません.初期研修医時代の臨床像が医師としての今後に一番大きな影響をもっていると言われますが,その時期に適切な臨床感染症教育を受けることはその後の医師人生にとても大きいと教育していて実感します.どの職員に研修をしようかと考えているのであれば,迷う必要はありません.また,研修医は各科をローテーションしますので,学んだ知識が院内の多くの科に研修医を通じて広がります.さらに,研修医であれば何か変なこと? 新しいこと? を言っても現場にとって最も害がないでしょう.感染症の知識が行き届いていない現場や指導医がいて,感染症ラウンドなどで介入すると嫌がられることが多々ありますが,研修医が「こうしたい」と言うのは角が立たない形で通ることが多いでしょう.研修医がいるからレベルが低いのではありません.Teaching hospitalは世界的には質の高い病院の一つとして認識されているのは間違いありません.

画像1

[図1]初期に行う具体的な介入の全体像


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